表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/16

3rep

「あ、あの……下ろして……胃袋が、昨日の肉が逆流しそうです……」


ガストンさんに「お土産の折詰」のごとく摘み上げられ、上下に揺られながら辿り着いたのは、霧に包まれた『水鏡の古塔』だった。


「これだ! この『水の壁』、俺たちが本気で殴れば殴るほど水飛沫が飛んで、一向に突き破れねぇんだ!おかげで後から来たヒョロヒョロの魔術師パーティーに先を越されちまってよ。筋肉への屈辱だぜ……。どうだ豆苗、いけるか?」


ガストンさんが地面に(ようやく)私を下ろす。私の脚は、昨日のスクワットのせいで、生まれたての小鹿よりもプルプルと震えていた。


「……これ、ただの属性認証ギミックです。攻撃するんじゃなくて、水を馴染ませればいいだけですよ……。……『ウォーター』」


私が杖を振ると、あれほど屈強な男たちが苦戦していた水の壁が、嘘のようにスルスルと左右に割れた。


「「「おおおおおぉぉぉぉっ!!!」」」


「やるじゃねぇか豆苗! お前、天才か!?」


ドガッ!! という衝撃が私の頭を襲う。ガストンさんが良かれと思って撫でてくれたのだが、それはもはや「撫でる」というより「杭打ち」に近い威力だった。


「ひぎっ……あ、首、首が……」


「おっといけねぇ! 豆苗の頚椎が右に3センチズレたぞ! バジル、早くしろ!」


バジルさんが即座に駆け寄り、袋から取り出したのは……魔法の薬草でも聖印でもなく、カチカチに濡らして固めた「塩の塊」だった。


「案ずるなティミ嬢。女神の加護(物理的な冷却)を授けよう。この『湿り塩』を患部に叩き込めば、炎症など一発で引く!」


「……え? あの、バジルさん……僧侶ですよね? 普通、ここは『ヒール』とか……神聖魔法で……」


その瞬間、ダンジョン内に一際大きな爆笑が響き渡った。


「「「あーっはっはっはっは!!!」」」


「神聖魔法!? 傑作だ! おいバジル、聞いたか! お前に魔法を使えってよ!」


「いやぁ、ティミ嬢は面白いことを言うなぁ! 私がそんな繊細なもん使えるわけないでしょう!」


ガストンさんが腹を抱えて笑いながら、私の肩をバンバン叩く。その勢いでもう肩は外れている。


「いいか豆苗。こいつは確かに敬虔な女神教の司祭だ。だがなぁ、筋肉を鍛えすぎて自分の肉体を信じすぎたせいか、女神様から『魔法の才能』を根こそぎ没収された、筋トレ界の異端児なんだよ!」


「そう、私の祈りは女神じゃなく、大胸筋にしか届かんのだ! 僧侶ヒールではなく僧侶(物理)! それが私バジル・サルト司祭だ!」


バジルさんが誇らしげに上腕二頭筋をピクピクさせる。その横で、私は首に冷たい塩を塗り込まれながら、虚空を見つめた。



——お父さん、お母さん。

このパーティー、回復役まで「物理」でした。

やっぱり私は、選択を完全に間違えたのかもしれません……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