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「くそっ、手応えがねぇ! スライムを殴ってるみたいで、乳酸がマキシマムだぜ!」
ガストンさんが吠え、流星錘が虚しく水を撥ね上げる。
「落ち着け! 生き物なら必ずどこかに鍛え忘れたインナーマッスルがあるはずだ! そこを探せ!」
アドニスさんが金砕棒で激流を真っ向から受け流し、バジルさんは「神よ、このメイスにプロテインの導きを!」と叫びながら鎖モーニングスターを乱舞させている。
後ろで震える私には見えていた。あれは『水龍ミヅチ』。物理無効の化け物だ。
(この人たち……打撃武器しかない! 詰んだ! 完全に詰んだわ……っ!)
その時、ミヅチの咆哮とともに高圧の水流が私を襲う。
「ひゃっ!?」
死を覚悟した私の前に、巨大な「壁」がそびえ立った。
ガッシャァァァン!!
「……イテェなぁ! 俺の鋼の腹筋じゃなきゃ、今ので内臓が外臓になってるところだぞ!」
ガストンさんが仁王立ちで、腹筋の弾力だけで水流を弾き返していた。
「豆苗、大丈夫か? さっきは飛ばして悪かったな。……お前は頭を使え! 頼んだぞ、俺たちの参謀!」
その大きな、あまりにも大きすぎる背中を見て、私の胸の奥で何かが弾けた。
(私が、参謀……? ……やってやるわよ、この筋肉ダルマたちと生き残るために!)
「皆さん! 少しの間、私を守ってください!」
「「「おう!!」」」
私は杖を高く掲げ、魔力を全開にする。
「氷の精霊よ……我の願いに応え、すべてを凍てつかせろ! 『アイスストーム』!!」
極寒の冷気が部屋を包み込み、流動体だったミヅチの体が、メキメキと音を立てて純白の氷像へと変わる。
「今です! その中央にある光るコアを狙って叩き壊して!」
「おうよ! ここかぁぁ!!」
ドガッ! バキィッ!
アドニスとバジルが、全く関係のない尻尾や頭の部分を猛烈に粉砕し始める。
「あぁもう、全然違います! そこ! 違う、もっと右! ああっ、もう、ここですよ!!」
じれったくなって駆け寄ったその時、昨日のスクワットの呪いが襲ってきた。
ガクッ、と膝が笑い、私は派手に前のめりに転倒。その勢いで振り回した杖の先端が、奇跡的な角度でミヅチのコアに——。
ガッシャァァァァーン!!!
ミヅチの体が光の粒子となって霧散し、部屋の真ん中に黄金の宝箱が出現した。
「「「うおおおおおおお!!!」」」
「モヤシちゃんが! ティミ嬢が! 豆苗が!やりやがった!!」
「魔法を使わずに、最後は杖の一撃(物理)でボスを仕留めやがったぞ!!」
「ナイスバルク! ナイスプッシュだ、ティミ嬢!!」
「あ、あ、あれは魔法で固めて、その……あぁもう、い、いえーい……」
「俺たち、無敵のパーティーだな!!」
三人の巨大な掌が私の背中を祝福の嵐で襲い、私はそのまま、衝撃でダンジョンの外まで一足先に吹き飛ばされた。
——お父さん、お母さん。
「参謀」になったはずの私は、なぜか「物理アタッカー」として期待され始めています。
やっぱり、私の選択は間違っていたようです……。




