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(19)商人と魔道具

GW終わってしまいました……。

そしてなぜか力を取り戻すため、アイドル目指して頑張ります〜猫の習性がうっかり出てしまうたびに、なぜか評価が爆上がりする件〜

https://ncode.syosetu.com/n0929lv/

がランクイン。読んで下さった方、ありがとうございます

 シェスタの部屋に通されたのは、黒い礼服をぴしりと着こなした、赤い髪の女性である。赤い髪をまとめ、美しく化粧を施された様子は、貴婦人のようだ。

「ブラ二ー商会のレネット・ブラ二ーです。お見知り置きを。」

「シェスタです。その……」

 今日は魔族の商人が来るとニルダは言っていた。シェスタの視線を受けて、ニルダは笑う。

「他国との商売をしておりますのでね。この程度の礼儀作法は身につけていないといけないのです。」

 なるほど。警戒されないための姿なのだと納得した顔のシェスタにレネットが笑う。

「お嬢様はこちらではない姿がいいみたいだね。」

 そう言って、彼女が髪に手をやり、赤髪をほどく。髪とともにばさりと出てきたのは、黒い蝙蝠のような翼だ。艶々としていて美しい。笑みを浮かべた口元からは小さな牙がのぞいている。やはり魔族なのだとシェスタは何故か安心した。シェスタ様子を見て、レネットは緑色の目を細めた。

「へえ。人族にしては度胸があるね。」

「そりゃそうでしょうとも。私が侍女ですから。」

 お茶を出すアステリアの言葉にレネットは大笑いした。

「確かにね!ミノタウロスが平気なんだ。私なんてどうということもないか。」

「アステはいい侍女です。」

 シェスタの言葉に、アステリアはぴょんと飛び上がった。

「なっ……。突然変なことを言わないでくださいな、お嬢様!」

 褒められたのが恥ずかしかったのか、アステリアはお盆で顔を隠したまま部屋を出ていってしまった。それをみてひとしきり笑うと、レネットは真顔で向き直る。

「さて、お嬢様。買いたいものがあると伺いました。」

 シェスタは頷くと、紙を渡す。長い話はまだ難しい。それなら習いたての字の方が良いかと思ったのだ。それを見てレネットは眉を顰める。

「野菜の種ですか……。お嬢様の期待に添える結果が出るとは思い難いのですが。」

「結界の中で育つのか、試して、みます。」

「結界?ひょっとしてお嬢様が?」

 レネットの言葉にニルダが頷く。

「私が保証しましょう。とはいえ、土も良い状態とは言えません。試してみないことには。」

「なるほど。だから一緒に肥料なども購入されるのですね……。分かりました。なるべく痩せた土でも育つような強い種を探してきましょう。」

「お願いします。」

 シェスタは頭を下げた。それを見てレネットはギョッとする。

「こういう時に商人に頭を下げちゃいけませんよ。舐められますからね。」

 黙っていれば、自分のやりやすいように持っていけるだろうに、わざわざレネットはシェスタに言いにくいことも伝えてくれる。

「レネットは……いい人です。」

 言ってから、人、というのは間違えたかな、とシェスタは首を傾げた。

 言われたレネットは上を向いている。

「あ〜、もう。分かりました!頑張りますとも!」

 さっきのアステリアもそうだが、二人ともなぜそんなに顔を隠すのだろう。不思議に思うシェスタにニルダがこっそり耳打ちしてきた。

「魔族は褒められることがございませんので、褒められるとどうしたらいいのかわからなくなるのでございますよ。」



 種が入荷するまではしばらくかかるという。香りの良いお茶を飲みながら、レネットが尋ねてきた。

「その前に、土を耕す必要があると思うのですが、手筈は整っておりますか?」

 その言葉にニルダも困った顔になる。

「なにしろ魔族は畑仕事などやりませんからね。できそうな者を募ってみるしかないでしょうか。」

「私がやります。」

 自分の畑だ。そう思ってシェスタが手を上げるが、真面目に取り合ってはもらえない。

「力仕事ですから、お嬢様には難しいかと。よろしければ耕作用の魔道具も準備いたしましょうか?」

「魔道具?」

 シェスタの聞いたことのない言葉が飛び出してきた。

「ええ。魔石を使って動かす、土を耕す道具です。ちょっと値段が張るのですが……。」

 そう言ってレネットは一枚の紙を取り出す。そこには、棒の先に尖った歯がいくつもついた道具の絵が描かれていた。これは、どこかで見たことがある。

「おや。書庫の奥にしまわれていた道具に似ていますね。」

 上品に言っているが、魔王が手当たり次第に持ってきて、放り込んであっただけの戦利品である。金属の歯がついていたので、変わった武器だと思っていたのかもしれない。

「見せていただけますか?」

「そうですね……。」

 ニルダは躊躇した。まだ埃を落とし切っていない道具をここに持ってきたら、部屋が汚れる。書庫にこの魔族を案内してもいいものか。

「せっかくだから、他の道具も見てもらったらいい。どうせガラクタばかりだろうからな。」

 そう言って入ってきたのは、魔王レギウスだ。

「魔王様!まさかお会いできるとは思わず……。」

 慌てて立ち上がって礼をするレネットとシェスタに座れと命じると、空いてるソファにどかっと座った。

「どうして……魔王様が?」

 シェスタが不思議そうに尋ねる。商談の間は暇だろうと外に出しておいたら、まさか魔王となって現れるとは。ニルダが目線で苦情を伝えるが、レギウスは素知らぬふりだ。

「シェスタから手紙をもらったからな。頑張っているではないか。」

「はい……。」

 褒められて、シェスタも顔を赤らめる。褒められることに慣れていないのは、魔族だけではないようだ。

「あ、あの。ギーを紹介、します。あれ?ギー?」

 魔王に自分の大好きなうさぎを紹介しようと思ったのに、姿が見当たらない。シェスタがギーを探そうとすると、ニルダが止めた。

「お嬢様。商談中は構ってやれませんので、外に出しております。」

「そう……。魔王様にも、見て欲しかった、のに。」

 ものすごくがっかりした顔のシェスタをどうしていいのか分からない。しかし、今うさぎになれば、また話せなくなる。さっさと用件を済ませてしまおう。魔王は素早く立ち上がった。

「ニルダ、書庫へ案内せよ。」

「……かしこまりました。」

 ニルダの視線には、とりあえず気づかなかったことにするレギウスだった。





読んでくださり、ありがとうございます。

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