明かりと当たり
この部屋を出たら最後、もう戻ることはできない。いや、戻る場所はない。
先に進んだとしてもそこは真っ暗な単調な一本道、その終着点が俺達の最終目標だ。少なくとも俺はそう思っている、全くといっていいほど確信はないのだが…。
今までいた部屋が結構明るかったため、ある程度その明かりで周りを確認することができた。しかし部屋から離れるにつれ、当然明かりも弱くなる。そしてとうとうなにも見えない真っ暗闇に突入した。今までは懐中電灯やらなにやらでなんとか明かりをつける手段はあった。しかし俺達があの部屋から持ってきた物にそういったやつはない。それ以前にそういったものが部屋になかった。
あんなにシャンデリア輝く部屋に懐中電灯みたいな微かな光をだす機械なんていらないだろう。
そしてなにより、部屋から出れないお前たちには必要ない、って考えだろう。
でも
「あの時食事じゃなくて、明かりを出せる物頼めばよかったな…。」
と思ってしまう。
こんなに真っ暗じゃ隣にいるはずの絵空も確認できない。普通のお化け屋敷でも、安全確認の意味を込めてある程度の明かりは確保できたはずだ。
それにしてもお化け屋敷のスタッフはよくあの程度の明かりであんなに動けるのだろうか?やはり相当練習したんだろうな、俺も、もしかしたらお化け屋敷で働いたら結構有能じゃないかな?そうだ、全ては終わったら絵空と一緒にお化け屋敷に行こう。まあ、彼女はちょっとしたことでは驚かないと思うが…。
さて、脱線はそこまでにして、この暗闇でなにも見えない中、俺達もなにも対策をしてないわけがない。
まず俺と絵空は横並びに歩いている。そして手を繋ぎ、互いの存在を確認してる。出会った頃だったら、手を繋ぐようなことをしたら彼女にぶん殴られてたところだったが、今回はそれを彼女が提案してきた。もちろん俺は拒否をしない、俺と彼女はそれだけの仲になったわけだから。
そして、もう片方の手で壁を触りながら移動している。この一本道がどこまで続くかわからない。お互い細心の注意を払いながら歩いていた。
「当たり…。」
「だから明かりはないよ!」
「違う、当たったの!」、
「だから明かりは…。」
「明かりじゃなくて当たり!あ!た!り!」
当たりってなにが当たったんだ?宝くじなんてなかったぞ?
「で、なにが当たったの?」
「ほらこれ!」
絵空は繋いでた手を引っ張り俺に壁を触らせる。
「この感触は?」
俺を触ったそれは冷たく丸い物体、明らかにドアノブだ。
「これはもしかして?」
「もしかしたら、あの声の人がいるかもしれないよ?」
「じゃあここが最終目標?」
「だから当たり、意味わかったでしょ?」
「じゃあ行こう…。」
俺はゆっくりとドアノブをひねりそのドアを開けた。
結果から言うと、そこは俺達の最終目標ではなかった。当たりではなくハズレだ。
なぜならドアを開けた先にあった部屋はわずか三畳くらいの広さの部屋で、その部屋いっぱいに大きな機械が置いてあった。
俺はその部屋を見た瞬間、この部屋がどんな役割をしていたすぐにわかった。
「Y君、ここなんだろうね?」
「ここはあのメイド達の待機部屋だよ。」
絵空はなんでそんなことが分かるの?っていう顔をしていたが、それは機械を見れば一目瞭然だ。
「ほらこれを見て?」
俺は絵空にその機械を見せる。
「おおー、これは…」
機械には大きなモニターが何個か設置してあり、そこにはさっきまで俺達がいた部屋が映し出されていた。どこからでも見えるようにトイレはもちろん、俺が使った死角の場所まで映すことができる。もしもメイドが3人いたらあの作戦は100%失敗していただろう。
しかし皮肉なものだ、あの広い部屋にいる俺達を監視するために、メイド達はこんな狭い部屋に押し込められてるのだから。これではどっちが監視されてる身だったのか分かったもんじゃない。
俺達はその部屋を散策したが結局、食事やメイド達が持ってきた物の行方は分からなかった。
俺はこの部屋を出る時、なぜか頭を下げた。自分でもなんでこんなことをしたのか分からなかったが、とにかくそうしたかったからだ。
そのまま俺達は暗闇の中一本道を進み続けた。どこまで続くかわからないこの道を…。




