5-3rep
「イラッシャイ……一回1,000Mだよ? 勝ったら豪華景品プレゼント。負けたら【喰う】ダヨ? ダイジョブ?」
受付の巨大なオーガが、気怠そうな声で迎えてくれます。
(……全然ダイジョブじゃないです!!)
ふと横を見ると、目がキラッキラに輝いたマッスルモンスター達が、ハイライトの完全に消え失せた私とは対照的な澄んだ瞳で、私をじーっと見つめてきています。
私は即座に目を逸らしました。
……が、グイッとアドニスさんに顎を掴まれ、強引に目線を合わされます。
(あ、顎クイですよ!? 顎クイ! 普通ならキュンとするところですよ、そりゃあ! なんせ顔面だけは爽やか王子様ですからね! 顔面『だけ』は!! 首から爪先までは完全なオーガの色違いです。安心してください、胸の高鳴りが一瞬で氷点下まで治まります。それと、指が太過ぎて私の顔半分が潰れています!)
「ぎゅむむぅ〜むぅむぐぅ〜!(皆さん、悪い事は言いません、やめましょう!? 相手はオーガですよ!? 人間とは筋力が違いますって!!)」
言いたいことが全く言葉になりません。
すると、アドニスさんが握り加減を変えて私の口をパクパクと動かし、ガストンさんが私のお腹に手を当てて横隔膜を押し込み、バジルさんが私の喉仏に指を当てて絶妙な力加減を加えると――
「ん、あ、あが? ん、んん……はいい、みな、みなさん、お、お、お、おこづかいですよぉ、すきなだだだけけけ、つかつかつかって、どうぞ……」
「「「ありがとう!!」」」
「モヤシちゃん!」「豆苗!」「ティミ嬢!」
「むぎぃゔゔゔむぅむんむんむー(お前らぁぁぁぁ!! 筋肉と人体構造に精通し過ぎて、私の横隔膜と声帯を物理で無理矢理動かして喋らせないでください!!)」
もはや怒る気力すらどこかへ吹き飛びました。
「わ、私は絶対にやりませんからね!? ……って、いや、なんで三人してそんな捨てられた子犬みたいな目で私を見るんですか!? 全員体がデカすぎてちっとも可愛くないです! もっとカッコよく居てください!」
「大丈夫だよモヤシちゃん! 僕たちが負けるわけないじゃないか!」
「そうだぜ豆苗、俺たちのバルクを信じろ!」
「左様、勝利の暁には豪華景品でタンパク質を補給するのみですぞ!」
「だーめーでーす! 物理的に無理な物は無理です! 私が身体強化魔法を全身にかけたところで、レディゴーの合図と同時に腕がガンってなってボキッてなって、数分後には大きな鍋でグツグツ煮込まれますよ!?」
お父さん、お母さん。
私はこの筋肉獣達の『躾』を、根本から間違えたのかもしれません。




