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4-4rep ティミド聖女となる!

「行ってしまわれましたね……」

バジルさんが、天を仰ぎながら寂しそうに呟きます。


「あぁ、でもこれで用事は済んだね?」

アドニスさんは、女神様の腹筋によって無惨にへし折られた愛用の金砕棒を、名残惜しそうに優しく撫でています。


「さて、そろそろ行こうぜ? デッドリフトの聖地って言っても、やっぱり聖堂なんてのは落ち着かないぜ!」

ガストンさんが背中をボリボリと掻きながら、むず痒そうに言いました。


「ですな。さて、新たな筋肉を求める旅に出発しましょうか?」

バジルさんがグッと肩を回しながら笑います。


「で、ですね!? 早く行きましょう! 大事(おおごと)になる前に……っ!」


私は焦って三人の背中を押しました。私の嫌な予感は当たるのです。魔女の予感は、こういう不吉な時に限って絶対に当たるのです。


ですが――時すでに遅し。


私たちが大聖堂の重厚な扉を押して外へ出た瞬間、視界に飛び込んできたのは地獄のような光景でした。

大広間の中央には、『女神様と熱く抱きしめ合う私の巨大な銅像』。


大聖堂の壁面には、『女神様と仲良くデッドリフトをする私の巨大な絵画』。


そして階段の下では、白い衣装に身を包んだ少年少女たちの合唱団が――。

「「「♪〜 崇めよ〜 120キロを〜 軽々と引き上げし〜 聖女ティミド〜 デッドリフトの奇蹟〜〜〜♪」」」

私と女神様とデッドリフトを讃える歌を、高らかに、清らかに、そして力強く歌い上げていました。


スッ……

私の目から、全てのハイライトが綺麗に消え失せました。


私はその場に膝をつき、壁に向かって体育座りで小さく丸くなると、そのままピクリとも動かなくなりました。恥ずかしさで顔から火が出る云々の前に、この勝手な事ばかりする女神教徒たちに物理で手が出そうです。


完全なストライキを起こして固まった私を、アドニスさんは「はいはい」と猫の首根っこを掴むようにヒョイとつまみ上げると、ズンズンと人混みの中を進み始めました。


「聖女様だ! 聖女様と大司祭様と聖騎士様達だ! うぉー! すげぇーー!」


「聖女様ーー! 120キロのフォーム教えてくださーーい!」

街中の人達が集まり、もはや国を挙げた大お祭り騒ぎです。


耐えかねた私は、自分自身に『暗闇(ブラインド)』の魔法をかけて視界を奪い、さらに『無音(サイレンス)』の魔法で自分の耳を塞ぎました。

暗闇と静寂の世界の中、私はバジルさんの手によって、なぜか右腕を誇らしげに高く掲げたポーズでガチガチに固定され、そのまま街を引っ立てられて出て行ったそうです。

何も覚えていません。知りません。私はただの路傍の石です。


◇

……そうして、リフターシティの歓声が遠ざかった頃。

私の魔力が底を尽き、正気に戻りました。


お父さん、お母さん。

私は旅の途中で「救国の英雄」になり、ついに「女神教の聖女」にまで祭り上げられてしまいました。

リフターシティには二度と戻れません。いや、絶対に命に代えても戻りません。

そんな深い絶望の中……私は、いや、私たちは恐ろしい事実にまだ気づいていませんでした。


お祭り騒ぎのドサクサに紛れて街を逃げ出した私達は、「次の目的地までの食糧調達」という初歩的かつ致命的な選択肢を完全に忘れたまま、果てしない荒野へと足を踏み入れていたのでした。

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