3-10rep 女神降臨
ふと、部屋の空気がガラリと変わった気がしました。
白目を剥いて涎を垂らしながら、限界を超えてスクワットを続けるバジルさん。その口から、突如として凛とした女性の声が聞こえてきました。
『ティミドよ、ティミド・マッソォよ聞こえますか? 今、バジルの口から直接貴女に語りかけています』
正直、凄く不気味です。
「は、はい! め、女神様ですか……? あの、こういうのって普通、脳に直接語りかけるんじゃ……?」
『迷える小モヤシよ、細けぇ事は気にすんな!ですよ?』
「はい、すみませんでした」
『ちょっとバジルの口から喋るの億劫なんで顕現しますね。よっと!』
パァァァァァッ……!
次の瞬間、眩い光が部屋全体を包み込みました。
光が収まり、おそるおそる目を開けると――そこに立っていたのは、腹筋バッキバキの、それはそれは美しい女神様でした。フロントリラックスのポーズをバシッと決めています。
「ティミドよ、可哀想な小モヤシよ。其方のブルガリアン、私はずっと見ていたぞ」
「あ、ありがとうございます……」
「バジルからは神聖魔法の力を没収中だから、私が直接お前を癒してやろう。ありがたく受け取りなさい。では、そのままベッドに横になり、身体の力を抜きなさい、ティミドよ」
「あ、本名で呼んでくれるの嬉しいんですが、そんなに呼ばなくて――いでででででで!!?」
「こら暴れるでない! この女神直々のストレッチぞ! ありがたく頂戴せよ!」
「いやいや女神様!! それもうほぼ関節技だし!! いでででででぇえええ! いやそんな、ハムケツのところ肘でぐりぐりされて耐えられる人なんて居ないっでででででで!?」
「ほれほれ! ここが凝ってるな? ここか? ん? いやー愉快! 痛がるトレーニーの身体をほぐすの楽しいいいいいい!」
「いやーーーーー!! 物理の力ぁぁぁぁ!! 救いがないーーーっ!?」
お父さん、お母さん。
女神教の崇拝する女神様は、腹筋バッキバキのサディスト女神様でした。
私は、祈る神の選択肢を、生まれる前から間違えたのかもしれません。




