白衣の天使
今、俺の目の前にあるのは大きな肉の塊
その塊はついさっきまでは優歌という人間だった。
無理矢理自害させされその儚い人生に終止符を討たれ、その塊は彼女の成の果てだ。
彼女の最後の瞬間は笑顔だった、だけどその笑顔は本心ではない。あいつに…Gに最後まで弄ばれた結果がその笑顔だ。
その塊に触ってみるとまだほんのり温かった。触れた手を見てみると彼女から出てきたもので赤く染まっていた。
そしてほんのり鉄の香りがした。
もし彼女だったら間違いなく
「臭い!」
と笑いながら言ったのだろう。
もし彼女が俺と出会わなかったらこんなことにはならなかったのだろうか?
もしあの街で出会わなかったら?
もし一緒に連れて行かなかったら?
あの部屋に残しておいたら?
それに俺は彼女との
「ここから出たら外の世界を案内する。」
という約束もできなくなってしまった。
数えきれない後悔が涙となって流れていく。
その涙は彼女の塊に滴り落ちていく。
「お前いつまで泣いてるんだよ?」
部屋の隅から声が聞こえてくる。
その声こそ、優歌を支配した犯人、そして俺の親友。
いいや、もうあいつのことを親友とは呼ばない。今俺の中にあるのはただ1つ、あいつをぶっ殺したいということだけ。
奴は優歌の一撃によって相当なダメージ負っている。それにあいつは武器を持っていないが、ここには優歌が自害するときに使った銃がある。
この条件なら引き金を1回引けば優歌の仇がとれる。
「待ってろ、今お前のところにいってやる。」
俺は赤く染まった手で涙を拭った、当然目の周りも赤くなったが今はそれでいい。
そのあと優歌の手に握られた銃を再びポケットに納め、瞳孔の開ききった目を隠すため彼女のまぶたを閉じた。
「じゃあ行ってくる、優歌。」
最後に見た彼女の顔は健やかに寝ているようにいい笑顔だった。
あいつも相当なダメージを負っているがそれは俺も同じだった。
ただ歩くだけでも身体中が痛む、けどまだ歩けるだけあいつよりはマシだ。
その時に気づいたことなのだが、この部屋はさっきまでは明るかったのに、今また暗闇に覆われていた。だから俺はちゃんと奴にところに行けてるか分からなかった。
「ここだよ、Y」
その時、前方の部屋の明かりが再びついた。
そして明かりの中にいたのはもちろんGだ。けどそのGの姿は俺が予想していたものとは違ったんだ。
「お前…なんだよ…その姿は?」
奴は立っていた、自分の足でしっかりと。
優歌によって立てないくらいのダメージを負っていたはずなのに…
だけど、それよりも俺が気になったのはGの容姿だ。
奴の頭や脇腹などには包帯がしてあった。そこは優歌の攻撃などでダメージを負っていて大量の出血をしていた箇所だった。
だけども今のGはどこからも出血はしておらず、包帯はしているがそもそもケガなんてしてなかったような感じもする。
「その処置、お前がやったのか?」
俺は余りにも分かりきった質問をGにした。
その質問の答えはもちろんNoだ。ケガの箇所的にひとりで包帯を巻けるはずがない、しかもこの短時間で。
けど俺はその質問にはYesと答えて欲しかった、なぜなら…
「そんなの俺がやるわけないじゃん、つかこんな場所ひとりでできねーよ!」
そう、ひとりでできない…だけどGにはそれができている…ということはいる…
この部屋に俺とG以外の誰かが…
「じゃあ誰がやった?」
俺は恐る恐るGに質問をした。
「白衣の天使だよ。」
白衣の天使?
こいつは何を言っているんだ?
何かの隠語なのか?
それとも別に何か目的があってそんなことを…
「おいおい、なにいってるか分からない顔してるな~?」
それはそうだ、こんな状況でわけがわからないことを言われた誰でも混乱する。
「なら教えてやるよ…」
「白衣の天使=ナイチンゲールは麻酔無しで手術をしたんだぜ。」
その瞬間部屋の明かりが一斉についた。
それと同時に俺の後ろで何かとても鈍い音がした。
俺はそれにただならぬ不安を感じ後ろに振り向く。
そこで俺の見た光景は安らかに眠っていた優歌に向かって何度も刃を突き刺していたひとりの女性…
白衣の天使だった。




