あの厨二病魔王に説教を‼ 6
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会議が終わって、わたしとライナルト、ディートヘルム王太子殿下、それからお兄様は、伯父様に連れられて城のサロンへ向かった。
「あー、疲れた。こんなに疲れた会議は久しぶりだった」
サロンに到着して、部屋の中が身内だけになると、伯父様はこきこきと首を鳴らして愚痴を言った。
「どいつもこいつも討伐だ武力行使だと好き勝手言うが、魔王を相手に簡単な話ではないというのがわからんものかな」
「それは、父上たちがあっさり三人だけで魔王を討伐したりするからでしょう。過去にできたのだから今回も行けると期待しているんですよ」
ディートヘルム殿下が苦笑する。
まあそうよね。前の魔王は、伯父様とお父様とお母様の三人だけで討伐しちゃったのよね。それを考えるとすごいことだわ。
「そう言うがな、私ももう全盛期の力なんてないぞ? アロゼルムにしてもクレメンティーネにしてもそうだ。同じことをしろと言われても無理に決まっている。ましてや外見が十四歳の少女? できるわけがないだろう。子供に剣を向けて殺せと? 私の心臓は繊細なんだ。魔王を討伐する前に私の心が壊れてしまうわ!」
繊細な人が、意気揚々と魔王討伐に行くだろうか、というツッコミはしないほうがいいわよね。
ライナルトもディートヘルム殿下も笑っている。
「まあ、それもありますけど、父さんの判断ではトルデリーゼは前に討伐した魔王以上とのことだったので、正面からやり合うのは危険だと思いますよ。討伐したくないと言うのはそういう意味もありました。ましては、人類に敵対していない立場を取っている魔王を討伐なんてことになったら他の魔人たちも黙っていないでしょうし……もっと言えば、魔王が滅べば次の魔王が誕生する。トルデリーゼの次の魔王が、人類と共存派とは限りませんからね」
お兄様が目の前に出されているクッキーをつまみながら、世間話でもするような気軽さで言った。
伯父様はトルデリーゼが前の魔王以上の実力と言う部分をはじめて聞いたのか目を剥いている。
わたしもさすがに血の気が引いたわ。トルデリーゼが強いのはなんとなくわかっていたけど、お兄様の言う通り、トルデリーゼの次の魔王問題もあるのよ! トルデリーゼの次の魔王が人類と敵対している魔人から生まれたら大変だわ‼
「待て、十四歳の少女が前の魔王以上?」
「らしいですよ。制御ができていない部分も多かったし、俺は前の魔王を見たことがないので比べることもできませんけど、俺も正面からやり合いたくはなかったですね。それなりに魔術が使えますが、たぶん一対一だと瞬殺されます、あれ」
……え⁉
「お兄様、そんなに?」
強いとは思っていたけど、それほどだなんて聞いていませんよ! あのイタイ子、そんなに強いの⁉ どこからどう見ても厨二病のおばかさんキャラに見えるのに‼
「俺の見立てだから、父さんの見立てではまた違うかもしれないけどな。そうだな、父さんと母さん、お前、ライナルト、俺の五人がかりでかかって何とか同等ってところか。ここに伯父上やディートヘルムが加われば有利に傾くかもだけど……、魔王トルデリーゼに他の魔人が加担したら一気に不利になる。どちらにせよ、やり合うのは危険すぎる相手だ。十四歳の子供を討伐するという精神的にも絵面的にもちょっとどうかと言う問題よりなにより、討伐と言う選択肢が危険すぎるから回避したいんだ」
あら、お兄様には珍しくかなり真面目な意見ですよ。
まあ、ナルシストな一面すら引き算したら、有能ではありますからね。
「で、だ。会議の話に戻るけど、ヴィル、お前どうやってあの保護者を探し出すつもりだ?」
「それなのよね~……」
トルデリーゼの保護者であるバルトルトは、いったいどこで何をしているのか。
トルデリーゼが馬鹿をやらかしているんだから、早く叱りに行ってくれればいいのに。
「なんでトルデリーゼがやりたいように放置しているのかしら?」
「放置しているのではなく、放置せざるを得ないのかもしれないね」
わたしのつぶやきをライナルトが拾った。
「ライナルト、放置せざるを得ないって?」
「魔王トルデリーゼが籠ったのが聖レーツェル国だから。もしそこに、トルデリーゼを叱りに行くという名目であっても、魔人が入ってきたらどうだろう? 聖レーツェル国の人たち……教皇猊下は、魔王に加担するために魔人がやってきたと考えるだろうね。そうなると、事態は悪化すると思わない? バルトルトさんにその気がなくとも、戦争をしに来たと思われたっておかしくない」
「そういうことですか」
つまり、バルトルトさんはこれ以上自体を悪化させるのを恐れて近づけないということね。ライナルトの意見は正鵠を射ている気がするわ。
バルトルトさん以外の魔人もそうだろう。聖レーツェル国という場所が、彼らにトルデリーゼ回収を躊躇わせるのだ。
……正面から魔王を回収しに来ましたと言って、教皇猊下が信じる保証はないものね。
かといって、こそこそと侵入しようとしたら余計に怪しまれる。そうなれば即座に人類対魔人の全面戦争へのカウントダウンが開始してもおかしくない。
……ひっ、冗談じゃないわ!
そんなことになれば全世界が巻き込まれるじゃないの。絶対に回避よ回避!
「頭が痛いな。なんだって聖レーツェル国を選んだんだか。他の国ならまだ方法はあったのに」
伯父様がこめかみを押さえて嘆息した。
「それですけど……」
この際、伯父様に秘密にしていても仕方がない。
わたしはトルデリーゼの痛すぎる性格と馬鹿馬鹿しい計画を、洗いざらい伯父様とディートヘルム殿下に教えてあげることにした。
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