琥珀色の瞳 side V
綺麗な少女だった。
波打ち輝く金髪にきれいな琥珀色の瞳。
目に焼き付いて離れない。
あんな娘がこの街にいたらすぐ気付くだろう。この町には来たばかりなのではないだろうか。
まあ、この広いエーデリアの城下町でもう一度会うことなどないだろうけど…。
「ヴィスター様、お夕食の時間です。」
「ああ、今いく。」
サラの料理の腕はなかなかのものだ。
「今夜はピザにしてみました。」
「珍しいな、ピザなんて。」
「たまには手の込んだものもいいと思いまして。」
「ああ。それじゃ、いただきます。」
「はい、どうぞ召し上がれ。」
一口食べると伸びるチーズ。
そのチーズの濃厚な味が口の中に広がってとてもおいしい。
「どうですか?お口に合いますか?」
「ああ、うまいな!」
「あ、ありがとうございますっ!…サラ
は感激でございます。」
「…。」
「あ、そういえば明日から近くの公園で【クリスタルクラウン】という旅芸人一座の公演があるらしいですよ。」
「【クリスタルクラウン】?!」
「なにか御存じなのですか?」
「いや、別に…。」
何故か言うべきではないと考えた俺は話すのをやめ、食事に集中した。
「ごちそうさま。」
「ヴィスター様、デザートにリンゴがあるのですがいかがですか?」
「・・・リンゴ」
「どうなさいましたか?」
「ああ、何でもない。もらうよ」
「それではちょっとお待ちくださいね!」
リンゴ。
それを聞いて思い出すのは、あの金髪の少女。
ほんのちょっと、偶然町でぶつかっただけなのに、脳裏から離れない。
こんなになにかを気にするようなことは、今まで無かった。
何故だろう。
町で遇ったあの娘が忘れられない。
俺の奥底に眠る何かを奮い立たせるような、引っ張り出すような。
強く頭を殴られたような。体が痺れるような。
そんな感覚だ。
なぜ、こんなに気になるのだろう。
もう遇うことのないはずなのに。
またどこかで遇える気がするのは。
遇いたいと願っているのは…
何故だろう?
今更ながら、彼女の名前を聞いておけばよかったと思った。




