初めての感情 side V
軽快な音楽がどこからか聞こえてきた。
何かと思いふらりと立ち寄ってみると、色鮮やかなステージが公園に一つ。
その上で見せ物をしているようだ。
【クリスタルクラウン】だった。
「これが…」
師匠キアラの残したヒント。
ここに俺の答えがある。
『最後は、我らが誇る花形!踊り子のルイーゼ!』
ふわふわとした衣装を身に纏った少女。
「あの娘は!」
忘れることはない。
頭の上で結ったお団子から少しこぼれた金色の髪。
大きな琥珀の瞳。
彼女だ。あの日、町でぶつかったあの娘だ。
舞台から遠く離れた木にもたれ掛っていた肩は、驚きでそこから離れた。
「ルイーゼ…。」
ルイーゼという名前なのか。
口にすると鼓動が高くなった。
また逢えた。
君に逢いたかった…
ルイーゼ。
俺には気づかないまま、彼女はステージから下りていった。
なんて綺麗なんだろう。
凛としたあの姿。
君の笑顔は、世界で一番輝いている。
ああ、ルイーゼ…。
もっと近くで、君の姿が見たい。
君と話がしたいんだ。
この気持ちがなんなのかは知らない。
ただ、会いたい。
――――――――
公演が終わり、オレの足は自然と一座のテントへ向かった。
女性がいた。とても優しそうな人だった。
聞いてこよう。
「すいません、ルイーゼさんはいらっしゃいますか?」
「あの…」
「?」
「ごめんなさいね、ルイーゼは今練習でいないわ。それに、部外者との面会はしてはいけないことになっているのよ。」
「そうですか…。分かりました。」
帰ろう。
やはりこんなことは無理だったんだ。
しかし、これから毎日見に来ることは許してほしい。
ほんの少しの希望を信じたい。
そういえば、キアラについて聞くの忘れてしまった。
まあいいとしよう。今日はとてもいい気分だ。
「ん?」
公園の中を歩いていると、かすかに誰かの会話が聞こえた。
ちょっと聞いたことがある声だったため近づいた。
「練習、付き合ってくれな い?」
「君がレオンと呼んでくれるなら。」
「…レオン、お願いよ。」
「もちろんさ、ルイーゼ。」
彼女だ。
楽しそうに踊っている。
あの男は、一座のヴァイオリン奏者…
ふたりは仲がよさそうだ。
「はぁ…」
急に気分が落胆した。
歳も近そうだし。付き合っているのだろうか?
考えると頭がぼうっとした。
何でこんなに落ち込んでいるのだろう?
悔しいのだろう?
嫉妬、しているんだろう?
そうか。
俺は恋をしたんだ。
叶わない恋なのに。
あの娘を、好きになってしまったんだ。
でも、もう止まらない…
この気持ちだけは。




