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虚無世界  作者: 天神
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最高の監獄

その作戦はやろうと思えば今からでも実行はできる。

だが、焦りは禁物だ。焦りは人を狂わせる、成功できるものも成功できなくなってしまう。

俺達はその作戦を必ず成功させなければならない、だから俺達は作戦の最大の障害となるふたりのメイドさんを観察することにした。それぞれのしぐさやくせ、行動パターン、時にはわざと捕まったりしたりした。

こんなことをやっていて何の意味があるのか?時間の無駄なのではないか?と思う時もあった。それほどまでにふたりの特徴を見つけるのは難しかった。

結果的にいうとこの観察はあまり結果がでなかった。

けど意味はあった。

そんなことを何回か繰り返しついに作戦を実行に移す時がやってきた。





「お腹空いたなー、なんか食べたいなー。」

俺がわざとらしく空腹アピールをした。明らかに怪しいがそれでもメイドさんはやってくる、温かくて美味しい食事を持ってきて… 。

しばらく待っていると分厚いドアが開きふたりのメイドがやってきた。

「Y様、お食事をお持ちしました。」

「うん、ありがとう。すまないけどこっちまで持ってきてくれない?」

「かしこまりました。」

俺は今この広い部屋のいちばん奥にいる、ドアから最も遠い位置だ。

やっぱり俺のところにくるのは1人だけだ。もう1人はやはり入口に立っているだけ。できればふたりとも来てほしかったけど、それはないとわかっていた。

「Y様、どうぞ。」

「ありがとう。」

俺は被せられてた布をめぐり食事を確認し、それを

食べようとした。

その時

「ところでY様。」

「な…なに…?」

「先ほどから絵空様のお姿が見えないのですが?」

「トイレやお風呂じゃないかな?絵空も女の子だしあんま散策しないほうがいいよ。」

「そんなはずはありません。お手洗い場ではなにも音はしてません。」

流石にこんなわかりきった嘘はすぐバレるか…。本当はもう少し騙せると思ったんだけどな。

「ならしょうがないか…。」

俺は食事をやめ、入口に向かって全力疾走で走り出した。もちろん後ろからメイドが追っかけてきてすぐに捕まった。

「何度も言っている通り、あなた達はここから出すことは禁止されています。」

「それでいいんだ…、それで。」

「なにを言っているのですか?」

メイドは困惑していた。脱出を失敗して使っているのになにがそれでいいのか理解できなかったからだ。

けど本当にそれでいいんだ、俺がこの状態になっているのも作戦の内だから。

「よし、もういいよ。」

「りょーかい!」

その瞬間、絵空が壁どドアの隙間から現れた。

この部屋のドアは内開き、つまり開けると部屋の中にドアがくる仕組みだ。しかもある程度隙間ができる。

絵空はそこの隙間に潜んでいた。俺はメイドが絵空を見つけないようにドアの隙間が見えない死角連れ込んだ。これが不自然に部屋の奥にいた理由だ。

絵空はそのまま入口に走っていく。

当然入口にいたもうひとりのメイドがここから出させまいと絵空の行方を阻む。

絵空とメイドは激しい肉弾戦を繰り広げている。制服をきた女子高生とメイド服をきた女性がやる行為では当然やる行為ではない。

ふたりはほぼ互角の接戦だ。だが

「痛っ!」

絵空の白いブラウスに赤いシミができた。

「ちょっとそれ反則じゃないの!」

メイドの手に持っていたのは小さなナイフ、しかもいつの間にか両手に手にしていた。

「別に反則ではありません、私達はご主人様はあなた達をどんな手を漬かってもこの部屋から出すなと言われています。それにこの程度の怪我なら後で私が治療します。」

「はぁ~、これはY君からやるなって言われてたけどしょうがないよね…?」

やはりこうなるのか…、もうこうなったら俺は彼女を止められない。

その瞬間、絵空の目付きが変わった。獲物を仕留める野獣の眼差しに。

ぐうぁッ!

絵空のパンチが連続にメイドに食らった。それでも絵空の猛攻はとまらない。パンチやキック、メイドに攻撃はさせる暇がないほどに攻撃を食らわす。

「な…なんてことを…。」

俺を捕まえているメイドは動揺していた。今までなにがあっても無表情だったがここにきて初めてそれ以外の表情をみせた。

「加勢したかったったらしてもいいんだよ?けどそしたら俺が逃げるけどね!」

「クゥッ!」

絵空はメイドふたりなら勝てないと言っていた、けどひとりづつだったら…?俺はそのかけに賭けた。

そして俺はそのかけに勝った。

絵空の攻撃でふらふらになったメイドはもう立つことすらおぼつかなくなっていた。

「君案外よかったんだね~?調子よかったら私ふたりでも勝てたかも?」

「絶対…ここから…出すわけ…。」

「ああ、それもういいよ、ほら早く」

絵空はメイドが持っていたナイフを奪いそして…

「死んで…。」

そういい放ちメイドの喉をかき切った。メイドの喉からは噴水のように血が飛び散り彼女はその血の雨をもろに浴び、小さな赤いシミしかなかったブラウスは真っ赤に染まった。

「こんな…まさか…。」

「さてどうする?このままだと絵空がにげるぞ?」

「それはあなたも一緒です。私がこうしている限りあなたはここから逃げられない。」

「それは大丈夫、俺は絵空に全てを任せたから。」

「なんですって…?」

「絵空、後は頼んだ!」

これでよかった。俺が行くより絵空がいったほうが委員長を救出する可能性が高い。だから俺は絵空に全てを託す、そのための作戦だ。

「ごめん、やっぱり無理…。」

「ウゥ…。」

突然メイドが唸り声をあげて倒れた。拘束が解けた俺はなにがあったのかとメイドを見た。するとメイドの脳天にはナイフが突き刺さっていた。

メイドを倒したのはもちろん…

「言ったでしょ、ひとりづつなら大丈夫だって!」












俺達はあらかじめ持ってきて貰った制服に着替え部屋の中から使えそうなものをまとめた。

「けどなんで俺を助けたんだ?作戦だと俺をおいて…。」

「ダメだよ~、Y君には私との約束があるんだから~!」

「約束?」

「もう~!忘れちゃったの?ここから出たら外の世界を案内するって約束~!」

「あっ、そうだった!」

「ったく~!」

よかった、この約束は覚えていた。いくらこれからいろんなことを忘れようとしても、今覚えてることは大切にしていきたい。

「じゃあ行きますか!」

「うん!」

それではここからもついに別れの時がきた、この最高の監獄から出る時が。

俺達が居なくなったその部屋に残ったのは、戦闘によって荒らされた家具と、今まで俺達を親切丁寧ににお世話をしてくれた、かつてメイドだったふたつの肉の塊だ。



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