その表情
俺は彼女にどれくらいこの質問をしたんだろうか?覚えてる限り2回は絶対している。
1度目は彼女に初めて出会った時
2度目は彼女のバカみたいな身体能力を目の前で見せつけられた時
けど俺は徐々に記憶を失っていく状態だ、本当はもっとしてたかも知れない。
だからこのカウントは自称ってことで確定ではない。
まあ、それはいいとして俺は彼女に自称3回目の質問をした。
もちろん彼女の答えはこうだ。
「何度も言ってるじゃん!私は絵空だよ、Y君がつけてくれた名前じゃないの~!」
やっぱり彼女はそうやってはぐらかす、本当に記憶がないからそう言うしかないのだろうけどここにここに来て1つだけ分かったことがある。
彼女は敵だ。
「この質問には俺が答えてやろう!」
そう威勢よく切り出したのはもちろんGだ。
「そう言うと思ったよ。」
「そりゃ俺はこいつのご主人様様だからな、何でも知ってるしなにより親友の知りたがってることだしね!」
「なになに、私も知りたーい!」
絵空が自分の記憶のことなのにまるで他人のことみたいな、自分には無関係みたいな、無邪気な反応をしていた。
俺はそんな彼女を見てまるで冷蔵庫に入れられたような寒気が体を覆った。
だって絵空は以前、自分の記憶がないことを凄い気にしていた。俺の前ではいつも明るく振る舞っていたが、時より見せる悲しい表情が、そしてなにより、絵空と一緒に夜を過ごしたあの日、彼女は泣いていたんだ。
他のなにより自分のことについて知りたいはずなのに、そんな態度をとる彼女に俺はゾッとしたんだ。
「ほら自分のことについて話すんだ、お前もこっち来なよ。」
「はーい、ご主人様~♪」
俺の隣にいた絵空そう言うと駆け足でGのもとに向かっていく。
俺にことを見ずに、何も告げずに…。
その姿を見ていくうちに部屋には彼女が放つ足音の他に、なにかが崩れていく音もした。この音が聞こえたのは恐らく俺だけだ、Gにも、彼女にも聞こえてはいないだろう。
こうして俺は完全に1人になった。
「ただいま、ご主人様♪」
「うんうん、お帰りなさい!」
Gのもとにきた絵空は彼にべったりだ。そんな彼女の顔は満面の笑みで埋まっている。
Gもそんな彼女の頭を撫でたり、いろんな所も触っている。
そんなことをされても絵空は文句1つ言わずになすがままだ。
これは新婚カップルのなれそめを見ているみたいだ。
ふたりがそんなことをやってる最中、絵空が一瞬俺のことを見た。
「えっ…」
その時の表情はご主人様ことGに見せているものとは違うまた別のものだった。
その表情の意味を俺はこの時理解出来なかった。
そして再びGのことを見ると彼女は再び笑顔の表情に戻った。
「さあ、そろそろ始めようかな。」
Gは絵空の肩を軽く叩くと彼女は彼にべったりするのをやめに姿勢を正す。
俺は目に少し貯まっていた涙を拭いGのことを静かに見つめる。
「そんじゃあ話すとしますかね、君が絵空と呼ぶこの少女の話を…。」




