5-6rep
「さて、どうしたものでしょうか……?」
今の『フェザー』の魔法で、私の魔力は残り半分くらい。相も変わらず5歳児並みの魔力量に、我ながら涙が出ます。……あ、本当に涙、出ました。
むむむ……と、筋肉の女神様のように綺麗なブリッジをしながら悩んでいると――
『ティミドよ、やるなら徹底的に! よ?』
(はっ! 女神の天啓!? 降りてきましたよ、女神様の声が――!!)
※ティミドは自分が筋肉の女神様の眷属にされた事を、現実逃避のためにわざと忘れています。
私は、最近思いついた恐ろしい新技にチャレンジすることにしました。
そう……ジェットバットに跨がり、『フェザー』の重力軽減と、ジェットバットの加速魔法陣から噴き出るエーテル噴射を組み合わせた――空飛ぶ『飛行魔法』です!
目的地は……背に腹は代えられません、二度と戻らぬと誓った、女神教の聖地リフターシティへ!
ズギューーンッッ!!
猛烈な音を立てて飛び出す、魔法の箒……ならぬ『魔法の釘バット』! 跨がれる面積が極端に少ないのが最大の悩みです!
「すごいすごい! 速い! これなら――……あ。」
しかし、悲しいかな魔力が一瞬で底をつきました。
仕方なく途中のプロネーションタウンに緊急着陸すると、孤児院のコナーさんに「もう戻ってきたのかい!? ゆっくりしていきな!」と、プロテインたっぷりの超高タンパクパンケーキを口に強引に捩じ込まれ、事の顛末を説明しました。
「まったく、あのバカ3人組と来たら! こんなにカワイイ細マッチョな魔女ちゃんを放っておいて……わかったよ! 任せな!」
「コナーさん、ありがとうございます! ……え? ちょ、ちょっと? こ、これは……!?」
コナーさんは片手でバットに跨がった私をひょいと持ち上げ、職業兵士も真っ青な完璧なフォームで、槍投げの如く構えました。
「風力6……湿度28……距離100km……イケる!」
「こ、コナーさん!? わたしは魔力さえ補填してくれれば自分で飛ば……って、それにフェザーの魔法も切れてるし!? ちょっと待って無理んぎゃぁぁぁぁぁーーー!?」
私はコナーさんの超人的な腕力によって、空へと射出されました。
体感時速、およそ200km/h!!
(※この世界では筋肉の女神様によって異世界の知恵がもたらされているため、メートル法が主流となっています)
凄まじい風圧で顔中の肉が激しく揺れ、涙も鼻水も全て後方へと吹き飛んでいきます! 周囲の景色は激しく歪み、まるで青い光のトンネルの中を進んでいるかのようです……。この速度じゃ着地どころか、途中でスズメさんとぶつかっただけで私の体が木端微塵の肉片に変わります!!
そして、二度と戻らぬと固く心に誓ったはずの、女神教の聖地『リフターシティ』の巨大な大聖堂が見えて来ました!
「ちゃ、着陸態勢に入ります……って、ん!? これどうやって着陸すればいいのーー!?あわわわわわ! メーデー! メーデー! 全市民へ告ぐ!SOSです!!」
お父さん、お母さん。
わたしは空への憧れを捨て切れずに、勢いだけで崖から飛び降りた……哀れなニワトリさんだったのかも知れません。




