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【書籍化】家族と移住した先で隠しキャラ拾いました  作者: 狭山ひびき
厨二病魔王と〇〇に!

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あの厨二病魔王に説教を‼ 5

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「ええい、うるさい! 静まれ!」


 ぎゃーぎゃーと騒ぎ出した大臣たちを、伯父様が一喝する。

 ライナルトが兎から人に戻った姿を見た時に鼻水垂らして泣いていた伯父様も、さすがは国王様。その声は威厳たっぷりで迫力がある。


「今からライナルトに説明させるから少し黙って聞け!」


 伯父様から指名されたライナルトは、ちょっぴり困惑顔だ。何故なら、大臣たちとヨッヘム大司教、クルト神父が揃ってライナルトにぐるんって視線を向けたからね。

 さすがに一斉に注目されると「うっ」ってなるよね。みんな目が血走っているし。

 ライナルトはみんなに注目されながらも、少し前にフェルゼンシュタイン国にやって来た魔王トルデリーゼについて、害はなさそうだというのを滾々と説明した。


 ちなみに、あのぶっとんだ性格については話していない。あれを言えば余計に場を混乱させるだけになりそうだし……正直、説明しているこっちが頭がおかしいのかと思われそうなので言いたくない。

 ライナルトもきっとわたしと同じ考えだからトルデリーゼの性格には触れなかったのだろう。

 それに、あのぶっ飛んだ性格を口で説明するのは……かなり骨が折れるからね。言わなくていいことは言わない方がいいわ。


「私たち人類が魔王とするものは、それは人類に敵対し、害を振りまくものです。しかし、魔人たちが魔王とするのは必ずしもそうでなく、魔王トルデリーゼは人類に敵対している立場の魔王ではない。本来であれば、人類が魔王と認識しないタイプの魔王だったのが……、えー……おそらく、何らかの理由があって、ええっと……」


 あ、ライナルトが苦しくなってきた。

 そうよね。トルデリーゼが聖レーツェル国に突撃して一室を乗っ取った理由に心当たりはあるけれど、馬鹿正直にそれを言っていいのかどうかは悩ましいところだ。

 しかも、魔王の国が欲しいから乗っ取ったと思われる、と伝えたところでどこまで信用されるかどうか。

 魔王の国が欲しくて聖レーツェル国を奪いに行くとか、あり得ないだろうという意見が大半だろう。というか普通に考えて侵略だ。単身で一つの国を侵略とか前例はないだろうけど……。

 ライナルトが苦しそうにしていると、見かねたお兄様が軽く手を上げた。


「カールハインツ王太子、何かな?」


 伯父と甥の関係であっても会議中だからね。伯父様もお兄様を「王太子」と呼ぶ。

 お兄様は「横から失礼します」と一言断って、ぐるりと会議室を見渡した。


「私が見た限り、魔王はまだ幼く、ゆえに考えも少々稚拙なところがありました。まだ幼い子供が考えることだという前提でお聞きください」


 魔王が「幼い」と言ったお兄様に、大臣たちが不思議そうな顔をした。彼らにとって「魔王」はいかなるものであっても「魔王」であるのだ。「幼い」という修飾語がくっつくことに違和感があるのだと思う。

 お兄様は大臣たちの戸惑いを意に介さず続けた。


「信じがたいかもしれませんが、魔王トルデリーゼは幼いゆえに、王になったのだから国を得るべきだと考えたようです。その過程で、どうやら聖レーツェル国に目を付けたのでしょう。えー……、大変失礼な言い方をするならば、聖レーツェル国は、その背景を知らない子供から見れば小国です。小さな国ゆえ、総数の少ない魔人の国とするにはちょうどいいと認識したのではないかと、推察します」


 なかなかうまい具合に誤魔化して説明したわね、お兄様。

 聖レーツェル国を魔王国にするのは、新しい魔王教とかいうふざけた宗教を興したいと厨二病な頭の魔王が考えたから、なんて言えないもんね。

 お兄様の説明に、大臣たち、それからヨッヘム大司教とクルト神父がそろって微妙な顔で沈黙した。

 説明は理解できたけど理解したくない、そんな表情だった。


 ……わかるわ~。そんな理由で魔王に襲来されたくないわよね。


 お兄様の説明を聞いて、軍部総帥が手を上げた。伯父様に発言を許されて口を開く。


「魔王に人類と敵対する考えがなく、また幼いというのは理解しました。しかし、幼いゆえに話が通じないのではありませんか? ここはやはり、武力行使の方がよろしいのでは?」

