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【書籍化】家族と移住した先で隠しキャラ拾いました  作者: 狭山ひびき
厨二病魔王と〇〇に!

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魔人との交渉 7

お気に入り登録、評価などありがとうございます!

 ミヒェルさんは紅茶で喉を潤し、続ける。


「けれどマルトリッツはまだ諦めてはいなかった。むしろクリスタラーが死んだことで、彼の意思を継いで精力的に動きはじめました。マルトリッツは、魔王トルデリーゼに手出しができないのならば、排斥派の人数を増やそうと考えたようです。共存派の中でも、比較的中立の立場にいた魔人たちの引き抜きをはじめたんですよ。その対象の中に、私もいました」

「ミヒェルさんは中立の立場だったんですか?」

「そうですね。中立、といいますか……、わざわざ人類に対して波風を立てる必要もないだろう、と言うような考えでした。人類側が手出ししてこないのだから、こちらが手を出す必要もない。不必要な労力を割くのは馬鹿げていますからね。それに、私たちは食糧を人類に依存していますから。彼らが育てたもの、作ったものを購入しているので、人類に絶滅されると困りますし。自分たちで全部賄うのは大変ですからね」


 なるほど、合理的ね。

 わたしたち人間も、勝てない相手に喧嘩なんてしたくないし、喧嘩を売って来ない強敵にわざわざ挑む理由なんてない。

 例えば住処が奪われますとか、大切な人が傷つけられるとか、相応の理由があるのなら話は別だけど、何もしてこない相手と喧嘩する必要なんてないもんね。

 まあ、国や権力が絡むと、それだけが理由にはならないけど、どこの国の権力者も自殺願望はないから。喧嘩を吹っ掛けても返り討ちになるだけなんだから、馬鹿なことはしないわよ。


「マルトリッツは、中立な考えの相手ならば取り込みやすいと考えたんでしょね。でも、私はマルトリッツの誘いに乗らなかった。そうしたら……」

「まさか、奥さんを人質に取られた、とか?」

「その通りです。排斥派に与するのなら妻を解放すると言われました。……妻が人間なのに、排斥派に与することなんてできるはずがないじゃないですか。妻を解放されても、結局は別れることになる。かといって、妻をこのままにもしておけない。下手に取り返そうとして妻が殺されでもしたら……そう思うと動くに動けず…………」


 悩んでいるときに、伯父様がミヒェルさんに使者を遣わしたのね。

 ようやく話が理解できたわ。

 ミヒェルさんは、自分が奥さんを取り返しに行くと、奥さんを傷つけられそうで怖いから動けない。

 かといって、奥さんと別れたくないから排斥派にも与したくない。排斥派に与するということは人類と敵対するってことだから、人間である奥さんを奥さんのままにはしておけないもんね。ミヒェルさんが種族を超えてまで結婚することを選んだ奥さんを殺すとは思えないから、そうなると離縁する道しか残されていない。

 それは嫌だけど、でも奥さんも早く取り返すいい方法がない。


 時間は、刻々とすぎていき、奥さんは囚われたまま……。

 ――だから、わたしたちの力が借りたい。そういうことね。


 わたしはぎゅっと目を閉じて目頭を押さえた。

 頭痛がしてきたからだ。

 ミヒェルさんの気持ちはとってもよくわかる。

 わかるけれど――じゃあ、わたしたちで簡単に解決できる問題かと問われればそうではない。

 何と言っても相手は魔人。

 ミヒェルさんの奥さんを取り返しに行っても、返り討ちに遭うだけだろう。


 ……正面から攻略するのは絶対不可能。俗にいうムリゲーってやつよ。


 ミヒェルさんもわたしたちに無理を言っているのがわかっているのか、ものすごく申し訳なさそうな顔をしている。

 けれど、今のミヒェルさんにはほかに縋れる人がいないのだろう。

 同じ共存派の魔人たちに縋れば、ミヒェルさんが断ったとみなされて奥さんが害される。

 ミヒェルさんと関係なさそうな人間が、偶然を装って助けるのが、現状考えうる中でベストな方法なのだろう。

 それが、できたらの話だけど。


 ……でも理解できたわ。バルトルトさんとコンタクトを取ろうにも、奥さん問題が解決しなければ不可能なのね。


 奥さんが人質に取られている状況でバルトルトさんを探そうとしたら、マルトリッツって魔人に勘付かれてミヒェルさんが排斥派と戦う仲間を集めていると勘違いされるかもしれない。

