4-15rep 怪盗ティミド!ダンジョンのお宝をいただきに参上!
ダンジョン最深部の大きな扉が、勢いよく開かれます!
「おおっとー!? ここで! ここで遅れてきた参加者の到着だぁぁぁ! 仕上がってるよ仕上がってるよぉ! 早くステージへ上がってくれぇい!」
司会のオークが大声を上げ、会場を埋め尽くす観客の魔物達からも地鳴りのような歓声をあげます!
「29番! オークじゃなくてオーガが歩いてるよ!」
「30番! 腕に雪だるま乗っけてんのかい!!」
「31番! 産まれるよ! 大胸筋から新しい魔物産まれそうだよ!!」
地獄のような歓声をそのマッチョな身に全身で受け止め、彼らは堂々とステージへと上っていきました。そして、爆音で鳴り響く『ユーロビート』なる異世界の音楽(バジルさんがそう教えてくれました)に合わせて、極上のポージングを決め始めます!
(……会場の熱気は、すでに完全に最高潮です!)
「こ、これなら……イケるかも……!?」
私は大きめのハンカチで顔を泥棒のように隠し、抜き足差し足で、優勝者の景品として素揚げにされそうなトンくんとカンちゃんの元へと向かいます。
会場の魔物達はステージ上の熱狂に釘付け。行けます! 行けますよ! 怪盗ティミド、ダンジョンのお宝を華麗にいただきです! ……まぁ、世の中そんなに上手くはいかないんですけどね。
「29番! 30番! 31番! オークより人間よりの筋肉! カッコいいよぉぉぉ!」
「(ギクッ!?)」
一匹の魔物が放った唐突すぎる声援に、私は思わずギョッとして足元の石ころにつまづいてしまいました!
「(わっ……!?)」
派手に倒れ込み、つまづいた先に立っていたのは――巨大なコック帽をかぶったコック服のオークでした。
「あ?」
「あ……」
「ニンゲンガイル◯□✖️✖️!っ?!」
「無声魔法!!」
私の無声魔法が超スピードで発動しました! 自分の人生の中で、こんなに早く魔法を発動出来たのは間違いなく初めてです。そして、元から魔法を詠唱できないオークに対して、無駄にミュートを打ち込んだ世界初の魔法使いです! きっと!
声が出なくなったコックオークは「侵入者が居るぞ!」「助けてくれ!」と必死に手振り身振りのボディランゲージを試みますが、会場の魔物達はステージ上の完璧なボディランゲージに夢中で、誰も見ていません。
埒があかないと悟ったオークは、私の身長ほどもある巨大な包丁を振りかざし、凶悪な笑みを浮かべて襲いかかってきます!
私は前転でコロンと大きな股の間を潜り抜け、パッと美しく起き上がります! 自分でも10点満点をあげたい華麗な身のこなしです!
オークは頭がそこまで良くないので、一瞬で私を見失ってキョロキョロしています。
「(加速魔法――アクセル縦一閃……!)」
私は会場を揺るがすユーロビートと、ポージングへの爆雷のような歓声に合わせて――地面からオークの股間に向かって、ジェットバットを縦一閃、下段から全力で振り抜きました!!
ズドンッッ!!
「⭐︎♡¿:!?!?」
悲鳴すら上げられず、声にならない絶叫と共にコックオークが血の泡を吐いて倒れ込みます。
(ふぅ……なんだか、とても心がスッキリしました! なんでしょう……この感覚? これをもっと早く、誰かにやるはずだったような……? そんな記憶がかすかに……。ううん、気のせいですね! そんな事より、二人を助けなきゃ!)
「トンくんに、カンちゃんだね? 助けに来たよ!」
「え……お姉ちゃん誰? 助けに来てくれたの?」
「そうだよ、私はガストンさん達のお友達なの。ほら、コナーさんがすごく心配してるから、早く行こう!」
「解除魔法!」
キツく縛られていたロープを、魔法で素早く解いてあげます。
「すっげぇ! お姉ちゃん、魔女なの!?」
「えっへん! そうだよ! ガストンさん達と一緒に、あの恐ろしい魔王も倒した凄い魔女なんだから! だから安心して? ほら、あのマッスルモンスター達が敵を引きつけてくれている間に、こっそり逃げるよ?」
「「うん!」」
「偉い偉い! 大丈夫、どんな魔物が来ても、お姉ちゃんが魔法でシュシュっとやっつけちゃうからね!」
「あ……お姉ちゃん、前……」
フィジーク大会会場の扉をくぐろうとした、その時でした。
ドン……ッ。
「ひゃうっ!?」
分厚い壁にぶつかりました。
おかしいですね……? 脱出ルートを確保するために、扉は開けておいたはずなのに……。
おそるおそる見上げたその先に居たのは――三匹の、超ムキムキで凶暴そうなマッチョオークでした……
(あぁ……だからあの三人、疑問も持たれずに会場へ飛び入り参加できたんだ……?)
土壇場になって、完璧に合点がいきました!
お父さん、お母さん。
今度こそ、私の人生で1、2を争うレベルの命の危機です。




