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(20)書庫の道具

いつも読んでくださる皆様、ありがとうございます。

PVが増えないので、題名を変えようか悩み中です。


 シェスタたちは書庫へと連れ立って歩いて行った。シェスタはギーを探しに行きたかったのだが、

「道具を使うのはシェスタなのだから、説明を聞いた方がいい」

 とレギウスに強く言われてしまったので、ついていくことにした。ひょっとすると、他にも役に立つものがあるかもしれない。



 書庫の扉を開けると、天井まである書棚がまず目に入った。ところどころに隙間はあるが、かなりの量の書物が入っていた。しかし、おめあての道具は書棚の方ではない。

「こちらでございます。」

 ニルダが先頭に立って案内したのは、正面よりも右である。書棚の下の一部が扉になっていたのだ。書庫の中はかなり掃除をした。でもこの部屋の掃除はまだ終わっていないのだ。

「埃っぽいですが、ご容赦くださいませ。」

 そう言ってニルダが開けた扉の向こうは、少し小さな部屋になっていた。そこによくわからない道具たちが重なるように積まれている。


「ほほう。これはこれは……。」

 後ろに控えていたレネットがずいと前に出てくる。その目は部屋の中の道具に釘付けだ。


「何か面白いものでもあったか?」

 レギウスの問いかけにレネットは熱い視線で答えた。

「もちろんでございます。是非とも全て確認させていただきたい!ああでも、できれば夫が一緒の方が良いかもしれません。」



「ほう。その方、連れあいがいるのか。」

 少し驚いたように言うのはレギウスだ。魔族で婚姻関係を結ぶことは珍しいのだ。


「魔族との商売でしたら、しなくても全く困らないのですが、他国との付き合いとなると、婚姻している方が便利なのですよ。夫婦でしか出席できない夜会などに参加できなくなりますから。」


 夜会、とかいうものの話は、シェスタも聞いたことがあった。国王が住む城で、夜に開かれるらしい。神殿勤めになると、夜会に行けないと、聖女達がこぼしていた。


「私は農具でしたら分かりますので、お嬢様の役に立ちそうなものを見繕わせていただきますね。」


 そう言いながら、レネットは部屋の中へと入っていく。途端にクシュンとくしゃみが出た。

「よろしければこちらを。」

「いえ、ハンカチならありますので。」

 ニルダの差し出した布を断り、自分のハンカチで口と鼻をおおうと、レネットはいくつかの道具を引っ張り出してきた。その間も他の道具を傷つけないよう、細心の注意を払っている。


「まずは、こちらが耕うん機ですね。」

 長い棒の下に歯がついている、先ほど見せてもらった絵にそっくりだ。

 上の部分は握りがついている。

「確か、この辺に魔石を入れる場所が……。」

 レネットがいじっていると、蓋が開いた。中は空っぽだ。


「こちらに魔石を入れていただければ、使えます。ただ、少し錆びておりますね。少し手数料をいただきますが、お手入れもいたしますよ。買うよりは安上がりかと。」


 次にレネットが手に取ったのは、半球の形に棒がついている機械だ。


「これは、水を撒く機械です。中に魔石を入れれば勝手に水やりをしてくれます。これも念の為動かしてみてからお渡しした方がいいかと。壊れて爆発したら大変ですから。」


「爆発。」


 思わずシェスタはそのまま返してしまった。道具というものは、爆発するものなのだろうか。今までものすごく欲しいと思っていた気持ちが少し薄れてしまう。


「大丈夫ですよ。そうならないためのお手入れです。」

 さらにレネットが出してきたのは、小さな人の形をした道具だ。


「これは草むしりをしてくれるのです。ただ、魔石を頻繁に変える必要はあります。」


「魔石など、いくらでもある。心配するな。」

 レギウスの言葉にレネットは頷く。


「他の国ではなかなかそれができないので、この道具にお目にかかることは少ないです。この国ではそもそも草むしりの必要がないですから……。」


「それは、その、ガラクタに近い、と……。」

 ニルダが言葉を選ばずいうと、レネットはその通りと首を縦に振った。

「そうなんですよ。むしろ、希少品として、好事家が購入していることが多いです。かなりのお値段がつきますよ。」


「シェスタはこの道具を使ってみたいか?」

 レギウスに聞かれて、シェスタはしばらく考えた。どのくらい上手くいくかはわからないけれど、草むしりが重労働なのは知っている。


「できれば、欲しいです。」


「そうか。では置いておこう。」

 レギウスが頷くと、レネットはその道具も他の道具と一緒に置いた。


「とりあえずはこの辺りがあれば、大丈夫だと思います。」

「では、そちらは手入れの後、種と一緒に納品していただきましょう。」

「ありがとうございます。ついでに畑仕事が得意な者も連れて参りますね。1日くらいでしたら、こちらの国まで来てもらえると思いますので。」


「よろしくお願いします。」

 シェスタはレネットに頭を下げ、そう言えばさっき注意されたなと思い出して慌てて頭を上げた。


「ところで、他の道具にはどのようなものがあるのですか?」

 ニルダのその一言を、レネット以外がすぐに後悔する事になった。


「お話してもよろしいのですか?ではまず、この小さな機械ですが、これは……。」

 緑色の目をキラキラさせながら機械についての説明をまくし立てるレネットを誰も止められなかった。


「いくつかは推測ですので、できれば私の夫に見ていただきたいと……おや、皆様、どうなされたのですか?」


「部屋に戻る。次は夫だけでいい。」

 レギウスがむすっとした顔で言うと、シェスタも疲れた顔で頷いた。途中までは楽しかったのだけど、あまりに長くて疲れてしまった。


「あ、あの……。」

 レネットが何かを言おうとするが、ニルダが首を振った。

「今の話の分、手数料を引かせていただきます。」




 その後、道具と種子は無事納品され、裏庭には青々とした畑が広がることになる。しかし、レネットは時折しか顔を出すことはなかったという。

読んでくださり、ありがとうございます。

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