彼女が気にしてたこと
「お前は一体なにを言っているんだ…?全然意味が分からない…」
「意味が分からないってそのまんまの意味だよ?ここにいるのはみんな君のクラスメイトだよ。嫌今はクラスメイトだったと言うのが正しいかな。」
その声は相変わらずふざけた口調で俺に喋りかける。しかしその内容は支離滅裂なものだ。
けどそれならなんでこいつはこんな嘘をつく?
こんな分かりきった嘘をついたところで何の意味があるんだ?
そして何だかこの気持ちは?
体の中から何かが沸き上がるようなこの感情は?
けどそれは喉まできたところで敷居に阻まれたみたいに止まり頭ではやってこない。
本当に一体なんなんだ?
「ちょっと変な嘘つかないでよ!」
その言葉を言ったのは紛れもない絵空だ。
「おやおや、君のことを忘れてたよ、絵空君」
「それも嘘」
そして彼女は俺の代弁者みたいに俺が言いたかった事を声の主にいい放つ。
「嘘つくならもうちょっとマシな嘘つきなよ、もし本当にY君がこの教室に入った瞬間にすぐわかるはずでしょ?それに…そ…れ…」
何かをいいかけたその瞬間、絵空はその場に崩れるように倒れこんだ。
「おい、絵空!しっかりしろ!」
俺は彼女の元に駆け寄り、息ができるようにうつ伏せで倒れていた彼女の体を仰向けにした。そして心臓の音を確認するために胸に耳を当てた。
「よかった、息も心臓を大丈夫だ。」
俺が安心したのもつかの間、スピーカー越しから不気味な笑い声が聞こえてくる。
「フフフ…やっと効いたか。」
「お前、絵空になにをしたんだ。」
「いやね、ちょっと薬を注入しただけだよ。」
「薬…?」
そんなバカな、薬なんて彼女は持ってきていないはずだ。薬は保健室から俺が何個か持ってきたがまだ1つも使っていない。まずそれ以前に薬を注入するタイミングが、人が、機会がどこにあったって言うんだ?
「一体どうしてって顔してるね…。じゃあヒントをあげよう…、彼女はあるものを気にしてたよね…?」
あるもの…?
「それは君にもよくいってたよ。」
俺にも?
「ここまで言っても分からないんてね、いいよじゃあ最後のヒント、彼女が気にしてたのは汗の臭いだよ。」
汗の臭い…もしかして…!
俺か彼女のカバンを開けた。その中であるものを見つけた。
「制汗剤…?」
「そう制汗剤だよ!正解、よくわかったね。」
「けどなんで?制汗剤なら彼女は今まで何回もつけた、それに俺も!」
「そうなんだよね~、彼女は制汗剤を複数回に分けてつけた。まあ汗かいたときにつけるなら当たり前の使い方だ、だから制汗剤に入ってた薬も一度に少量しか注入されなかった。それがシャワーを浴びたあとに使った時に薬が作用するくらいまで溜まり今効力があらわれたんだね。」
「そんな…」
「計画では本当だったらもうちょっと早く利くはずだったんだよ。だから最初に言っただろ?よくここまでたどり着けたねって。」
あいつらは絵空のことをきっちり調べていた。だから彼女が汗の臭いや体臭のことを気にしていることを知っていた。それだから彼女が怪しまれない方法で、彼女が良かれとやったことで、そして彼女自身で薬を注入させることができた。
そしてその理屈だと、俺も彼女から貰った制汗剤を何回か使った。だからあと数回使っていたら彼女と同じように倒れていたかも知れない。
「うんうん、寝顔を可愛いね♪」
「黙れ…」
「羨ましいよY君、委員長ちゃんに続いてこんなに可愛い子と一緒にいれるんだもん。」
「…黙れ…」
「いいな~、いいな~」
「黙れって言ってるんだよっ!」
俺は思わず声を荒らげた。本当だったらもう2度とこいつの声を聞きたくなった。でもこいつからはいろいろ聞きたいことがある。
「おい…ここにいるのが俺のクラスメイトってどういうことだ…?」
「黙れって言ったのは君じゃないか~、全くわがまま高校生だな~。」
「そんなごたくはいい、早くしろ!」
「わかったよ、そんなに知りたかったら教えてあげる。でも後悔するなよ?これから話すことは君自身にも大きく関係することだからね…。」




