二度目の出逢い
困ったわ…
「お嬢さん、可愛いね。僕らとお茶でもどう?」
「あの、ごめんなさい。結構です。」
「つれないねぇ」
「お、お使いの途中なので!失礼します!」
「逃げようとしてるのかい?すぐそこの酒場だから、ね?」
どうしたらいいのだろう。
いままでレオンかピートが助けてくれたけど…
今日はいないし。
こんな日にナンパなんてついてない。
この人たちもなかなか引いてくれないし。
いい加減にしてくれないかしら…
「本当にごめんなさい。」
「…言うこと聞かねえ女だな。」
気付いたときには遅く、男は怒り狂った目でわたしを見ていて、瞬時に片腕を捕まれた。
つかまれた手首がギリギリと痛む。
こわい、誰か…助けて!
「痛っ…」
誰か助けてっ!!
ドンッ
「ってえな…何すんだよ…」
「何か文句でも?」
「お前はっ…!」
「頭、こいつヴィスターです!」
「何!?あのヴィスターか!…今回の所はこれまでにしてやる」
「はぁ、はぁ…」
た、助かった…
しかし何があったのだろう。
パニックになったわたしの頭では、すぐに今の状況を覚ることができなかった。
目の前にはどこかで見たことのある深い群青の髪。
この人は…
「お怪我は、ありませんか?」
そうだ。
あの曲がり角でぶつかった人。
優しく手を貸してくれて、かっこいいなと思ったあの人。
「あ、ありがとうございます!」
「いえ、花形スターが怪我でもしたら大変でしょう?ルイーゼ嬢。」
「どうしてわたしの名を?」
「今日、偶然公演を見たんですよ。」
「そうだったのですか!あの、お名前伺っても?」
「ヴィスターです。ヴィスター・クレイグ。」
「ヴィスターさんですか、素敵な名ですね。」
「さん付けなんてやめてください。ヴィスターでいいですよ。」
「本当?なら、わたしのこともルイーゼと呼んで?」
「ああ、ルイーゼ。」
ああ、どうしてだろう。
こんなにも心が暖かいのは。
彼の強いまなざしでみられるだけでぼうっとするような、この気持ち。
「今日の演技素晴らしかった。」
「ありがとう!良かったらまた見に来て。」
「もちろん。さあ、暗いからテントまで送るよ。」
「いいの?ありがとう。」
「気にすることでもないさ、また絡まれたら大変だし。」
町は明かりが灯り、長く続く路地にわたしたちの影が、長く伸びていた。
―――――
「ヴィスターはこの城下の人なのよね?普段は何をしているの?」
「ああ、細工師だよ。」
「細工師?すごいわ!職人になるにはずいぶん長くかかるのでしょ?」
「そうさ、俺はこれでも12年もやってるんだ。まだまだ一人前には遠いがな。」
「12年!ヴィスターっていくつなの?」
「22歳だよ。」
「3才差なのね!わたしは19よ。」
ヴィスターのこと、もっと知りたい。
渡り歩く町でわたしの初めての友人。
こんな時間が続けばいいのに…
「ヴィスターの作品、見せてくれる?」
「それがな、しばらくスランプでまともな作品作れてないんだ。」
「じゃあ、いつか見せてね?…あっ。」
「どうかしたか?」
「あたしがここにいるうちに…ね?」
そう言うと彼は苦虫を噛んだような顔をした。
そうだ。ずっとここに居られる訳じゃないんだ。
そんな傷ついた顔しないで。
あなたが優しいから、勘違いしそうになる。
忘れそうになる。
旅の間、こんな気持ちになったのは初めてかもしれない。
「ああ、分かった。」
その返事信じてるわ、ヴィスター。




