4-13rep ダンジョン最深部にマッチョの巣窟を見た
「ティミド! ティミド! 大丈夫かい!?」
「うーん、そのチョコケーキは私のだよぉぉ……誰? 私を呼ぶのは……」
はっ!? 私は一体……?
「良かった! 気がついたんだね!?」
「え? アドニスさん? ガストンさん? バジルさん? あれ? キングコボルベロスは? って――いってええええ!? 背中! 痛い! あぁっ!? 靴も踵が破けてる!? なんで? なんで!? え? 皆が私を乱暴したの!? え? どんなプレイ!?踵を?え?」
「お、落ち着いてモヤシちゃん! 君がキングコボルベロスを倒したんだよ? ほら、すぐに治療しよう! 跡が残ると大変だ!」
「凄かったぜ! 豆苗! あの回転からの的確な一投! 絶対に喰らいたくないな! ガッハッハー!」
「一投……? 私が……? ん……?」
「まさか、ティミ嬢……記憶が?」
「えーっと、キングコボルベロスがアドニスさんに摘まれて……えーっと……あれ? その後はどうなったんですか? 背中をやられたのまでは覚えているんですけど……」
「本当に覚えていないんだね……?」
アドニスさんが何故か少しホッとした表情を浮かべています。
「いや、大丈夫だ! 豆苗の渾身のフルスイングが奴の股間に命中したのさ!」
ガストンさんが額に冷や汗を垂らしながら言います。
「左様、良き広背筋の広がりでしたよ?」
バジルさんの目が、心なしか泳いでいるような気がします。
「でも、あの股間の弾け方は横薙ぎじゃなくて、何か突き刺さったような……?」
「いやぁ! 突き刺さるようなえぐい角度だったね!」
「そうだそうだ! 流石は聖女だ!」
やんややんやと有耶無耶にされているような気もしますが……あの怖いキングコボルベロスが倒されたなら一安心です!
「いてて……これ、傷残っちゃうかなぁ……?」
「コナーさんの回復魔法なら痣一つ残らず治ると思いますので、今は包帯を巻いて止血をしておきましたよ」
バジルさんは、やっぱりこういう時に頼りになります。
「よし! それじゃあ、ここからはトレーニングも筋トレも一切禁止で、早く子供達を探そうね? 皆!」
「「「お、おう!」」」
私がバットに手をかけた途端に何故か三人が少し挙動不審です。
私達はダンジョンを奥深くへと進んでいきます。
流石に私の気持ちが通じたのか、マッスルモンスター達は余計な事はせずに、襲い来るモンスター達をギリギリ原型を留める肉団子にしながらズンズンと進みます。
(そこで、私は奇妙な音に気づきました)
「待って、皆静かに! 何か聞こえる……」
ズン、ズン、ズンと体に響く重低音に、聞いたこともない機械の発するような高音のリズムとメロディーが、ダンジョンの壁を通じて聞こえます。
(ん? なんだろう? 音楽なのかな……?)
「凄いね、モヤシちゃん!」
アドニスさんが褒めてくれます。
「豆苗が居ないと気づけなかったぜ!」
「ガストンさん、声がでかいです、うるさいです!」
「ティミ嬢、方向はわかりますかな?」
バジルさんは冷静ですね。
「えっと……こっちですね」
ダンジョンの分かれ道を進んだ先では、ドンドンと音が大きくなっていきます。
その先にあったのは、重厚な大きな両開きの扉でした。
……看板が立てかけてあります。
『南方大陸オークのフィジーク大会会場』
(なんでこの大陸は、老いも若きも魔物も脳筋なんでしょうか……?)
「「「おお! 魔物のフィジーク大会だって!?」」」
三人は子供のように目を輝かせています。
(ここでダンジョンは行き止まりみたいだから、子供達はきっと……)
私は細心の注意を払ってそっと扉を開けてみます。
溢れ出る音と光の奔流に目が眩みます!
中では星形の眼鏡をかけて、大きな蝶ネクタイをつけた司会オークがメガホンを持って場を温めていました!
「全国のマッスルファンな魔物の皆! お待たせだぜ!? 今日今宵、この空間で1番の筋肉を決める宴の始まりだ! 優勝者への賞品はコレだ!」
煮えた油の鍋の上に、吊るされたチンくんとカンちゃんの二人が見えます!
「コナーさん助けてー! ごめんなさいー!」
「ガストン兄ちゃん助けてー!」
お父さん、お母さん。ピンチの、ピンチの連続です!
私は救出パーティーの人選を、根本的に間違えたのかもしれません。




