4-7ep カマッチョベイベ
『孤児院カマッチョベイベ』の門をくぐると――。
「あっ! ガストンにいちゃんだ!」
「お帰り! 肩車して!」
「おやつ頂戴!」
大勢の子供たちが、いっせいに元気よく駆け寄ってきました。どんな世界であっても、子供というものは世界の宝物だと思います。
「あっ! イケメンゴーレムにバジル様だ!」
「女の子もいる! わーー!」
子供たちは元気いっぱいです。マッスルモンスター三人は、一瞬にして子供たちのアスレチック遊具と化していきました。
私はというと――なぜか子供たちにワッショイと担ぎ上げられ、そのまま孤児院の中へと運ばれていきます。
「こら! お客人をウエイト代わりにするんじゃないよ! 今夜のプロテインスコアを偏らせるよ!」
「「「ごめなさーい!!」」」
怒られると、子供たちは私をまるで宝物でも扱うかのように、そっと椅子の上に座らせてくれました。
「素直でよろしい! さぁ、お外で遊んでおいで! ……まったく、ウチの子達がすみませんねぇ、どうにもワンパクで……」
「あ、どうも、ティミド・マッソォです。あの、ガストンさん達と一緒に旅をしていて――」
「大丈夫大丈夫! 手紙で聞いてるよ! 魔王を倒した世界最強の武闘派魔女なんだってねぇ? そんなちっこいのに凄いねぇ」
「あ、あはは……はぁ……」
(……いや、ガストンさん私をどんな風に手紙に書いたんだよ!? 実家にマメに手紙を書くようなガラかよ!?)
「今日は泊まっていくんだろ? 何日でもゆっくりしておいき! さぁて、今日は腕によりをかけてプロテインスコア200は叩き出すよ! 楽しみに待っていな!」
シスター・コナーさんは、バキバキに鍛え上げられた前腕で、これまたバキバキの二の腕の袖をぐっと捲り上げると、豪快に台所へと向かいました。
「あ、何かお手伝いを――」
「いらないよ! そうだね、小さな子達をみててくれたら助かるね!」
「あ、はい! 任せてください!」
はぁ、小さな子供たちは確かに可愛いのですが……おもちゃ代わりに転がっている遊び道具がダンベルなのは、育児環境としてどうかと思います。
私は泣き出した赤ん坊のおむつを手早く取り替えると、おんぶ紐と抱っこ紐で前後に一人ずつ抱え、余った片手で別の赤ちゃんを持ち上げ、空いたもう片方の手でガラガラをぶんぶんと振り回してあげました。
(この子達も、孤児なんだよね……。でも、ここなら安心なのかも。あたたかい食事もあるし、女神様の強い加護を感じるし、何よりみんなが凄く元気だもん)
そんな風に少しほっこりとして、台所から晩ごはんの香ばしくて良い匂いが漂ってきた、まさにその時――事件は起きました!
「コナー先生!! トンと、チンと、カンが居ません!!」
大きな声で、年長の男の子が駆け込んできました。
「え? なんだって? もう晩御飯だって言うのに、あの悪ガキ三匹ときたら……!」
コナーさんがプンプンと怒りながら、巨大な玉杓子を振り回します。
「探して来ましょうか?」
「うん、そうだね。心配だから僕らも行こうか?」
「だな! アイツらは俺の弟と妹みたいなもんだからな!」
「未来ある子供を非行から守るのも、大司祭の務めですな!」
皆が外に出ようと立ち上がったその時、鼻水をたらした小さな男の子が、息を切らせて部屋へと飛び込んできました。
お父さん、お母さん。
どうやら、またしても嫌な『事件の匂い』が漂ってきたようです。




