自分自身の記憶
記憶って一体なんだろうか?
俺はあの施設で特異体質の力を大量に採られた。その力は奴らの好きなように使われ、俺はその代償に
徐々に記憶が失われていく後遺症を負った。
それを初めて聞かされた時、俺はどす黒い何かに吸い込まれたような感覚がした。
すべてが飲み込まれるあの感覚、俺はそれから脱け出すために、奴の、全ての言葉を、必死に全て否定した。
だけど記憶が失われていってるのは奴に言われる前から薄々気づいていた。
絵空が聞いてきた簡単な質問にも俺は答えられない時が多々あった。その状態が何度も続き本当は
「俺はなにか大切なことを忘れてるんだろうか?」
と感じることもあった。
そしてその感覚は見事に的中、クイズ番組なら優勝して賞金が貰えるくらいの解答だ。
そのうち俺も絵空のように自分が何者であるかも分からなくなってしまうのか?
彼女は自分の名前もどうしてここにいるのか分からないままあの街に放り出された。それも奴らの実験のためだ、特異体質の力を絞り採られ尽くしてもなお利用する奴ら、俺も委員長に助けられなかったら彼女と同じように実験されていたのだろう。
絵空は自分が何者かは分からないけど、持ち前の明るさで不安や恐怖を払拭するように見えた。
けど俺にはそんなことはできない。はっきり言って怖い。
仮に全ての記憶がなったとしたら、それは本当に俺
と言えるのだろうか?
そこにいるのは俺の記憶が全くない俺、今までやってきたこと、経験値、積み上げたものが全てない状態。
パソコンでいうと全てを初期化したまっさらな状態だ。
それは俺が生きてるってことになるんだろうか?もはや生まれ変わりと言ってもおかしくない。
絵空だって今はあんなに活発で明るい女の子だけど、記憶を失う前は無口で地味な女の子だったかも知れない。
それは果たして同一人物とよんでいいのだろうか?
その答えは俺にも、おそらく誰にも答えられないだろう。
だから俺もそうなることが怖い。
けど今俺にはやることが2つある。
1つは委員長を救出すること。
そしてもう1つは
このふざけた計画を潰し俺達みたいな被害者を出さないこと。
おそらく、嫌、確実に特異体質の人間は俺達以外に多数いる。
だって、仕組まれていたとしても委員長や絵空に出会うことができた。
貴重な特異体質だと言われてるが、なら偶然でもこんなに出会えるはずがない。
そして奴らは特異体質の人間を実験の材料として俺達と同じ状況になるだろう。
それは絶対に止めなくちゃいけない。
なら誰がやる?
今それができるのは全てを知った俺だけだ。
何かをするのはそれだけの代償を負わなければいけない。
それが大きければ大きいほど…
おそらく俺の場合は記憶だろう。
だからもう怖いなんて言ってられない。
それなら行動は早く実行せねば。
では、もうこれで俺の1人語りは終了だ。
ならもうそろそろ起きないといけない。
俺の最初で最後の反撃の始まりだ。




