5-1rep
旅立ちの朝。
トンチンカンの悪ガキ3人組が走り寄ってきました。
「お姉ちゃん! これ、持ってって!」
「これ、コナーさん特製のプロテイン! カマッチョベイベの皆で作ったの!」
「わぁ! ありがとう! 大切に飲むからね!」
3人が差し出してくれたのは、ずっしりと重い特大のボトルでした。
「おぉ……! コナー殿特製のプロテインとな!?」
「子ども達の愛情とタンパク質がたっぷり詰まっているね! 最高の贈り物だね?モヤシちゃん!」
(……あ、これ、絶対私の口に入る前にこの人たちに飲み干されるやつです……)
私は子ども達が作ってくれたプロテインボトルをぎゅっと抱きしめ、しっかりと荷車の上で姿勢を整えました。
「それじゃあ、今度こそ出発だ!」
「「「おおーーー!!」」」
遠ざかるプロネーションタウン。
カマッチョベイベの皆が、姿が見えなくなるまで、ずっと小さくなるまで、綺麗なフォームのジャンピングジャックで見送ってくれました……この町は絶対にまた来ようと思います!リフターシティとブルガリアンポートタウンとは違って、必ず、またきっと!
◇
街道を爆速で進む荷車の上で、私は荷物が弾け飛ばないように、必死にプランクの姿勢でウエイトとしての任務を全うしていました。……うん、体幹にとても効いています。
ですがその時、前触れもなくガツンと強烈な急ブレーキがかかりました!
「ぎゃあああ!?」
慣性の法則に従い、私は前方へと勢いよく投げ飛ばされます。地面をゴロゴロと転がり――最後は綺麗に両手を広げての倒立! 飛距離、美しさ共に自分でも10点満点を与える見事な着地でした!
「あいたた……ちょっと皆さん! 急発進急停車は一声かけてくれないと危険です! ……ちょっと、皆さん? 無視が1番心に来るのでやめてくださ――」
抗議しようとした私の言葉は、途中でピタリと止まりました。
呆然と立ち尽くす、三人のマッチョ。
その視線の先にあったものは――
『オーガのマッスルフェスティバル』という、おぞましい巨大看板。
そして、平野を埋め尽くす色とりどりのテント群。
風に乗って運ばれてくるのは、楽しげな音楽、美味しそうな屋台の香り……そして、圧倒的なマッチョの汗の匂いでした。
お父さん、お母さん。
私はマッスルキングダムへのルート検索を、根本から間違えたのかもしれません。




