4-9rep 危険が危ないです!
ダンジョンの中は、明かりを必要としないほどに群生する光る苔のおかげで、思いのほか明るいです。
「良かったぁ……魔力で灯りを点けていたら、私の魔力なんて30秒でガス欠ですよ。さぁ皆、ここからは腹筋を引き締めていきましょう!」
ここまできたら、私も頑張ります! 感知魔法や罠解除魔法で皆さんをしっかりサポートしますから!
「――って、なんで私が先頭なんですか!? 強い魔物が出たら、真っ先に頭からクレアチン粉末をかけられて食べられちゃいますよ!?」
私が抗議の声を上げると、バジルさんは至極真面目な顔で頷きました。
「いやいや、ティミ嬢のような警戒心強めの者を前に置くのが定石ですからな」
「そうだぜ! 俺たちは一回このダンジョンをクリアしてるんだが、その度に地形や罠の配置が変わるんだ。ここは脳みその出来が良い豆苗が頼りだぜ!」
「頼りにしているよ、モヤシちゃん」
皆の期待の目線が、私に向けられます。
皆が、私に、この頭脳に、期待している?
(正直……大変気持ちいいです)
「むふー! この大魔導士(になる予定)の私に任せてください!」
私は調子に乗って胸をドンと叩きました。
「おぉ! 流石は参謀! 救国の英雄! 聖女様!」
「あ、本当にそういうのは勘弁してくださ――」
カチッ
皆にツッコミを入れようとした途端に、何か嫌なものを踏みました。
ゴゴゴゴゴゴとダンジョンの奥から何かが、何か大きくて硬くて丸い物が転がってくる音が聞こえます。
「ギャアーーー! 大岩が転がってくるー! 皆逃げてー! 入口に――ふんぎゃ!?」
焦りすぎて自分の足に引っかかり、盛大に転倒してしまいます。
(あぁ、お終いです。皆で一緒に大岩に潰されてペラペラになってしまうんだわ……せめてコナーさんの料理を食べてから逝きたかったです……)
ん? ですが待てど暮らせど岩は転がってきません。
起き上がって見てみると、三人が大岩を止めていました。
――指の力だけで。
「ふむ、これは良い指屈筋のエクササイズになるね」
アドニスさんは爽やかな笑顔で言います。
「おぉ! 回転の力と重量とが合わさって、最高なプレッシャーだったぜ!」
ガストンさんも子供のように目を輝かせています。
「ふむ、あと2kg重かったら我々も突き指をしていたでしょうな」
バジルさんは冷静に分析しています。
三人は指先だけで大岩を押したり引いたりして、トレーニングに励んでいました。空いた口が塞がりません!
あまりにも怖いので、四人で横並びになって歩きます!
ダンジョンの壁ギリギリのミチミチで私は少し潰れていますが、この絶対防壁の布陣こそ最強なのです!
私が「ふんっ!」と鼻息を吐いたところで、足元がスポッと抜けました。落とし穴です。
「ぎゃーーす!?」
危なかったです、アドニスさんとバジルさんの小指を咄嗟に握っていなかったら、今頃は底のトゲで体中に穴が開いて、体中からプロテインが漏れていたと思います。
……って、何か上下に揺れ出しましたよ!?
「お?」
「これは……」
「中々効きますな!」
「落とし穴を利用してディップスをするなーーーー!!」
左右の端にいたアドニスさんとガストンさんが、私とバジルさんを片手で支えながら、落とし穴の縁を使って片手でディップスを始めやがりました。さながら筋肉の吊り橋です。
「いやあああああ手が滑るぅぅぅ! 耐えろ私の握力ぅぅぅぅ! んぎぃぃぃ、揺らすなぁぁぁ!」
「はっはっは! 少しティミ嬢の気持ちがわかりましたぞ! はっはっはー!」
「バジルさんも笑ってないでこいつらを止めてーーーー!?」
5分後、やっとのことで落とし穴から引きずり上げられました。
「皆! はしゃぎ過ぎだよ! 子供達を探すんでしょ? トン君もチンちゃんもきっと心細い思いをしてると思うんです! ここからはトレーニング禁止です!」
バンっと私はダンジョンの壁を叩きました。
カチッ
嫌な音が聞こえます。
あぁ、またです。今日の私の運勢は大凶です。
まさに「※オークも鼻で笑う」ですね。
※この世界の諺
お父さん、お母さん。私は読むべきだった新聞の占い欄を、見間違えたのかもしれません。




