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転生少女の復讐 〜踏みにじられた少女は公爵令嬢として復讐する〜  作者: 葉月麗雄
第一部

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8/9

処刑の後

貴族街から処刑が行われるストーンエデン広場までは馬車を急がせても1時間はかかる。

アミーリアは馬車を急がせたが、馬も生き物であるから長い距離を同じ速度では走れない。


激しく揺れる馬車の中でアミーリアは後悔の念にかられていた。

もっと早くメアリーの事を気がついていれば、こうなる前にこちらに連れてこられたのに。。


まずは処刑を止める。

メアリーを屋敷に連れて帰って傷の手当てをし、回復するのを待って事情を聞き出す。

そしてピエールの断罪まで持っていく。


そう考えていたアミーリアであったが、彼女がストーンエデン広場に到着した時、すでに処刑は終わっていた。

まるでメアリーの涙のような雨が降りはじめて見物人たちはみんな帰って行く。


その光景にアミーリアは呆然と立ち尽くすしかなかった。

変わり果てたメアリーの遺体に近づき、アミーリアは間に合わなかった自分を責めた。

そしてメアリーの遺体に謝罪する。


「ごめんなさい。。助けてあげられなくて、ごめんなさい」


いくら謝罪したところでメアリーから返事が返って来ることはない。

アミーリアはメアリーの腕に付けられた腕輪を外して自らの腕につける。


「この腕輪はあなたの遺品としてもらいます。あなたをこんな目に合わせた奴らを必ず断罪する。。」


降りしきる雨の中でアミーリアは腕輪を握りしめてそう誓った。


「お嬢様、お身体に障ります。馬車にお戻り下さい」


護衛騎士たちに促されてアミーリアはうなだれるように馬車に戻って行く。




それからまもなく、兵士たちに殴られて気を失っていたアルベールが目を覚ました。

アルベールは処刑を力ずくで強引に止めようとして兵士に抑えられ、揉めて殴り合いになり顎に受けた一撃で気を失った間に処刑が実行されてしまった。

降りしきる雨の中、アルベールは首のなくなったメアリーの遺体に近づいていく。


「お前と一緒に買い物して他愛の無い話をするのが楽しかった。なんでこんな事に。。」


折れてあらぬ方向にねじまがった両手両足、全身傷だらけの体を見て凄まじい拷問にかけられたのが一目瞭然であった。

アルベールは怒りで狂いそうになるのを懸命に堪えた。


「メアリー、お前の無念は必ず晴らしてやる。。」


それにはどうしたらいいのか。

どうすれば貴族たちに対抗出来るのか。

アルベールはラドフォードの教会に戻って今後の対策を神父に相談する事にする。


☆☆☆


メアリーが処刑されてから、アミーリアは護衛騎士たちに諭されてロスメル領の貴族街にある別邸に戻った。

ここはラドフォード家がロスメル領で社交界や仕事がある時の住居として使用している邸宅である。


「屋敷に戻ってからもずっと泣かれておられる。何かかける言葉はないものか。。」


「とりあえずはあの少女についてここまでわかっている事、新たにわかった事をご報告申し上げて、今後の活動方針を決めてもらう事にしましょう」


護衛騎士たちもメアリーがアミーリアが幼少の頃に仲良く遊んだ女の子だったという事を思い出していた。

平民の少女1人のためにここまで奔走する主に理解が及ばないのは確かだが、臣下である以上は主の力になるのは当然であった。


屋敷におけるアミーリアの執事役の男性が、護衛騎士たちに頼まれてアミーリアに声をかけにいく。


「お嬢様、悲しみのお気持ちはお察し致しますが、いつまでもそうしているわけにもいきますまい。処刑されてしまった少女のためにも貶めた連中を処罰にまで持っていくことがお嬢様の務めと存じます」


執事の言葉にアミーリアは拳をぐっと握りしめる。


「わかっています。必ずピエールを処刑台に送らなければ私はあの世に行ってもメアリーに合わせる顔がありません」


「それならばようございます。騎士たちがこれまでわかった事につきましてご報告がございますので執務室にお越し下さい」


アミーリアは執事とともに執務室に出向いた。


「みんな、心配かけてごめんなさい。もう大丈夫、気持ちを切り替えてメアリーの無念を晴らすために次の行動に移るわ」


アミーリアの言葉に護衛騎士たちもひと安心する。

そして順に報告をあげていった。


「カジノ? ピエールはそこに出入りしていたのですか?」


「はい、3年ほど前から貴族御用達のカジノに行くようになり、かなりの借金があったそうです。負けるたびにカジノから前借りを繰り返してカジノにとっては農奴のうど〔カモの意味〕だったのでしょう」


「どれくらいの借金をしていたの?」


「およそ金貨15枚ほどだそうです」


「今回盗まれた金額に近いわね。おそらくピエールはその借金返済のためにナヴァル伯爵に何か理由を付けて金貨20枚を準備させて、それを借金返済に充てた。あとで伯爵に問われないようにメアリーが盗んだ事にしたというわけね」


「そう推測して問題ないでしょう。残りの金貨を使ってメアリー嬢の父親や神父に口裏合わせをさせたのは調べがついております。なお、今回の一件につきましてナヴァル伯爵はご存じないようでございます。まずは伯爵にこの事を伝えてはいかがでしょうか?」


「いえ、まだ確実な証拠が掴めていないのに伯爵に言っても信用されないでしょう。ピエールが言い逃れ出来ない証拠を掴んでからにします」


ピエールが犯人というのはアミーリアが一番怪しい人物としてマークしているだけで、まだそう言える証拠が揃ってないのだ。

だが、ここまでの状況でその推測が外れていない事はほぼわかってきた。


「それと、メアリー嬢が処刑された後でお嬢様の他にもう1人、メアリー嬢の遺体を見ていた男がいたそうです。この者はアルベールと申しましてメアリー嬢とは幼馴染で仲の良かった人物だそうです。おそらく彼もメアリー嬢の復讐を考えているのかもしれません」


「アルベール。。メアリーの幼馴染なのね。信用出来そうな人物であれば味方に引き込みたいわね。あなたはその人物をマークしていて。味方に出来そうなら私が声をかける」


「承知致しました」


「あとは証拠。カジノがピエールから借金を返済されたという証拠が残っていれば、金貨15枚の行方は判明する。次に父親の借金を返済するのに使った金貨2枚、あとは手下たちと教会にばら撒いたのでしょう」


「お嬢様、そのカジノは裏でロスメル公爵が関わっているようでございます。そうなると簡単には調査出来ません。ロスメル公爵を説得しなければならないでしょう」


「ロスメル公爵か。。また厄介な相手ね。娘のシャロンは傲慢で社交界でも評判の良くない人物。頭が痛い案件ね」


カジノと言ってもいわゆる裏カジノで、貴族専用の秘密の賭場であった。

それを運営しているのがロスメル公爵とすれば痛い腹をさぐられるような事は許可しないであろう。


カジノで領収書のような物が手に入れば証拠が掴めるというところに来たが、相手はロスメルの領主。

アミーリアと言えども迂闊に手の出せる相手ではなかったのだ。

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