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(47)勇者一行をご招待

50話で終わりにする予定だったのですが、どうやら収まりそうにありません……。まだ○○○も出してないのに!

 ザック達勇者一行は、ただの瓦礫と化したゲオルグの城を眺めていた。

「魔王も聖女もいなかった。どういうことだ?」

 ザックの問いに答えたのは、回復魔法の使い手、ミューだ。

「おそらく、ここは魔王城ではなかったのでしょう。本物は別の場所にあるのではないかと思います。」

「くそっ、無駄足かよ!」

 スリナーが地面を蹴ると、赤茶けた地面の砂が舞った。

「これからどうします?お目付け役の神官長も行方不明。魔王城をどこまでも探すか、それともいっそのことホロネリアに帰るか。」

 アイズの問いかけに、誰も答えない。

 ザック達はまだホロネリアがどうなったのかを知らない。このまま帰れば魔族に負けたのだと後ろ指を指されるかもしれない。しかし、一ヶ月以上にわたる城の中の戦いで、疲れているのも事実だった。いつ襲われるか分からない緊張が延々と続くのは、精神的に疲れるのだ。

 一旦帰って、立て直すのもありか。ザックがそう考えた時だった。

「誰だ!」

 アイズが鋭い声を出した。アイズは気配に敏感なのだ。その声で一瞬にして全員が戦闘体制に入る。そこにいるのは執事のような男だった。人間に見えるが、魔族なのだろう。首筋にヒリヒリとした感覚が襲ってくる。おそらくかなり強い。男は恭しくお辞儀をした。


「驚かせてしまい、申し訳ございません。私は魔王城の管理人、ニルダと申します。魔王様とお嬢様……いえ、聖女様の命により、あなた方を魔王城へとご招待するべくまかり越しました。」


「招待だって?一体どういうことだ。」

 何かの罠だろう。アイズはそう考えた。ニルダはザック達の後ろにある瓦礫を指差す。

「あの城を攻略できるような人間に会ってみたいと、魔王様は興味を示しておられます。聖女様は、貴方様方との認識の違いについて説明がしたいと仰せです。」

「ちょ、ちょっと待った。少し話し合いをさせて欲しい。」

 ザックが止めると、ニルダは頷く。

「もちろんでございます。無理矢理連れて行っては私がお嬢様に叱られてしまいますので。」


 ザック達はニルダから離れたところで頭を寄せてヒソヒソ話を始めた。

「どう考えたって罠だろう?」

 アイズがスッパリと言い切る。

「しかし、魔王城へと案内してくれるというのはチャンスです。どこにあるのか分からないものを闇雲に探すのは賢明とは言えないですから。」

「それに、聖女様が説明したいってどういうことだ?攫われたんじゃなかったのか?」

 スリナーの疑問にミューがおずおずと言った様子で切り出す。

「実は、攫われた、というのは神殿でも聞いていなかったのです。ただ結界がなくなり、その処理が大変だったのは本当ですけれど。」

「神官長がいなくなったのも、そのせいか?」

 あの神官長は戦いの経験はなさそうだった。ただ、暗い目で何かを企んでいることだけは分かった。城の中ではぐれたきり、二度と会うことはなかったので、魔物にやられたのだと思っていたが。

 ザックはしばらく考えて、三人に尋ねる。

「あの男に罠にかけられたとして、勝算はあるか?」

「あれは強いけど……。四人で行けば、五分五分かな。」

 アイズが目を細めてニルダを見る。他の皆も揃って頷いた。

 自分たちがどれだけ強くなったかは、それなりに自覚している。

「俺もそう思う。だから、罠かもしれんが乗ってみるのもありだと思う。このまま帰っても賞金ももらえないからな。」

「……確かに。これで決着がつくなら踏ん切りもつきますね。」

「異議なし。」

 返事をしていなかったアイズを皆が見ると、アイズも渋々頷いた。

「分かった。あいつが何かを仕掛けてきた時は、私が知らせる。」

「決まりだな。」


 ザックはニルダの方に向かった。

「その話、受けよう。ただ、罠だと思った時点で俺たちは戦闘を開始する。それでもいいな?」

「もちろんですとも。罠になどかけないと誓ってもよろしいですよ。では早速……。」

 そういうと、ニルダはピーッと口笛を鳴らした。遠くから有翼人たちが近づいてくるのをみて、ザックは大剣を構えた。

「仲間を呼んだのか!」

「違います。魔王城まで歩いていくと時間がかかりますので、空の旅でお送りいたします。これもお嬢様のご要望でして。」

「ニルダ様〜。なんのご用ですか?」

 戦いにきたとは思えないのほほんとした声で、有翼人達が降りてきた。ザック達をジロジロと見ている。気が抜けるほど緊張した様子はない。

「おお、人間だ。俺たちより強いんじゃね?」

「俺たちは商売人だからなあ。何かご入用の物でも?」

「彼らを魔王城まで連れて行って欲しいのですよ。シェスタ様のご要望です。」

 そのニルダの一言で有翼人たちの態度が変わった。ピシッと背筋を伸ばす。

「お嬢様の頼みとあれば、なんでもいたします!」

「お嬢様のお客人とはつゆ知らず!失礼をいたしました!」

「ささ、武器は片付けてくださいませ。お嬢様のお客人に失礼なことはいたしませんので。」


「……何か変だけど、罠じゃないみたいね?」

 ミューの言葉にザックは頷いて大剣をしまった。

「……ああ。」

 魔族は残忍で話も通じない奴らだと、今までザックは思っていた。ホロネリアではずっとそう言い聞かされてきたからだ。

 その印象が、ここにきてボロボロと崩れ始めていた。


「では失礼して……。」

 有翼人はザックの後ろに回るとひょいと腕の下に手を入れ、飛び上がった。

「うわあ!」

 体を持ち上げられる初めての感覚にザックは思わず身を捩って逃れようとする。

「暴れたら落ちます!落ち着いてください。」

 その一言で、ザックは思わず下を見てしまった。地面が遠い。思わずくらりとしてしまう。

「下を見ると怖いでしょうから、前を見るといいですよ。空からの景色なんて人間にはなかなかお目にかかれないでしょうから。」

 言われるまま、ザックは前に目を向けた。赤茶けた大地がどこまでも続く向こうに、城が見える。その向こうには何やら青く広がるものも。

 ザックはそのままその広大な景色に見惚れていた。




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