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年末でした

「え!お休みですか?」

「あぁ、来週1週間はね」

「一年ももう終わるんだ、家族で仲良く過ごすのも悪かねえだろ」


年末年始の休み、この世界にもあるのか。っていうか、こっちにきてもうそんなに経ってしまってるんだね、そもそも何月にきたかわかってないけど、私。

そんなわけでアンナさんとヨハンさんからはお休みを頂いてしまった、飲食店なんだから寧ろ稼ぎ時なんではとか考えそうになったけど、ダメですね。日本人の社畜精神を異世界に適応してはいけない。絶対にいけない。


で、2人はその1週間何をするのかというと息子さんとその奥さんの家にお邪魔することにしたんだって。やっぱり子供いたんだ、しかも自立してるお年の。こっちでも年末年始の過ごし方はそういう感じなんだね、2人の息子さんならきっといい人なんだろうな。


「息子夫婦さんはどちらに?」

「三つ向こうの街さ、行けない距離じゃないんだが、ちと面倒でね」

「たまに顔見るくらいで十分だぜ、あのバカ息子はよ」

「へぇ?家出てった時はぐでんぐでんに酔っ払ってたくせに立派になったじゃないの」

「そ、そんなこたぁしてねえ!」


アンナさんにからかわれて焦るヨハンさん、うん、和むなぁ。仲の良いご夫婦っていいよね、家族仲も良好なんだろうな、1週間しっかりと羽を伸ばしてきてほしい。微笑ましく2人の様子を見ているとアンナさんが思い出したように私を振り返った。


「そうだ、ハナコはどうなんだい?」

「え?!あ、あー…えっと。下宿でゆっくり過ごそうかなって」

「ふーん、なるほどね、寂しいならついてきても構わないんだよ」

「そ!そんなお世話になれませんよ!それにわりと賑やかなとこですし」

「そうなのか、そりゃよかった」


一応私は出稼ぎに来ている体でカロン村にいる、バレてるかもしれないけどね。私ってほら、嘘得意な方じゃないしさ、でも多分この2人は余程私が悪い奴だと思わなかったら放っておいてくれるんだろうって思う。


それに賑やかっていうのは本当だしね、広いお城に3人だけなんだから寂しくなるだろうって当初はちょっとたけ考えてたわけだけど、結局毎日みんなで集まって話する間柄になったし、主に城主の変な行動のおかげでヒマにはならないしね。こっちの世界のことも結構分かってきたと思うんだけど、話してるうちに新しい発見もあるしダラダラしてるだけでも楽しい。マリエラ観光で休みとったばっかりだし、なんか悪い気もするんだけどしっかり休ませてもらうとしましょう、深々頭を下げてお礼を言った。








「そんなわけで来週はずっといることになりました」

「いちいち報告なんていらないのに。邪魔なんて思ってないんだから」

「いやー、そこは気持ち的に」


分かってるんだよ、別に親でも保護者でもないんだもの。それにね、なんならこの人達私が無断欠勤しようと何も言わないからね、絶対。最悪だけど1ヶ月くらいぐーたらしてても苦言を呈したりしないと思う、何故なら魔性だから。数千年生きてる人からしたら一年とかマジで誤差なんじゃないかなぁ。

だからこれは私が「正当な理由で休んでますよ」という証明をするためのアリバイ作りというか…まぁ、気にしすぎな自覚はあるんだけど。不思議そうに首を傾げるサリィさんから目を逸らしつつ、首を軽く振る。


「お2人は里帰り…なんてしませんよね?」

「私はそもそも逃げ出してきた身だもの、わざわざ帰ったりしないわ」

「ですよねー。魔王様もそんな感じです?」


サリィさんから聞くフィーって本当無法地帯だもんな、兎人もなんで全滅しないんだよ。あ、その辺を深く聴きたいわけでは全くありませんが。

魔王様にも振ってはみたけど、そもそもこの人って里滅ぼしたタイプだから里帰りも何もないよね。下手な事聞いちゃったなって軽く後悔してると、魔王様はかなり複雑な顔で腕を組んでいた。


「…いや、俺はちょっと神界に寄る」

「え?!」

「ど…どうしたのあなた?まさか遂に死ぬ気に…?」

「俺だって好きで行くわけじゃないからな…?」


大分葛藤してる顔で魔王様が言った内容は、全く魔王様らしくないものだった。神とか別に敬ってませんけどの態度が少しも隠せてない人がまさかのお父さんの実家への帰省を考えている。動揺する私たちに深い溜息をついて魔王様は肩を落としながら理由を話してくれた。


