いじめっ子といじめられっ子
その彼女の言葉を聞いた時俺はすぐに
「きっと聞き間違いだ!」
と思った。
今までいろんなことがあって、それを裏で糸を引いていたのが俺の親友だって言うんだから動揺していて当然だ。ちょっとの聞き間違いくらいおきるだろう。
だからもう一度絵空になんて言ったか聞いてみよう。
「え…えっと、今なんて言ったの…?」
「なんて言ったって「はい、ご主人様」だよ、Y君?」
絵空はいつも俺に話している口調でそう答えた。やはりさっきの言葉は聞き間違いではなく彼女がその口ではっきり答えたものだ。
俺ははっきり言ってそれが聞き間違いだと思いたい、いや、そうあって欲しかった。
だってその言葉の意味は…
「なんでそんなこと言ったんだ…?」
俺は彼女にそう聞いた。そんなこと分かりきってるはずなのに、内心まだ信じたくなくなかった。
もしかしたらいつもの冗談で、これからいつもの漫才喧嘩がはじまるただのフリかもしれないじゃないか!
だがそれは違った。
現実はいつも非常ある。
「だってご主人様に聞かれたからに決まってるじゃん!」
彼女のその言葉を聞いて俺の思考が少しの間止まったようなような気がした。頭の中を掃除されたような真っ白でなにも何もかも無くなってしまったような感覚だ。
「ねえねえY君、大丈夫?」
そう心配していたのは紛れもなく絵空だ。
俺は彼女のことを最初出会った時こそ全く分からなかったが一緒にいることでだんだんと分かってきたつもりだった。
だがその今まで積み上げてきたものが一瞬にして崩れた。そして再び彼女のことが全く分からなくなった。
が1つだけ分かったことがある。
「彼女」、絵空は俺の敵ってことだ。
「どうしたんだよY、急に凍ったみたいに固まってよ。冷凍マグロじゃないんだから!」
そう遠くない距離にいるGが俺をおちょくるかの如くそう言ってきた。
「もうご主人様たら~、そんなこと言ったらY君が可哀想だよ!」
Gに続けて絵空が俺をおちょくる。
「はは、そうだなごめんごめん」
「そんなに言っちゃダメだよご主人様、y君こう見えて案外メンタル弱いんだから! 」
この部屋で今起きている状況、それは完全にいじめっ子といじめられっ子とまったく同じ、もちろんいじめられっ子は俺だ。
そして大体の場合そのあとの展開はだいたい2通りある。
1つはいじめられっ子がキレていじめっ子に立ち向かう。
けどこの場合、大勢いるいじめっ子に1人で立ち向かうことになるから勝てるはずもなく大体返り討ちになる。
そしてもう1つはただだだその場で泣くことである。
この場合もなにも反撃しないことをいいことにいじめっ子は激しい言葉攻めをしてくる。
結局いじめられっ子は大勢のいじめっ子には敵わない。
では俺の場合はどうだろうか?
答えは後者だ。
なにも言うことも、反撃することもできずに涙が頬を通り冷たい床に落ちていく。
それを見たふたりはやっぱり言葉で俺を攻撃してくる。
「ほら~、ご主人様があんなこと言うからY君泣いちゃったじゃ~ん! 」
「おいおい泣くなよ~、もう高校生なんだからさ~!」
「そんなこと言ったらまたY君泣いちゃうよ、隣にいる私の気持ちにもなってよ!」
「そうだな、ごめんごめん」
そう、いじめられっ子は何もできない。ここには助けてくれる仲間も先生も家族もいない。
けどこれをなんとかしなければ先には進めないのは確かだ。
いつまでもいじめられっ子なわけにはいかないからな。
だからいじめられっ子重い口を開く。
そして隣にいるいじめっ子にこう問いかけた。
「絵空、君は誰だ?」




