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ある種の危機

(思い出したくないことを思い出したな....)


 そう思いつつ、少年は部屋の隅で毛布を被って寝ている少女のもとへ歩く。


 静かな部屋に響くのは、少年が立てる音以外に、もう一つ。それは。

───少女の安らかな寝息。


 心地よさそうに眠っている少女の頭を少年は優しく撫でる。

 何度か撫でて手を離そうとしたが、寝ているはずの少女の白い華奢な手に少年の手首は掴まれ、動きが止まる。


「....えっ?」


 思わず少年は声を漏らす。

 少年の反応は間違ってはいな。

───通常、寝ている少女に手首を掴まれることなど誰が予測するだろうか。


 雪のように白く透き通った髪が特徴的な少女は、見ていると吸い込まれそうな紅い潤んだ瞳で少年の目を見る。

 そして、少女は少し微笑んだ穏やかな表情で。


「....ついに....夜這い?」


───とんでもない発言をした........ように聞こえただけだよ...ね?


 少年は明後日の方向を向いたまま、言葉を失った。

 少女は、じーっと少年を見つめている。

 「このままでは」と思った少年は自分の聞き間違えを信じて少女に聞き直す。


「えと...今、なんて言った?」

「...だから...夜這い、しに来た?」



───やっぱり、とんでもない発言をだった.....。

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