 そうなったら奥さんの命はない。

 どちらにしても、ミヒェルさんの奥さん問題が片付かなければ、バルトルトさんまでつながらないわけよ。


「奥さんを捕らえた排斥派の方々は今どこに?」

「村から少し離れたところにある廃村にいます」

「ああ、あれか」


 ミヒェルさんが答えると、伯父様がぐっと眉を寄せた。


「伯父様、その廃村に何かあるんですか?」

「あるというか、あそこは二十二年間の魔王が暴れた際に巻沿いを食った村だ。魔王が滅ぼした村と言い換えてもいいだろうな。あの時、山も一つ吹っ飛んだからな……、あの場所では暮らしにくくなったから村を移したんだ」


 や、山ひとつ吹っ飛んだ……。

 それでも、伯父様たちの討伐した魔王は、魔王となって比較的早く討伐されたため、被害が少なかったと言われている。

 山がひとつ吹っ飛んで被害が少なかったって……魔王、怖っ! 討伐まで時間がかかってたら、間違いなく国滅亡してるわ。


「その廃村の裏手の別の山も丸裸になって、土砂崩れの危険があるからと立ち入り禁止区域にしていたのだが、そうか……そこに住みつかれていたのか」

「山が丸裸……」


 山がひとつ吹っ飛び、そして別の山も丸裸。もうやだ。これ以上聞くの、怖い。

 でも、立ち入り禁止になって人が寄り付かなかったというのなら、排斥派の魔人にとっては都合がよかったでしょうね。


「その廃村に、どれだけの魔人が住んでいるんだ?」

「その場所はそれほど多くありませんよ。今は……確か六人ほどじゃないでしょうか。あまり長い間一か所に住み着くと、瘴気溜まりが発生して聖女が派遣されてきますので、排斥派の魔人もあまり長期間同じ場所にいないんです。と言ってもまあ、六人程度だと瘴気黙りが発生するまで……そうですね、二、三十年はかかると思うので、人間から考えると長期間滞在していると言えるかもしれません」


 そうね、わたしたちからすれば二、三十年は充分長期間よ。


「排斥派の人たちも、瘴気を押さえたりするんですか?」

「ええまあ。ただ、人のためにと言うか自分たちのためにですね。瘴気溜まりが発生すると、正直なところ、私たちも困るんです。食べ物が取れなくなるし……」


 あ~、そう言えば以前、バルトルトさんが同じようなことを言っていたような。


「瘴気溜まりを生みやすい体質ですけど、それを消すことは魔人にはできませんから。極力それを生まないように気を付けるしかないんですよね。なんだってこんな体質なんだか」


 ま、魔人さんたちも大変なのね……。

 でも、おかげでちょっと安心したわ。

 廃村の魔人が瘴気を押さえずに垂れ流し状態なら、あのあたりは瘴気が濃くなっていたでしょうから。

 そうなれば、捕らえられているミヒェルさんの奥さんも無事とは言い難い状況になっていたかもしれないもんね。

 ひとまず、捕らえられているミヒェルさんの奥さんへの瘴気の影響は最小限と考えていいだろう。


「だが、排斥派の魔人六人か……。正面攻略は無理だな。一人……せいぜい二人くらいなら何とかなったかもしれないが、いくら何でも俺たちだけで六人を相手取るのは厳しい。父さんたちに来てもらっても、ミヒェルさんの奥さんを無事に助け出しながら相手取るとなると骨が折れるだろうな」


 お兄様が冷静に実力差を分析している。

 それで二人くらいなら何とかなるって判断できるお兄様を尊敬するわ。正直わたしは、一人だって相手にしたくないわよ。


「……目的は、ミヒェルさんの奥さんを取り返すことよね。なら、魔人たちを相手にせずに取り返せないかしら? ほら、みんなが出払っているうちにこそこそっと奥さんを連れて帰るとか」


 わたしは試しに希望的観測を述べてみたのだけど、お兄様に鼻で笑われた。


「人質一人残して、全員が留守にするわけないだろう」


 ごもっとも。

 伯父様が、ふう、と息を吐く。


「ミヒェル殿の奥方を取り返すのならば入念に作戦を立てる必要があるが……、まず、意見を聞いておきたい。ミヒェル殿の奥方を助けるのに反対意見はあるか?」


 わたしたちは首を横に振った。

 ムリゲーって思うけど、しないという選択肢はない。

 ミヒェルさんの奥さんをこのままにはしておけないし、どちらにせよ、トルデリーゼ問題に取り掛かるにはミヒェルさんの協力が必要だ。

 ミヒェルさんが申し訳なさそうな顔で、深々と頭を下げた。


「妻のことと言い、トルデリーゼのことと言い、ご迷惑をおかけいたします」




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ブックマークや下の☆☆☆☆☆にて評価いただけると嬉しいですヾ(≧▽≦)ノ


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