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(22)有翼族の話

昨日は別の短編をアップしております。よろしければこれを読んだ後にでもご笑覧くださいませ。


 以前来たレネットと同じ翼を持った魔族たちが、城門の前で待っている。


「ふむ。戦いに来たのではないという意思表明でしょうか。」

 ニルダがつぶやいた。


「そうなの?」

「彼らなら、城壁を超えて王の間へ行けますからな。それをしないのは何か話があると考えるべきでしょう。」


 だからと言って城壁を超えさせるような真似は致しませんけどね、とニルダは心の中でつぶやいた。魔王が行方不明であった時、他の魔族に侵入されたことが実は悔しかったのだ。


 シェスタがうさぎのギーを抱き、アステリアと共に城門に着くと、有翼族たちは、シェスタをねめつけた。


「なんで人間ごときがこんなところにいるんだ?まさかお前が手引きしてるのか?」


 なんの話だろう?シェスタは首を捻ったが思いつく節はない。ニルダがイライラした様子で答える。


「こちらは魔王様の客人です。失礼のないように。」


 ニルダの言葉を聞いて有翼族は笑い始めた。


「客人だあ?人質の間違いじゃないのか。」

「なるほどなあ。こいつを連れていけばいいってわけだ!」


 そう言ってシェスタに飛び掛かろうとした有翼族に、シェスタは言う。


「話にきたのなら、話をしてください。」


 その一言は絶大だった。有翼族たちは、その場に何かの力で無理やり座らされた。そして、脂汗をかきながら、口を開く。


「じ、実は人間の国から、変な一行が来てるんです。」

「魔王にさらわれた聖女を助けるために、魔王城へ行くとか言ってて。」


「馬鹿にして相手にしなかったら、『俺たちの勝ちだ。ここは人間の国の領土にする』とかなんとか言い出して。」

「面倒なんで、魔王様にさっさと片付けてもらいたいと思ったわけです。」

「……てか、なんで俺たち、動けねえんだよ……。」


 有翼族たちは、動揺していた。自分たちの意思を無視して、身体が勝手に動いてしまう。喋ろうと思っていないのに、勝手に口が動く。立ち上がることすらできない。まるで強い相手に服従させられているかのように。


 そんな有翼族同様、シェスタも混乱していた。

「聖女がさらわれた?」


 思わずシェスタはぎゅうっとギーを抱きしめてしまった。ジタバタとするギーをごめんごめんと優しく撫でる。


「お嬢様、実は魔王様にさらわれてるんですか?」

 アステリアが鼻息荒く言った。そうだと言ったら、魔王を殴りに行きそうな剣幕だ。


「さらわれてはない……と思います。気を失っていたので、よくは分からないのですけど。」


 シェスタの意思を確認していないのは事実だ。ニルダが困ったようにため息をついた。


「微妙なラインではありますね。そう取られても仕方がないわけですが。」

「でも私、聖女じゃないはずです。『聖女をやめてもらう』って言われたので。」


 シェスタはハッと気づく。

「魔王様、私以外の聖女もさらって魔王城に連れてきたのでしょうか。」


 ニルダがすぐに否定した。

「魔王城にはお嬢様以外の人間はおりませんよ。」

 自分が聖女ではないのだから、聖女がさらわれる訳がない。そこまで考えて、シェスタは新しい可能性に気づいてしまった。


「まさか、実はもう一つ城を持っていて、そこに他の聖女を匿っているとか……。だからこの城に帰ってこないのね!」

 

 ぎゅうっとシェスタが無意識のうちにギーを抱きしめた。流石に締まり過ぎたのか、ギーがぐったりし始めたので、見かねたニルダが声をかけた。


「お嬢様。ギーがぐったりしております。」

「あ!ごめんなさい。ギー。大丈夫?」


 心配そうに見るシェスタの腕から、ニルダはそっとギーを取り出した。色んな意味で今はそっとしておいてあげたかったのだ。


「しばらくお預かりいたします。」

「そ、そうね。お願いします。」


 そこで、有翼族たちが座ったままなのに気づいた。

「あ、ごめんなさい!兎に角、変な人間たちの対処をどうしたらいいかってことよね。魔王様に手紙を出して聞いてみます。それでいいかしら。」

「は……はあ。」


 有翼族達の不安気な様子をアステリアが笑い飛ばした。

「大丈夫だよ。お嬢様は魔王様も吹き飛ばす力をお持ちだからね。あんた達だって、敵わないのがわかっただろう?」


 有翼族達は、ゾッとした。この人間はあの魔王レギウスをも吹き飛ばすことができるという。実は魔王よりも強いということか。慌てて有翼族達は地面にめり込むほど頭を下げた。自分の意思で。


「し、失礼の段、平にお許しを!魔王様への伝言、何卒よろしくお願いいたします!」


「分かりました。魔王様の返事があるまで、その人間達を見張っておいてくれるかしら。あなたたちはどこに住んでいるの?」


「ニダス山です。」


「じゃあ、ニダス山まで送ってあげる。」


 シェスタがいうと、有翼族達は光の粒子に包まれ、一瞬のうちに消えた。シェスタの力でニダス山へと戻ったのだ。


「お嬢様の力に磨きがかかっておりますね。」

 アステリアが感心したように言うと、シェスタはふふっと笑った。


「アステリアと買い物に行けるように、頑張ったのよ。」

「この前突然レネットの店に行ったら、ものすごく驚いた顔をされましたからね。楽しゅうございました。では、部屋に戻りましょうか。」


 アステリアとシェスタが部屋へと戻って行く後ろ姿を眺めながら、ニルダは腕の中のギーにそっと囁いた。


「魔王様、浮気を疑われるとはなんともおいたわしい……。」

 その途端、ギーがニルダに噛み付いたのは、仕方のないことだった。




シェスタがかなりスキルアップされております。次回は人間の国に戻ります。


読んでくださり、ありがとうございます。

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