4-2rep 女神再臨!
「よし、じゃあ次は僕達の番だね?」
アドニスさんが、私が命がけで持ち上げた120kgのバーベルを、まるで小枝のようにひょいひょいと上下させてウォームアップを始めました。
気づけば三人は豪快に横一列に並び、一斉にバーベルを持ち上げ始めていました。
180kg……200kg……250kg……300kg……。
天井を揺らすような地鳴りとともに重量が跳ね上がっていき、400kgでガストンさんが惜しくも脱落しました。
「くっそぉ! 股関節の柔軟が足りなかったぜ! 豆苗、ちょっと付き合え!」
「え? ぎゃあ!?」
ガストンさんはヒョイと私を持ち上げると、当然のように己の頭の上にチョコンと乗せて豪快な股割りを始めました。どこまでも脳筋です。人間を重りにしないでください。
重量はさらに跳ね上がり、400kg……500kg……。
そして、前人未到の510kgでついにバジルさんがガクリと膝をつきました。
「くっ……船旅での前腕の疲労が……きました……っ!」
……何を言っているのかさっぱりわかりません。
「ティミ嬢をお借りします」
「いやぁぁぁ!? 」
私はガストンさんの頭の上からバジルさんに引っ捕らえられ、空中でジタバタともがきました。
もがく私は両手で吊り下げられた状態です。バジルさん曰く「生き物の不規則な動きと重みが極上のストレッチになる」のだそうです。
本当に何を言っているのか一切わかりません。
そして――前人未到の520kgを完全にあげ切ったところで、流石のアドニスさんも「ゴフッ」と小さく咳き込み、バーベルを静かに床へ下ろしました。
「昨日食べた干し肉が20g多かったから、少し体が重かったよ……」
やっぱり何を言っているのかわかりません。20gって何ですか。
「モヤシちゃん、借りるよ?」
「え、ちょっと、アドニスさんまで――んぎゃあああ!?」
私はアドニスさんにつまみ上げられ、空中でもがきます。
その私を、アドニスさんは『高い高い』の要領で何度も豪快に上下させ始めました! 大聖堂の真ん中で恥ずかしくて顔から火が出そうです。私は魔法使いなので、出そうと思えば顔からもお尻からも火を出せますけど。
そんなカオス極まる聖堂内に、凛とした美しい声が朗々と響き渡りました。
『いやぁ良いよ! 大きいね! 強いね! あんまりにもナイスプル過ぎて降りてきちゃった! テヘペロ! ぶい! イェイ!』
女神様の降臨です。
その瞬間、周りにいた信徒の皆様は一斉に床にへばりつき、五体投地、いえプランクの姿勢で平伏しました。
「「「女神様だ! 女神様だ! 本当に降臨なさった! 一年ぶりじゃあ! 目を合わせるな! 揉まれるぞ! ありがたやありがたや!!」」」
五体投地を決め込んだままの大合唱です。
お父さん、お母さん。
私は今も、筋肉の獣達に『極上のストレッチグッズ』として弄ばれています。
やっぱり私は、パーティー選びという人生の選択肢を、根本から間違えたのかもしれません。




