3-6rep ゲソ焼きは香りが命です!
十本のバキバキにビルドアップしている脚がゾットマン号を海中に引き込もうと、船体を力任せに締め上げます。
メリメリと悲鳴を上げる船上で、船員さん達も手に手に武器を持ちイカの足に攻撃を仕掛けますが、ビルドアップしたマッソォクラーケンの筋肉の鎧には傷一つつきません。
「モヤシちゃん、あれは脚だけじゃなくて触腕も混ざってるんだよ?」
アドニスさんのどうでもいい無駄知識がうるさいです。
「うおおおおおおお!」
と雄叫びをあげて果敢に向かっていったガストンさんは、巨大な触腕に捕まれ、まるでブンブン振られるタオルみたいに振り回されています。
何度も船体にドガァンと打ち付けられていますが、その度に「うおおおお!」と元気に雄叫びが聞こえるので、まあ大丈夫でしょう。
「ティミ嬢、水の魔物と言えば雷属性が弱点というのは、※RM理論と同じくらい正確な理論です。貴方の出番です、存分にやりなさい」
(※RM理論=Repetition Maximum。最大反復回数に基づく筋力測定理論)
「へ? わ、わたし!?」
私は慌ててアドニスさんとバジルさんを見回しました。ガストンさんの元気な雄叫びと爆音のせいで、二人の会話が半分くらい聞こえていなかったからです。
「モヤシちゃん……Go」
「グッドラック、ティミ嬢」
二人は爽やかな満面の笑みで、今まさに船のメインマストを力任せにへし折ろうとしているクラーケンの脚を指差しました。
(う、うぅ……! でも、船のたくさんの人が苦戦してる……! 私、やります!)
私は覚悟を決めると、愛用のジェットバットに基礎雷魔法をぎりぎりと限界まで込めました。
青白いバチバチとした電撃が釘バット全体を覆い尽くし、加速魔法陣が眩しく光り輝きます。
「うぉおおおおおおお!!」
渾身のフルスイングが、マストにしがみつく極太のゲソへ豪快に叩き込まれました!
バチィィィン―――――ッ!!!!
「あばばばばばばばばばばば!?」
思いっきりクラーケンが暴れて水浸しになった船上で、私が全出力を絞り出した雷魔法を叩き込んだ結果――答えは極めて明確でした。
海水と大量の水飛沫を媒介にして、超高電圧の電流が甲板全体へ一気に拡散!
マッソォクラーケンを含むその場にいた全員がまとめて大感電し、全員の髪の毛が激しく逆立ち、なぜか骨が透けて見え、甲板の上で「ビクンビクン!」とのたうち回っています。
「あばばばば……っ!?」
お父さん、お母さん。
私は、雷魔法の出力を完全に間違えたのかもしれません。




