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【書籍化】家族と移住した先で隠しキャラ拾いました  作者: 狭山ひびき
厨二病魔王と〇〇に!

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魔人との交渉 2

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 わたしたちの結婚式から十日経って、ようやく伯父様からベーメンドルク伯爵領に住む魔人について確認が取れたと連絡が入った。

 ディートヘルム殿下が言っていたように、ベーメンドルク伯爵領には本当に魔人が住んでいたそうだ。

 確認に時間がかかったのは、その魔人は人の世界に完全に溶け込んでいて、彼が魔人であると断定するのに手間取ったという。


 ……ま、いきなり「あなたは魔人ですか?」なんて訊けないよねえ。


 もしそれで間違っていたら、訊かれた相手は不快に思うはずだ。ゆえに裏取りに時間がかかったのだ。

 ベーメンドルク伯爵領に住む魔人は、ミヒェルさんというらしい。三十歳くらいの外見をしていると言っていたが、魔人は人よりも長寿らしいので実際のところはわからない。


 伯父様が立てた使者がミヒェルさんにトルデリーゼのことを伝えると、彼はわたしたちと直接話すためにこちらに来てくれることになったそうだ。

 ベーメンドルク伯爵領から王都までは馬車で三日ほどかかるが、魔人は俗にいうテレポートという空間移動の魔術が使えるそうで、今日の午後には王都に来てくれるという。


 ……魔人て、便利ね。


 そう言えばトルデリーゼもバルトルトさんも、そんな感じの魔術を使っていた。

 テレポートなんて使えたら、どこでも好きなところに行きたい放題ではないか。前世で、ど〇でもドアを欲していた子供時代を思い出して、わたしはものすごく羨ましくなった。

 まあ、人類がテレポートなんて使えたら、それこそ情報漏洩し放題でしょうから、ある意味、なくてよかったと考えるべきなのかしら。でも、やっぱり羨ましい。


 ミヒェルさんが王都に来てくれるので、わたしとライナルト、それからお兄様もお城に呼ばれている。

 魔人を交えて会議を開けば大臣たちがパニックになりそうだから、ミヒェルさんと話をするのはわたしたち身内だけにする予定だ。

 登城するために身支度を整えていると、わたしの髪を結っていたギーゼラがしみじみと言った。


「不思議なものですね。普通に生きていたら、魔人と関わることなんてほぼないはずですのに、今年に入ってから魔王だ魔人だと……奥様が聖女になった影響でしょうか。それとも奥様の運が悪すぎるんでしょうか」

「失礼ねギーゼラ、わたしはきっととても運がいいはずよ。だってライナルトと結婚できたんだもの!」

「じゃあ、それで運を使い果たしたんですかね」

「……その線は否定できないから、言わないでちょうだい」


 もしかしなくとも、ギーゼラの言う通りライナルトと結婚するために運を使い果たし、そのおかげでやたらと迷惑をこうむっているのだろうか。

 いやでも、ライナルトと結婚できたんだから多少の不運くらい乗り越えて見せるわよ!


「魔人と会うのですから、本日は、逆にお嬢様の顔立ちのキツさを前面に出したほうがいいのでしょうか」

「ねえ、いったい何で魔人と張り合おうとしてるわけ?」

「こういうのははじめが肝心と言うじゃないですか」

「ひるませてどうするの!」


 というか、わたしの顔って、魔人でもひるむほどのキツさなわけ? それ、ちょっと凹むんだけど。傷つくんだけど!

 本気なんだか冗談なんだかわからないギーゼラに、髪を結ってもらった後でいつも通りキツさを押さえるお化粧をしてもらって、わたしはライナルトとお兄様と共に馬車に乗り込んだ。




 城へ到着すると、わたしは会議室ではなくサロンに通された。

 つまりは、伯父様はミヒェルさんをおもてなししようと考えているということだ。いくら相手がテレポートで移動できると言っても、わざわざ足を運んでもらったので、その姿勢はとってもいいと思う。さすが伯父様、素敵!


 サロンへ向かうと、すでに伯父様と伯母様、ディートヘルム殿下が席についていた。そして、黒髪に黒い瞳の、端正な顔立ちの男性も座っている。魔人に多い黒髪に黒い瞳をしているし、彼がミヒェルさんだろうか。

 わたしたちが部屋に入ると、伯父様がわたしたちを男性に紹介してくれる。やはり彼がミヒェルさんだった。


 ……瘴気はほとんど漏れ出ていないし、これなら人の中で暮らしていても違和感は持たれないわね。


 以前バルトルトさんが言っていたが、魔人は幼いころから瘴気をコントロールするように訓練するという。

 トルデリーゼはそれが苦手で、瘴気が漏れ放題だったけど、多くの人と共存派の魔人は人の世界に溶け込んで暮らしても違和感を持たれない程度に瘴気を押さえられるのだそうだ。

 見た目も人と変わらないなら、よほど敏感な人でない限りミヒェルさんを魔人とは思わないだろう。

 お互いに挨拶をすませると、ミヒェルさんがちょっと申し訳なさそうな顔で眉尻を下げた。


「我らが魔王が、大変ご迷惑をおかけしているようで……」


 ええその通りです、とはさすがに言えないので、わたしたちは「いえいえ」と微笑んでおく。

 トルデリーゼが現在進行形で聖レーツェル国に居座っていることは、伯父様がすでに説明を終えていたようだ。


「わたしたちは魔王トルデリーゼの説得を試みようと考えているのですけど、ミヒェルさんは、バルトルトさんがどこにいるかご存じないですか?」


 だらだらと世間話をしても仕方がないので、ずばっと本題を切り出せば、ミヒェルさんは困った顔をする。


「私たち魔人は、住処を転々とすることが多いですので、それぞれの居場所を把握しているわけではないんです。心当たりがある場所を探して回ればもしかしたら手掛かりが得られるかもしれませんが……」

「探していただくことは可能ですか?」


 テレポートが使えるミヒェルさんがバルトルトさんを探してくれるならとっても助かる。

 ミヒェルさんだってこのまま人類と魔人の戦争に発展したくはないだろうから、協力してくれないだろうか。


 ……もとはと言えば、あなたたちの魔王がしでかしたことですからね。協力してよ~!


 お願い~と縋るような気持ちでミヒェルさんを見つめていると、彼は考えるように視線を落として、それから顔を上げた。


「バルトルトを探す役目を引き受けてもいいです。ですがその代わり……お願いがあるのですが」


 交換条件ってやつですか。まあ、背に腹は代えられませんよね。

 わたしが伯父様を見れば、伯父様も頷いている。

 わたしの隣のライナルトも頷いて、口を開いた。


「聞きましょう」


 こちらとしても、トルデリーゼの問題が深刻化する前に片付けてしまいたいからね。

 腹の探り合いとかは時間の無駄。さっさと条件を聞いて交渉に移りたい。

 ミヒェルさんは姿勢を正し、真剣な表情になると、言った。


「私の妻を、救い出してほしいのです」




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家族と移住した(仮)
家族と移住した2 br /> 家族と移住した3
― 新着の感想 ―
顔のキツさで魔人と争えるんか…笑
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