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8rep

北の大都市『コール・ド・ジム』を目前にして、私たちは猛吹雪の白魔に閉じ込められた。


「火の精霊よ……『ファイヤーボール』!」


私が必死に魔法で火を灯すと、隣ではすでに「シュッシュッ」と高速で木を擦り合わせて火を起こした三人が、不思議そうな顔で私を見ていた。


「ん? どうした豆苗。杖を振るより広背筋を使ったほうが、火力の調整がしやすいぞ?」


……その無駄なドヤ顔、一発殴らせてほしい。

しかし、外は氷点下。薪も尽きかけ、洞窟内の温度は下がり続ける。


「……おい、このままじゃ……カタボっちまうよ……っ!」


ガストンさんが半泣きで高速スクワットを始め、アドニスさんも「筋肉が、しぼむ……」と苦悶の表情で腕立て伏せに励む。


「まずいですねぇ。マッチョはアイドリング(基礎代謝)だけで膨大なカロリーを消費します。この寒さでエネルギーが枯渇すれば、三日と持たずに干からびて死ぬでしょう。おぉ女神よ、我らのバルクをお守りください……!」

腹筋をしながら祈るバジルさん。


(そのカロリー消費をやめろ筋肉ダルマ共!!)

心の中で叫ぶが、私の意識も朦朧としてきた。彼らは自分の服を脱ぎ、私を暖めるために焚き火にくべてくれているのだ。


(……ごめん。筋肉ダルマなんて言ってごめんなさい……私、もう、眠いや……)


その時だった。洞窟の入り口に、空気を切り裂くような殺気が満ちた。


現れたのは、山の覇者『マッドマッチョベア』

咆哮一つで熟練猟師を失神させる、筋肉の鎧を纏った凶悪な捕食者だ。


だが、不運だったのは……この熊の方だった。

そこには、飢えと寒さで理性を失いかけた、三人の「カタボりかけの野獣」がいたのだから。

数分後。


「うめぇ……! 肉だ、脂だ、カロリーだぁぁ!!」


洞窟内には、ジューシーに焼ける肉の香りが充満していた。


「ほら豆苗も食え! 熊の心臓だ! 筋繊維が太くて最高だぞ!」


「……お、おえっ……」


「さらに、この溶けた良質な脂に特製プロテインパウダーを混ぜたものも飲みなさい、ティミ嬢。血管を熱いタンパク質が駆け巡るぞ」


バジルさんが差し出す、ドロドロとした謎の液体。


「……お、おえっ……」


「寒かったろう? これを着ているといい」


アドニスさんが優しく肩にかけてくれたのは、さっきまで咆哮を上げていた熊の、剥ぎたてで温かい(そして猛烈に血生臭い)毛皮だった。


「……っ、うぇっ、くさっ! 湿ってるし血の匂いしかしない! おえぇぇっ!」


「あぁ、モヤシちゃんには少しワイルドすぎたか」

アドニスが爽やかに笑い、私の周りに二人が陣取る。

「おいで、真ん中に座ってね?全員、フォーメーション・ウォームアップ開始!!」


「おう!!」


三人が一斉に、私の至近距離で「バーピージャンプ」を開始した。

地面を叩く振動。三人の肉体から立ち上る、サウナのような凄まじい熱気。


そして、逃げ場のない汗と獣の匂い。

熱い。暑苦しい。けれど、確かに温かい。

私はその異様な熱気の中で、意識を遠のかせた……。



——お父さん、お母さん。

三人のマッチョに囲まれて暖を取る私は、今、世界で一番「男臭い」場所にいます。

やっぱり、私は選択を間違えたのかもしれません。

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