劇場版-誓いのプランク-エピローグ
魔王城からの帰り道は、これまでで一番重くて、そして一番誇らしい行軍になりました。
約束通り、斥候基地で石にされた兵士さんたちを全員担いでの内地への帰還。
「見て見て、私も一回で二人も担げるようになったんだよ? へへ、凄いでしょ!」
そう言って笑う私に、アドニスさんは「いいフォームだ」と優しく頷いてくれました。
内地に辿り着いた時の騒ぎといったら、もう、教科書に載るレベルでした。
お城に招かれ、陛下からは「救国の英雄」と讃えられ、連日連夜のお祭り騒ぎ。でも、三人の筋肉獣たちは「祭りのメシは脂質が多すぎる」「こんなに休んだらカタボ(筋肉が分解)っちまう!」と、勲章もそっちのけで速攻で近所のジムへ修行に消えちゃいました。本当に、どこまで行っても変わらないんだから。
その後、私たちはこれまでの旅路を逆になぞるようにして、ゆっくりと凱旋しました。
北の魔法都市「コール・ド・ジム」では、因縁の『ミスリルの翼』の皆さんと再会。
彼らは私たちの偉業を聞いて、ついに「筋肉こそが真の魔法」だと認め、和解(という名の合同トレーニング)をすることに。リリアさんは、最後まで納得いかない顔で私にずっと中指を立ててましたけど……あ、あれはきっと「もう一セット(1本)追加だ!」っていう、彼女なりの照れ隠しですよね?
伝説の剣が刺さっていた村でも、魔王を倒したことで「剣を抜かなくても平和になったからヨシ!」と、無事に許してもらえました。今はあの剣を支柱にして、巨大な懸垂マシンが作られているそうです。
そして――。
ついに、私の生まれ育った故郷への凱旋。
「ティミド……! よく、よく無事で……っ!」
門を潜った瞬間、ギルドの受付嬢のカレンさんが涙ながらに抱きついてきました。
「ちょっと、カレンさん! 旅立つ時はあんなに雑巾を振り回して追い出したくせに!」
そう言いながらも、懐かしい故郷の匂いと彼女の体温に、私の目からも少しだけ熱いものが溢れました。
最後に、村の外れにある静かな丘へ向かいました。
そこには、大好きだったお父さんとお母さん、そしておばあちゃんのお墓。
「お父さん、お母さん、おばあちゃん。……ただいま」
私は墓前に、魔王を倒した報告と、これまでの無茶苦茶な旅の話をしました。
「安心して。私、もう一人じゃないよ。……ほら、後ろを見て」
振り返ると、そこには三人の巨大な壁が立っていました。
ガストンさんは照れくさそうに鼻を啜り、バジルさんは静かに祈りを捧げ、アドニスさんは眩しそうに私を見つめています。
「よし、挨拶は済んだね? ティミド、仕上げといこうか」
アドニスさんの合図で、私たちは墓前に並びました。
「せーのっ!!」
全員が一斉に地面に手をつき、鋼のような一直線の姿勢を取ります。
これまでのどんな勲章よりも、どんな魔法よりも、私たちが手に入れた確かな絆の証。
「追悼のプランク――開始っ!!」
丘の上を吹き抜ける風が、四人の逞しい背中を通り抜けていきます。
お父さん、お母さん。
私は、間違いだらけの選択肢を選び続けました。
でも、その先にあったのは、こんなにも強くて温かい「正解」でした。
私の顔は、汗と涙でぐしょぐしょだったけれど。
空を見上げる私の心は、今、最高にパンプアップされています!!
(完)




