(43)シェスタの答え
昨日はお休みをいただきましたm(*_ _)m
「シェスタ殿。ピカールの食事はいかがだったかな?」
「初めての物が多かったですけれど、とても美味しかったです。ピカールが豊かな国なのだと改めて理解いたしました。」
シェスタの返答に、バルドは満足気に頷いた。
「そうだろう。一年中暖かく、果物や作物も豊富だ。海の幸も簡単に手に入る。こんな良い国は他にはない。」
バルドの言葉に周りの人々は笑顔で頷きあっている。皆、この国が好きなのだ。
「ギルニスではなく、ピカールで生活を送りたくなったのではないか?」
自分の思いを口にして良いのか迷って、シェスタはレギウスを見た。それに気づいたレギウスは、小さく頷いた。それに勇気をもらったシェスタは、考えながらも口を開いた
「私は、ホロネリアで生まれました。両親に捨てられ、神殿でずっと暮らしてきました。それが普通だと思っていたのです。」
急なシェスタの告白に面くらったのか、バルド達は何も言わずにシェスタをじっと見つめている。
「神殿からも捨てられた私を、魔王様は、魔王城に連れ帰ってくれました。そこで私は、私を大切にしてくれる人に出会えました。だからこそ、私は、魔王様のいるギルニスにいたいと思っています。ご希望に添えず、申し訳ありません。」
深々と頭を下げるシェスタをバルドがじっと見る。
「ひょっとしてホロネリアに結界を張り続けていたのは、シェスタ殿だったのか。」
国の長を務めるだけあって、バルドは他の国の事情にも通じていた。
ホロネリアの魔族を寄せ付けない結界がなくなり、瘴気から生じた魔物達で、国は荒れているらしい。シェスタの言うことが本当だとしたら、わざわざ自分達の手で結界を解いたことになる。
「ホロネリアとも親交があるのですか?」
シェスタの問いに、バルドは苦笑した。
「いや、ホロネリアは人間以外が治める国を良しとしないからな。助けを求められたら、やぶさかではないが。」
納得したようなシェスタの顔に、今までの苦労が見てとれた。
「そう言うことなら致し方ないか。しかし、ギルニスに飽きたらいつでもピカールに来て良いのだぞ。シェスタ殿の力についてぜひ色々と教えていただきたいものだ。」
「ありがとうございます。けれども、私は、ギルニスのこともピカールのこともほとんど何も知らないのです。もっとたくさん学んだら、また寄らせていただきたいと思います。」
その言葉に、バルドは大笑いした。
「そうだろうとも!やはりまた来たくなるだろう?この国は!」
「お国自慢も大概にしておけ。」
レギウスがむっつりと口を挟んだ。
「そんな怒らなくてもいいではないか。シェスタ殿にとってもこの国が魅力的に映った。それだけのことだ。」
「ふん。世辞だと言うのも分からないと見える。」
レギウスとバルドの口喧嘩がエスカレートしていくのを、周りはハラハラと見守った。
「いやいや、本心だとも。その程度のことも分からないとは。シェスタ殿に愛想を尽かされる日も近いのではないか?」
「なんだと?」
「おお、図星を刺されて怒ったか?」
ニヤニヤしながら煽るバルドに向けて、レギウスが風の刃を放った。襲いかかる風の刃を、バルドは冷気で天井へと向ける。
「危ない!」
誰の言葉かは分からない。しかし、その言葉の次の瞬間、天井はバラバラになって吹き飛ばされた。悲鳴が上がり、建物の中を強風が吹き荒れる。シェスタはそれを床に伏せてやり過ごした。
「この時を待っていたのだ!」
バルドの嬉しそうな声が響き渡る。
「そんなに嬉しいなら、少し相手をしてやろう。恥をかかない程度にな。」
あっという間に、二人は建物の外へと飛び出した。シェスタは周りを見回す。それほど大きな怪我をしている者はいないようだが、女達の中には痛そうな顔をして腕を押さえている者もいた。シェスタはその女に近づいた。
「大丈夫ですか?」
「ええ。何かが当たったみたいで。」
「彼女の身体を癒して。」
シェスタがそう呟くと、シェスタから出た光が、その女の周りを取り囲んだ。驚く女の体の中にその光が吸い込まれていく。
「……驚いた。痛みが消えたよ。」
「よかったです。」
そういうと、シェスタはすっくと立ち上がり、レギウスの方をきっと見上げた。
「どうしたんだい?」
「私がこの喧嘩を止めなくては。」
そういうと、シェスタは思い切り息を吸い込んで、叫んだ。
「ギー!」
バルドと対峙していたレギウスにもしっかりとその声は届いた。
「しまった……。」
レギウスはそのまま、ギーの姿に変化をする。
「え?うさぎ?」
バルドの呟きを聞きながら、レギウスはそのまま下へと落ちていく。
受け止めたのは、シェスタだった。
シェスタはうさぎを撫でながら言った。
「こんなところで暴れてはいけません。帰りましょう……ご迷惑をおかけしました。」
シェスタがうさぎを抱えて歩いていくのを、バルドもその場にいた皆も、呆気に取られて黙って見送った。
あのシェスタという人間は、どうやら魔王をうさぎにして、自分の思い通りにすることができるらしい。そのことをピカールの重鎮達は目の当たりにした。
「恐ろしい……。」
思わず呟いてしまった誰かの言葉を非難するものは誰もいなかった。
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