訳あり龍人...?
「足が痺れて痛いし、腹筋も痛い...」
「軟弱ね。でも正座してて腹筋って普通痛くなる?」
「だってあれだけ笑いを堪えてたら、お腹も痛く──僕の脊髄が曲がってはいけない方向に曲がってる!!」
目にも留まらぬ速さで僕の脊髄をへし折ろうとしてくるなんて....。龍人の身体能力、恐るべし。
あ、なんか背筋が良くなった気がする。でもなぜだろう。いつもより空が見えやすい....。
「痛たた...で、龍人の君がなんでこんな───」
「クレアでいいですよ」
「エクレア?」
あまり聞かない名前だ。
すごい美味しそうな名前だ。確かに覚えやすくていいと思う。
「違いますっ!私の名前はクレア!なんで付け足したりしたんですか...」
あ、なるほど。
「僕はカミエ・イル。イルでいいよ」
「イルって名字も十分珍しいと思いますけど」
名字?ああ、そういうことか。
なにもそこまで冷たい目で見なくてはもいいのにな。間違えただけなのにさ。
「僕の名字はカミエでイルは名前だよ」
「そうなんですね。...って結局、珍しいことには変わりないじゃないですか」
まあ、それもそうだけど。
僕の家系がなにか特殊な家系ってわけじゃないんだけどなぁ。なんでなんだろう。
「あのさ、年だって近いんだと思うし、堅苦しいのは無しにしよう」
同い年くらいの人に堅苦しい話し方されるのって、どうも苦手なんだよな。
「分かった。ちなみに私は今年で17になるよ」
本当に年が近かったんだ。
あれ?今年で17ってことは、今は16だから───。
「奇遇だね。僕も今年で17になるんだ。同い年だし、クレアさえ良ければタメ口にしないかな」
「じゃあお言葉に甘えるね。改めてよろしく」
『よし!そろそろ帰って!!』
なーんて言えないよなぁ。現状は困ってるわけじゃないし、悪い女の子でもないみたいだ。
それに美少女と話せるのは男としては嬉しい限りだし、無理に帰らすようにはしなくていいかな。
「ところでさ、なんでこんな場所にいたの?しかも、いつものように拝んで行かないのか、って言ってたけど、なんで僕がいつも(今は粉砕された)石像に拝んで帰るって知ってたの?」
龍がこんなところにいると分かったら大騒ぎになるんだけど。
「なんでって...。ここ、私がいつもお昼寝してる場所だから。いつもイルくん(?)が先にいるから、帰るのを待ってから寝てるの。でも、今日はいなかったから来てないのかなって思って」
「...で寝ようとしたところに僕が来たわけだ」
「そういうこと。ここって広くて、日も当たって寝やすいから人が来るって分かってからも、ついつい来ちゃうんだ」
なるほど。お昼寝には絶好の場所だね。ここなら広いから龍の姿で寝ても、木々がなぎ倒されることはない。
「じゃあいつも昼寝をするためだけに、ここに来るんだね」
「そうなの!」
この辺には龍の巣が存在するとでも言うのか...。
考えただけでも怖い。踏み入らないようにしなければ。
「まあ、今日はちょっと訳ありで来たから、昼寝はせずに羽休めに降りてただけなんだけどね」
「訳あり?」
あっ、スルーしてしまえば良かった。
なぜ聞いてしまったんだろう。
龍の悩み事に首を突っ込んだって助力できるか分からないのに。
そして嫌な予感がするのは何故だろう。今日はろくなことが無かったから本当に勘弁してほしい。
ただでさえ今はまだ頭が混乱してるんだ......。
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