「魔王は、人類と見た目も変わらない十四歳の少女です」


 お兄様の付け加えた説明に、軍部総帥は目を見開いて押し黙った。

 ちなみに軍部の総帥は二人の娘のお父さんである。下の子が確か、トルデリーゼと同じくらいだ。それは黙るしかないだろう。


 中身はともかく、見た目はいたいけな少女を、よってたかって袋叩きに……なんて構図は、想像するだけでゾッとするものがある。トルデリーゼが素直に袋叩きにされるかどうかは別として。

 伯父様たちが討伐した魔王の見た目が大きなカバみたいな化け物だったから、同じような姿を想像したんでしょうけど、違うのよね。


 どうやら魔人はその力の大小にもよるけれど、外見を好きなように変えることができるらしい。だけど本来は、人と変わらない見た目なんだって。

 たとえ十四歳でも、例えば前世のゲームの中に登場するようなモンスターで、そして大暴れしているのであれば、討伐するのにもまだ良心は傷まなかったかもしれない。


 しかし、十四歳の女の子を、討伐だ武力行使だと、よってたかって攻撃するのは、わたしは嫌だ。まあしっかり説教して反省はさせるべきだとは思うけれどね。

 クルト神父も外見のことに触れたらみんなの判断が鈍ると思って、あえて言わなかったんでしょうね。

 クルト神父はあくまで聖レーツェル国からの使いで、聖女を借りたいと言った時点で討伐を視野に入れていたはずだから、上層部から余計なことは言わないように言い含められていたのかもしれない。

 まさかわたしたちが魔王と面識があるとは思わなかったでしょうし。


「し、しかし、魔王は聖レーツェル国のセント・ユクトゥス大聖堂の一室を我が物顔で占拠しており、その傍若無人さには猊下も目に余ると……」


 このまま話が流れることを警戒したのか、クルト神父がおろおろしながら言い募る。

 しかし、ライナルトに視線を向けられて、言葉途中で押し黙った。


「傍若無人であるのは否定しないが、では、あなたは町の子供が傍若無人なふるまいをしたからと言って軍を動員してその子供を袋叩きにするのでしょうか」

「それは……」

「皆様はいかがですか? 例えば……、あなた方の子の誰かが、魔王と同じとまでは言いませんが、教皇猊下に無礼を働いたとしましょう。その子供を、猊下がなぶり殺しにしろと命じた。猊下に失礼を働いたのだから仕方がないと、本気でそう思えますか?」

「「「…………」」」


 大臣たちはバツが悪そうな顔で沈黙する。


「言葉が通じない相手ならいざ知らず、説得できるかもしれない相手にそれはあんまりでしょう。武力行使は最終判断に。まずは、説得を試みるべきではありませんか? レツェル教は教義に愛を説いているはずです。問答無用で武力行使に移ることは、それは果たして愛ある行為と言えるのでしょうか?」


 ライナルトとお兄様の言葉で会議の流れが変わったのは、わたしにもわかった。

 教義を持ち出されたらクルト神父も黙るしかない。

 もちろん、魔王が、教皇猊下の顔に泥を塗った事実は変わらない。

 だが、相手が十四歳の女の子だと考えるとやはりみんな判断が鈍るようだ。トルデリーゼの行いは傍若無人と言われても仕方がないけれど、誰かを傷つけたり殺したりしたわけではないし。


 ……このあたりで、いいかしらね?


 教皇猊下は、聖女の投入を希望している。

 ならばわたしの意見で、多少なりとも方向性が決まるだろう。みんながぐらっぐら揺れている今なら賛同も得やすい。


 わたしが手を上げると、伯父様がゆっくり頷いた。

 会議室をぐるりと見渡して、わたしはみんなを諭すように言葉を選ぶ。


「まずは、魔王の説得を。まだ十四歳の少女ですが、保護者である魔人を知っています。彼を味方につけ、説得する方向で考えていただきたいです。問答無用で討伐をと言うのであれば、わたしは力を貸しませんよ」


 クルト神父は困惑顔でヨッヘム大司教を見る。

 大司教は顎を撫でながら少し考え込んだ後で、わかりましたと頷いた。


「猊下には私の方から連絡してみましょう。……魔王と言えど、さすがに相手が少女だというのならば、さすがに討伐と言うのは乱暴すぎる。そのことが周囲に漏れれば猊下への批判にもつながりかねない。クルト神父も、それでいいかな?」

「ヨッヘム大司教のご判断であれば……」


 自分一人の意見だと怒られて大変だけど、お偉いさんがそういうのならクルト神父としても異論はないと、そういうわけよね。神父といえど組織に属している以上、上の意見に従うしかないもんね。


「では、ひとまず魔王トルデリーゼの説得を試みるということにして……、ところで、その保護者の魔人はどこにいるんだ?」


 伯父様の素朴な疑問に、わたしは「その問題があった」と頭を抱えた。




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ISBN-13 : 978-4301004233


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