4-3rep ティミド聖女となる?
「ティミド! ヤッホー! 鍛錬してるぅ〜?」
「何か前よりノリが軽くないですか?」
「あぁ、ホームだかんね? 他にお客も居ないでしょ? 大丈夫大丈夫、ティミド達と狂信者しかいないから!」
大聖堂で、女神様は実に軽快なノリで手を振ってきました。
するとそのやり取りを見た周りの教団員たちが、目を剥いて騒ぎ始めました!
「あぁ! あの小さな魔女の娘が、女神様とあんなにフランクに話しておられるぞぉお! 聖女だ! 聖女様じゃー! 銅像を建てろ! 急げ! 聖女様を讃える讃美歌を急いで作曲しろー!」
「あ、あの……やめてほしいです……」
「うおー! 急げぇ! 画家を呼べ! 彫刻家はまだか!? 作曲家は?! ぎゃおおおおおん!!」
「あ、あの……!」
「無駄無駄、諦めてウチの子(聖女)になっちゃいなさいよ?」
「いや、私一応これでも魔法使いで、神聖魔法とは相性が悪くて……」
「そんなの関係ないない! そんなことより見たわよ? その小さな体で120kgを引き上げたところ! 私感動して飲んでた缶ビール握り潰しちゃったのよ! 凄いわぁ〜」
「か、かんびーる……?」
「あ、ごめんごめん。缶ビールってのは異世界のエールでね、転生者に教えて貰ったんだけどね? キンキンに冷やして飲むと美味しいのよ? トレーニングの後にお酒なんてって思うけど、これがまた罪深くてね?」
「は、はぁ……? て、転生者……?」
私の頭の上は『?』でいっぱいです。
「その転生者さんは……今はどこに?」
「え? 死んだわよ? 異世界から引っ張ってきた人間は、ちょいと力を分けてあげれば勝手に勇者として魔王を討伐するって他の神友から聞いてたのにね? 私の力を授けた異世界人ったらヘタレで、そのくせに何故かモテてね? そんでハーレム作っていつまでも魔王討伐に行かないから、無理矢理首根っこ掴んで北方の魔王の城まで連れてったら、途中で魔王の城のある山の高度が高過ぎて酸素薄過ぎてそのまま別の異世界に転生しちゃったみたい。テヘッ♡」
「は、はは……」
よくわからないので、とりあえず愛想笑いで誤魔化しておきました。哀れな転生者さん、合掌。
「まぁティミドには関係ない話よ! さて、バジル! 私を久しぶりに呼び出したのは何の用件よ?」
「女神様、ご機嫌麗しゅう――」
「はいはい、アンタは私の神威よりも自分の大胸筋が大事なのはわかったから、もう怒ってないない! 神聖魔法は返さないけどね!で?」
「はっ、北方大陸の魔王討伐の報告と、一年ぶりの神託を授かりたく!」
「魔王討伐は私も見てたわ! アンタの目を通してね! ティミドのバットスイングであの邪竜の脛を破壊したとこなんて、神界で女神達で集まって応援してたわ! 広背筋の女神なんてティミドのファンになっちゃってね? 後でサインちょうだい!」
「え? 女神様にサインを……!?」
「女神ったって広背筋の女神だもん、私より全然格下だから気にしない気にしない!」
「いや気にしますよ!?」
「あと、神託ね? はいはい、ちょっと待ってね、ブリッジしながら考えるから!」
女神様は手を使わずに、それはそれは美しいブリッジを決めました。
「むむむ、ちょっと負荷が足りないわ! ガストン! 私の美しい腹筋にアンタの得物の流星錘をぶち込んで!」
「おうよ!」
ガストンさんがブンブンと振り回す巨大な鉄の錘が、女神様の腹筋にドガァンと直撃します。
「うーん……もうちょい! 喉まで出てる! アドニス! あんたの金砕棒は飾りなの?」
「女神様のお願いとあれば、このアドニス・バルク、本気で振り抜きます! ふん!」
バキンッ!!!!
「ぼ、僕の金砕棒が……!?」
「私の本気の腹筋はオリハルコンの10倍は硬いかんね? でもごめん今度買って返すから……閃いた!!」
「おぉ、神託が来るぞ! 書き留めろ!」
バジルさんが必死に信徒へ指示を飛ばします。
「『今年の吉エクササイズはアップライトロウ。雨多め、日照り少なめ、波高め。今の好みのプロテインは黒糖きな粉。』終了! バイバーイまたね! ……あ、あとティミド」
「はい?」
女神様が私の頭にそっと手をかざしました。次の瞬間、温かくも異様にパワフルな力が私の中に注ぎ込まれます。
「よし、これでお終い! これでアンタは私の眷属♪」
「ええ!? 急にやめてくださいよ! 怖い!」
「大丈夫大丈夫! あんたへ与えた加護は【限界突破】! 最後の最後の1repを搾り出せた時、人体・骨格の限界を越えた筋肉がつくようにしておいたわ! 大丈夫、コイツラにもついてるから!」
アドニスさん、ガストンさん、バジルさんをサッと指差す女神様。
「それじゃあ今度こそバイバーイ! また呼んでね〜!」
眩い光と共に、女神様はキレッキレのサイドチェストのポーズで天界へと帰っていきました。
「女神様ーー! 私はーー! 魔法使いですーーーっ!!」
私の悲痛な叫びだけが、だだっ広い大聖堂に虚しく響き渡っていました。
お父さん、お母さん。
私は遂に、女神様の加護を受けてしまいました。
……心なしか、自分の腹筋の筋が深くなったような気がします。
私は魔法使いとしてのアイデンティティーを、一体どこに置いてきてしまったのでしょうか?
……たぶん、母胎の中かと




