青灰の瞳
「立てますか?」
意外と律儀な人らしい。
「あ、はい。すいません。」
「いえ、俺の方こそよそ見してたんで。本当にすいませんでした。」
彼が手を貸してくれて、あたしは立ち上がってその顔を初めて目にして驚いた。
高い身長に、長い手足。
薄いブルーグレイの瞳と群青色で短めのクセの無いサラサラの髪。
目は切れ長で、通った鼻筋。
一見冷たそうに見えるのに暖かい視線。
彼は一つだけ落ちたリンゴを渡してくれて、
受け取って・・・
「気を付けて歩いてくださいね。最近は暗くなりやすいですから。」
「はい。…でも」
なんだと言いたそうに彼は首を少し傾けた。
「…あなたに言われたくないです。」
「ははっ」
「あっ!笑いましたね?」
「すいません、つい・・・」
「ウフフ。あ、早く帰らなきゃ・・・本当に失礼しました。」
一礼してその場から走って立ち去った。
かっこいい人だなと思った。
優しくて真摯な瞳。ブルーグレイが印象的な。
素敵な人がいっぱいいる所だわ。
でもこんな大きな町では、もう彼と遇うことはないと思うけれど。
帰ったら明日の準備をしないと。
エーデリアでの初公演。ミスなんてしたくないもの!
「ミレアさん、リンゴ一個おまけしてもらいました!」
「お帰りルイーゼ。お使いありがとう。」
「いいえ!わたしも楽しんできましたから。」
「それじゃあ、お遣いに行ってきたお礼。」
ミレアさんは一番上にあったリンゴをわたしにくれた。
「あ、ありがとうございます。」
「いいのよ。それよりエーデリアの町はどうだった?」
「ええ、すごくいい所よ!町の人もみんな優しかったの!」
「それはよかった。」
「じゃあ、明日に向けて調整してきますね。」
「分かったわ。夕飯の時間には呼びに行く。」
「お願いします。」
わたしはミレアさんに手を降って部屋に向かった。
もう夕暮れ時。暗くなるのが早いな。
そういえばさっきの人も同じこと言ってた。
ミレアさんにもらったリンゴを食べようとしたらちょっと傷がついていて、あの時落としたものだと気付く。曲がり角であの人が拾ってくれた…
「おいしそう。」
衣装の準備をする。ここの衣装は手が込んであるから管理するのも大変だ。
明日はどれくらいお客さんが来てくれるだろうか。
バンッ
「ルイーゼっ!!」
「きゃぁぁぁぁ!ど、どうしたよのピート!驚いたじゃない。」
「オレの衣装破けちまったんだ、直してくれよ、ルイーゼ!」
「ハァ・・・しょうがないわね・・・」
そんな目で見られたら断れないの分かっててやってるんだのも。
ピートはお裁縫が苦手なの。まあ、男の子なら無理無いけれど。
だから、いっつもわたしがやってあげるからクセがついたのね…
いい加減覚えさせたほうがいいかしら?
まあ、この一座は家族みたいなものだから。役割ってのもあるしね。
「はぁ~。サンキュな、ルイーゼ」
「いいわよ、お礼なんて。いつもの事じゃないの。」
「それもそうだな!」
「ルイーゼ、夕飯よー!・・・あら。ピートもいたの。」
「おう。」
「用意できたから来てね。」
「は~いっ!」
ミレアさんが作ったご飯って大好き。
すごくおいしいのよ!
今夜のメニューはピザみたい!!




