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4-1rep 奉納!デッドリフト祭り

野を越え山を越え――私たちはついに、旅の最初の目的地である女神教の総本山リフターシティへと到着しました。


ですが、到着した先は大騒ぎでした。


「大司祭様! 一体どこへ行っていたのですか!?」

「司祭様の腹筋6LDK!」

「一年も総本山の業務をほったらかして!」

「デッドリフトのフォームを見てください!」

「癒しの力を失ったって本当ですか!?」

「キャー!バジル様!サイドチェスト見せてぇぇ!」

「北方の魔王も倒したって!?」

「南方の魔王にも挑むんですか!?」

「先に書類に決済を! 大司祭様!!」

怒号と悲鳴と質問の嵐の中、私は思わずバジルさんを見上げました。


「バジルさんって……本当に女神教の大司祭様だったんですね……?」


「左様。ティミ嬢は私をなんだと思っていたんですか?」


「……優しい……ノースリーブの司祭服を着た……マッドなマッチョですかね……?」


「おぉ、筋肉の女神よ、この迷える小モヤシの育ち盛りの三頭筋を赦したまえ」

バジルさんは涙ながらに女神教のお祈り(という名のパームプッシュ)を捧げ始めました。胸筋が膨らんで司祭服の胸元がはち切れそうです。


「ささ、ここに居ては揉みくちゃにされてカタボってしまいます。早速、あの丘の上の総本山にて帰還の報告と、女神様への奉納デッドリフトと行きましょう!」


「そうだね、流石にこの人数に囲まれての移動はハムストリングに効くね」


「おう、股関節のストレッチをしといて良かったぜ!」


私は人混みではぐれないよう、ガストンさんの肩にヒョイと担がれました。恥ずかしいので街中ではやめて欲しいです。



◇

総本山の大聖堂に到着しても、沢山の教団関係者の皆様がバジルさんを取り囲んで離れません。

ですが、バジルさんはそれらを豪快にガン無視して、聖堂の奥へとズカズカ進んでいきます。


「これより女神様をお呼びします。皆は下がっているように」

追い縋る関係者達も、女神様の降臨と聞いて息を呑み、静かに席について固唾を飲んで見守り始めました。


「それでは先ずは、ティミ嬢からどうぞ?」


「へ? 私が……何を?」

私は素っ頓狂な声を上げました。


「女神様はデッドリフトが大好きですので、皆で楽しくデッドリフトをしていると降りてきますよ?」


「そうだね、あの女神様も中々のリフターだからね?」

と、アドニスさんが爽やかに頷きます。


「あの女神様のマッサージ、痛いけど効くんだよなぁ! また受けたいぜ!」

と、ガストンさんが吠えます。


(え? またあの痛いマッサージを……? 嫌だなぁ……)


「まぁまぁ、そんなに疲れていなければ女神様もマッサージしてきませんから。ほらティミ嬢、先ずは肩慣らしに100kgにしておきましたよ」


「もぅ……やれば良いんでしょ、やれば! どうせ逃げられないし、後が怖いから!」

私は覚悟を決めると、用意されたバーベルの前にしゃがみ込みました。


背筋をビシッと伸ばし、深く息を吸い込んで腹圧をかけ、筋肉のコルセットによってしっかり背骨を保護します。

そして――一気にバーベルをクリーンに引き上げました!


「ナイスプル!」

「グッジョブ!」

「背中! 安心感あるよ!」

マッスルモンスター達だけでなく、見守っていた教団の人達からまで温かい声援が飛んできます。恥ずかしくて顔が真っ赤なのですが、これはバーベルを持ち上げたからだということにしておきたいです。


それから、110kgの自己ベストを1回成功。

そして最後は、保護ベルトと牛革のパワーグリップをガッチリ巻いて、自己ベスト更新をかけた120kgに挑みます!


「ふーーーーっ……!!」

必死に力を込め、腕と胸はガチガチに固定。脚と腰の全パワーを集中させると――120kgの激重バーベルが、床からミリミリと少しだけ浮き上がりました!

(くっ……キツイ……! もう無理かも……っ!?)


「そこまで行ったら上がるよ!」

「途中でやめる方が危ないぞ!」

「大丈夫! 腰を突き出せ!」

「いけるよ! 強いよ!」

皆の声援が大聖堂に響き渡ります。


「がああああああああ!!」

雄叫びを上げて顔を真っ赤にし、三頭筋は謎の痺れを起こし、脇の大円筋はビキビキと引き攣りながら――バーベルはゆっくりとお股の下まで上がり切りました!

しっかりと肩を開いて静止……そしてゆっくりと最後までコントロールしながら床へ。


ガンッ


「やった……! 自己ベスト更新……! あっ、目眩が……」

「おっと、気をつけて?」

倒れそうになった私を、アドニスさんが優しく抱き止めてくれました。本当に、その手がオーガのように硬くて大きくなければ一発でイチコロでした。


「ウォオオオオオオッ!!!」

大聖堂を揺るがすような大歓声が巻き起こります。



お父さん、お母さん。

私は、鍛えるべき「魔法」と「筋肉」の天秤を、どこかで完全に掛け違えたのかもしれません。

……ていうか、この街って脳筋多すぎませんか?

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