魔王様は創造神様にコンタクトを取ることはないけど、魔法の神様とか、闘争の神様とかには降神魔法やら何やらで話す機会があるらしい。まぁ、魔王様からしたら後輩みたいなものなんだろうけど、そんな気安く呼んでいいお方ではないですよね。言わないけど。

で、当然のようによく呼ばれる神様達は肩身が狭いようで常々創造神様とちゃんと話をしてほしいと魔王様に伝えていたみたい。それをめんどくさいからでかわしつづけて今まで直接な接触は無かったんだけど、私が手紙の仲介を頼まれた件で想像よりも向こうが必死ということに思い当たったらしい。

おっそいな、鈍いにもほどがない?愛情がない家庭でお育ちになった方でももうちょっと気にすると思いますけど。


「ここらで会っておかないと何か周りを巻き込みそうな気がしてな」

「既にハナコが巻き込まれているものね」

「その節は本当に申し訳ない。まぁ、すぐ帰って来る予定だけど」

「あの、神界ってそんなホイホイいける場所なんですか?」

「バッカ、そんなわけないだろ。魂と身体を分断しないと無理」

「死んでません?」


魔王様は顔をしかめて背伸びして、また溜息をついた。星が神様のお家って言っても宇宙に行けばそのまま神様の世界に行けるわけじゃないらしい。なんかややこしいけど、夢以外で神様に会うには身体があるとダメなんだって。星はあくまでゲートみたいなものらしい、いまいちよく分からないけど、ファンタジー世界に突っ込みを入れるべきではないですね。

魔王様は魂の一部を体から切り離して神界に入るつもりだそうな、要するに幽体離脱、っていうか臨死体験なのでは。自分でやれるっていうの相当凄いけど、やっぱり大掛かりな魔法になるみたいで身体は動かせなくなっちゃうみたい。まぁ、そうでしょうね、柔らかく言ってるけど仮死状態だもの。


「その間は完全に無防備になるから、なんかあったらごめん。城の機能は対策取るつもりだから安心してくれ」

「えっと、魔王様は帰って来られるんですか?あの…閉じ込められたり…とか」

「どうだかな。その方が向こうも楽なんだろうけど、多分平気だろ。神は俺が嫌がるようなことはしないからさ」


なんでも神様には鏖殺権っていう力があって地上の命をいつでも好きに消せるらしい、怖っ、神様だから当然でしょうけども、怖っ。勿論その中には私もサリィさんも、魔王様までも含まれててどんだけチートだろうと抗えないみたい。それこそ不死でもない限りはね。

神様ってやっぱり凄いな、とはいっても私利私欲で使うことはないし、使う時は会議みたいな感じで他の神様の意見も取り入れるって話だけど。なんかいよいよ会社って感じだな…ノルマ制だしなぁ。ギリシャ神話?でいう神様みたいに横暴じゃないのは人間としてはありがたいけどそんなに配慮されるとなんだかなぁと思ってしまうよ。


そんな怖い力を持ってたとしても創造神様達は魔王様を殺すつもりはないんだね、ただ和解はしてほしい、と。喧嘩してるわけでもないのに和解ってのも変な話。それだけのために幽体離脱するのも大袈裟な感じがする。


「あのー、夢の中で話すんじゃダメなんですか?」

「無理。だって何しようにも向こうが喋んないんだし」

「…照れ屋なのよ、あのお方」

「こじれすぎてるなぁ!」


仮にも世界を作ったお方がどうしてそんなに積極性に欠けるんだろう、神様って人間になんやかんや言うくせに自分の事になるとわがままなものじゃないの。そりゃマジギレ期間中放置してたのはわがままかもだけど、それにしたってちょっと及び腰過ぎ。


えー、これ本当年末年始に顔合わせるくらいで解決するの?魔王様が帰ってきた時どうか愚痴から始まりませんように。私は心の中でそっと手を合わせた。








「皆、大変だ!御子様が此方へいらっしゃるらしいぞ!」

「は、はぁぁぁ!?いきなりなんで!?いや、まず創造神様はなんと!?」

「歓喜で卒倒した!」

「やっぱり刺激が強すぎたんだ!癒しの神をお呼びしろ!」

「あの方も大変だよなぁ…」


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