(21)魔族の襲来
切りの関係で今日は少なめです。
「ギー、野菜ができたよ。食べてみて?」
裏庭でとれたニンジンを、シェスタはギーの前に差し出していた。食べやすいよう棒状に切ってある。調理場で切ったものを持ってきてくれたのだ。
野菜の出来は、まずまずだった。量もあったので、城の調理場に運んだら感謝された。野菜は高いらしい。
「今後もぜひお願いします!」
調理場にいた使用人たちから頭を下げられた。ニルダがひと睨みすると、慌てて逃げて行ったけれど。
ギーは鼻をヒクヒクさせてニオイを嗅いだ後、そっと端を口に入れた。そのままカリカリと食べ進めたところを見ると、合格点はもらえたらしい。シェスタはほっと胸を撫で下ろした。
他の野菜も皿に盛り付けて、ギーの前に出した。葉物野菜も、もりもり食べている。
「よかった。気に入ってもらえたみたい。」
シェスタが呟くと、アステリアが大きく頷いた。
「お嬢様があれだけ手をかけて育てたんですからね。当然です。せっかくの白いお肌が日焼けで赤くなるのではないかと、心配しましたとも。」
「ごめんなさい。」
シェスタは首をすくめた。その肩に艶のある茶色の髪がさらりとかかる。
半年が過ぎ、ガリガリに痩せていたシェスタも、健康的になった。少女にしか見えなかったシェスタが、美しい女性へと変わりつつあった。途方に暮れたような顔も減り、ギーと遊んでいる時には、明るい笑顔を見せることが増えた。
「こんな可愛らしい人族を見た事はありません!」
とアステリアは力説するが、それはアステリアがあまり人に会ったことがらないからだとシェスタは思っている。
つっかえつっかえ話していたのも、今では嘘のように消えている。
魔王レギウスとは、手紙のやり取りを続けている。なぜかレギウスは城にいないことが多いのだ。シェスタが書いた手紙の返事は「良かったな。」とか、「好きにして構わない。」とか、そっけないものばかりだけれど、それでも返事が来るのはシェスタにとって嬉しかった。
急に扉が叩かれた。
「大変でございます。魔族の集団がこちらに向かっております。」
そう言いながら入ってきたのは、執事のニルダだ。いつもは沈着冷静な彼が慌てているのは珍しいと思いながらも、シェスタは首を傾げた。
「魔王様に連絡したほうが良いのではないですか?」
その言葉に狼狽えたようにニルダは瞬く。
「あ、ええと。魔王様は現在不在でして。どうしたら良いのかシェスタ様に指示を仰ぎたく……。」
そう言いながらニルダの目はうさぎをじっと見ている。うさぎはその視線を無視し、ひょいと部屋の隅へと跳んで行った。
「とりあえず、お話を聞けばいいのでしょうか。それぐらいなら私でも……。」
シェスタがすぐにでも城門へと行こうとするので、アステリアが慌てて止めた。
「お嬢様!魔族はすぐにかっと熱くなる奴が多いんです。何かあったらどうするんですか!魔王様をすぐにでも引っ張り出せばいいんですよ!」
どこにいるのか分からない魔王様が来るのを待っている間に魔族たちが怒ってしまう方がまずいのではないだろうか。だったらいつもお世話になっている自分がなんとかした方がいい。シェスタはそう考えたのだった。
それに、ニルダに教わった魔力のコントロールを試すいい機会だ。
「大丈夫よ。結界もちゃんとはっておくから。」
そう言ってシェスタが立ち上がると、なぜかギーが部屋の隅から飛び出し、シェスタの腕の中へととびこんだ。
「どうしたの?ギー。一緒に行ったら危ないわよ。」
「……ギーを連れて行けないのであれば、お嬢様が出られるわけがないじゃないですか。」
アステリアの言葉に、それはそうだとシェスタは思い直す。
「じゃあ、一緒に行きましょう?」
颯爽と部屋を出るシェスタに聞こえないよう、アステリアがつぶやいた。
「魔王様、出る気がありませんね……。」
ニルダがその言葉を拾ってため息をついた。
「逆に言えば、魔王様がついているのだから、大丈夫だとも言える……。上手くいくことを祈ろう。」
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