出会いの日 side V
ヴィスター目線のお話。
俺はヴィスター・クレイグ。
エーデリアの町で細工師として修業中の身。
宝石や金銀の装飾を細工している。
俺は2年前まで、細工に必要な才能も技術も乏しい落ちこぼれだった。
それが今じゃ、嘘のように俺は変わったんだ。
2年前の、あの曲がり角から・・・
――――2年前・・
「ヴィスター様、お茶を入れますねっ!」
俺はエーデリアで、師匠であるキアラに細工技術を教わっていた。
幼少期。
貧しい家に生まれ、みじめな思いをした俺は、周りの奴らを見返すために田舎から城下エーデリアに来た。
しかし、周りの大人からは相手にされず、最後にたどりついたのが、キアラのアトリエだった。
そこで彼女は俺の才をかって弟子にしてくれた。
そんなキアラも、未完成の作品を残して、半年前に過労で命を落とし、俺は独りとなった。
そこに現れたのは、サラという一人の娘だった。
第一印象はうっとおしいかった。
傷心の俺に付きまとい、早くどこかへ行ってほしいとも思った。
だが、今では俺の世話をしてくれるいい奴だと思ってる。
何故、世話をしてくれるのかは不明だが・・・
「どうぞ。」
「ああ、ありがとう。」
最近は肌寒くなってきたらしく、白く湯気の立つお茶は美味そうに見える。
キアラのアトリエには鍵が掛かっていて入ることはできない。
ただ、【クリスタルクラウン】という旅芸人一座が、何か知っていることだけは、キアラが死ぬ前に言っていた。
そのアトリエにある、キアラの未完の作品を完成させるのが、俺の夢であるんだ。
「ちょっと出かけてくる。外の空気でも吸いに。」
「分かりました。お夕食には遅れないように。」
「ああ」
外に出ると息が白くなった。
どこへ行くでもなく、ただぶらぶらと町を歩く。
「ヴィスター!サラちゃんとは結婚しねーのか?」
笑い声とともにくだらない冗談やからかいの言葉が飛んでくる。
「ほっといてくれよ!」
「アハハハハ!!」
まったく困った奴らだ。
俺にはそんなつもり全くないし、考えたこともないって言うのにな。
悪い奴等ではないんだけど。
ドンッ
曲がり角をまがった瞬間、誰かにぶつかり一歩退いた。
そこには、尻餅をついた金髪の少女が一人。
俺は慌てて手を差し伸べた。
「すいません!お怪我はありませんか?!」
足元に転がる一つのリンゴ。
俺たちはそこから始まったんだ。
運命の相手。ルイーゼとの出会いだった・・・




