あの厨二病魔王に説教を‼ 4
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お城に到着すると、すぐに会議室へ通された。
会議室にはすでに皆様が勢ぞろいしている。
最初は、昨日早々に退席した大臣たちへ情報共有すると聞いていたのだけど、どうやらそれは終わったらしい。
わたしが到着したことで、十五分の休憩を挟むと伯父様が言って、席にお茶が配られた。
「ライナルト、会議はどんな感じですか?」
ライナルトの隣に用意されていた席に座って訊ねると、ちょっぴり疲れた顔をしたライナルトがにこりと微笑む。
「うん。現状を伝え終えて、今、それぞれから意見を聞いていたところだよ。休憩の間に書記官が先ほど出た意見をまとめたものを複製してくれると思うけど……、今のところ、大臣たちからは討伐と言う意見が多く上がっている」
「あ~……」
何せ、伯父様が魔王を討伐したという前例があるから、大臣たちにしてみたら、同じように討伐して心の憂いを取り除きたいってところかしら。
伯父様が少人数で魔王討伐なんて偉業をやり遂げちゃったから、伯父様に任せれば魔王討伐が簡単なものかのように思われている節もある。だけど、問題はそう簡単じゃあないのよね。
……魔王を討伐してもすぐに別の魔王が誕生するって本当のことを教えてあげたら、どうなるかしらね? また昨日みたいに大混乱になるかしら?
魔人たちのいうところの魔王と、わたしたちが魔王と認定するものに乖離があるのは、以前トルデリーゼが我が家に来襲したときにバルトルトさんに教えてもらった。
バルトルトさんによれば、魔王が死ねば、また別の魔人の誰か一人の力が膨れ上がり、魔王たる資格を得るそうだ。
つまり、魔王は常に、この世界に一人存在していて、滅んだらしばらく現れないという存在ではない。
だが、人は、魔王とは魔人の中から稀に生まれるものだと認識しており、ひとたび討伐したらしばらくの間は誕生しないと思っていた。
それはなぜか。
簡単なことだ。
魔人が言う魔王と、人が魔王と認定するものは、その認定基準が異なるからである。
人は、魔人の中から生まれる魔王の中で、人に害を及ぼすもの――すなわち、人類と敵対するものを魔王と呼んで恐れてきた。
だが、魔人の中から生まれる魔王にも、人との共存派が存在する。
人との共存派の魔人が魔王になった場合、人に害を及ぼさないから、人はそれを魔王と認識しないということだ。
ゆえに、一応あれでも人との共存派であるトルデリーゼも、何もしなければ魔王認定はされなかった。人から脅威とみなされなかったはずである。
だけど、あのお馬鹿さんは、自分の国が欲しいという理由で聖レーツェル国に手を出した。
聖レーツェル国に手を出せば、人類の脅威とみなされても何らおかしくない。
本人に人類を傷つける意思がなくとも、全世界で信仰されているレツェル教の総本山に手を出したのだ。人類の敵と認定されるのは当然である。
たとえそれが、セント・ユクトゥス大聖堂の一室を乗っ取って、食事とお菓子を要求してごろごろしているだけだとしても。
城で働くメイドたちが用意してくれたお茶に口をつけて、わたしはううむと唸る。
このまま大臣たちに押し切られるようにして「討伐」という選択がされるのは何としても避けたい。
けれどもおそらく、聖レーツェル国も魔王トルデリーゼを討伐する方向で考えているだろう。
教皇猊下としては、現在進行形で自分のお膝元が魔王に荒らされて赤っ恥をかかされている状況である。
威厳の問題もあって、このままだと平和的解決に……とは、ならないだろう。
多数決を取れば圧倒的に不利な状況であるが、わたしたちは何としても「話し合い」という選択肢を勝ち取らなければならなかった。
このまま人類対魔人なんて構図になったら大変だからだ。
「お義父様……国王陛下やディートヘルム王太子殿下のご意見はどうなっていますか?」
「二人は討伐には反対みたいだけどね。ただ、納得させるだけの理由を提示するには、ヴィルの意見も必要だろうと待っていたところだよ」
「お兄様は?」
「キールは、この場ではお客様の立場だからね。今のところ静観しているみたいだけど」
そういえばそうね。わたしのお兄様であっても、立場としてはフェルゼンシュタイン国の王太子と言う立場だ。一足先に帰途についてフェルゼンシュタイン国王(お父様)の名代でもある。
もし討伐に、となったときにはフェルゼンシュタイン国に協力要請する可能性が高いからという理由でこの場に参加しているけれど、本来、国の会議に他国の人間が参加することは稀である。
今回は聖レーツェル国からの要請という形になるので特別に参加しているのだ。ゆえに、意見を求められれば発言できるが、そうでない場合は出しゃばって口を開かない方がいい。そういう立場であるから、お兄様も余計なことは言えないのである。
……ああ、何度も言うけど、結婚式の翌日に魔王を討伐するとかしないとかの会話って……なんて色気がないのかしら。がっくし。
肩を落としてお茶を飲んでいると、ライナルトが言ったように、書記官が先ほどまでの意見をまとめた紙を配りはじめた。
急いで人数分揃えてくれたのだろう。文字はかなり歪んでいるが、急いで複製してくれたと思えば申し訳なくなってくる。
……こういうとき、コピー機があれば便利なんだけどね。
さすがのお兄様でも、コピー機は作れまい。たぶん。いや、どうだろう。今度試しに聞くだけ聞いてみようかしら。
案外あっさり「こぴる君」とか名付けて作ってくれたりして。
そんな明後日なことを考えながら渡された紙に目を落とした。
意見の大半は「討伐」もしくは「捕縛して投獄」というものが多い。
簡単なことのように言ってくれるが、討伐も投獄も、いったい誰がするのかってところはまったく考えていないのだろう。
どうして会議室を文官だけにしたのか甚だ謎である。騎士団の上層部も連れてきてほしかったわ。そうすればもう少し建設的な意見が出たでしょうに。
大臣たちの意見の中でまともなものを出しているのは、軍部の総帥くらいなものだった。彼が唯一、この中では武寄りの立場だからだろう。
しかしそれでも「話し合い」ではなく、武力行使で立ち退いてもらうというものなのだから、魔王と話し合うという選択がいかに荒唐無稽な話であるのかがわかるというものだ。
……ま、それもそっか。魔王と話し合うなんて、これまでの歴史で一度たりとも実現したことなんてなかったもんね。選択肢のテーブルにすら乗ったことがないと思うわ。
話し合う前に魔王に殺されるのがオチだ、と考えているのだろう。
わたしも、トルデリーゼを直接見て、そしてバルトルトから魔王とはなんたるかと正しい情報を与えられる前はそう考えていたし。
出されたお茶を飲み干して、メイドがティーカップを片付け終えたところで、会議が再開される。
「それでは、魔王の対処についての会議を再開するが、聖女も到着したことであるし、その前に魔王についての情報のすり合わせを行いたい。皆には黙っていたが、ここにいるフェルゼンシュタイン国のカールハインツ王太子、ライナルト、そして聖女ヴィルヘルミーネは、今話題にしている魔王と面識がある」
伯父様の暴露に、会議室は蜂の巣をつついたような騒ぎになった。
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