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劇場版-誓いのプランク-3

高度はついに六千メートルを突破。

もはやそこは、人間が呼吸していい場所ではありませんでした。


あんなに元気だった筋肉の獣たちでさえ、少しだけ肩で息をしています。グラニーの(千切れた)腕をようやく「いらねぇな、これ」と投げ捨てたガストンさんが、「流石に休憩しようぜ」と音を上げ、私たちはやっと大休憩を取ることになりました。


私の頭は、割れるような痛みに襲われていました。


「……うぅ。これ、魔王の、呪い……?」


「いや、高山病って言うんだよ、モヤシちゃん」

アドニスさんが、こんな時も無駄に冷静な声で教えてくれました。


「高山病には温かいプロテインですね!」


バジルさんが、手慣れた手つきでシェイカーを振ります。火すらつきにくい「死の山」の頂上付近。私は震える手で、基礎魔法の火を灯してプロテインを温めました。それを全員で回し飲みすると、不思議と指の先まで熱が戻ってくるのを感じました。


……一時間後、私以外の三人が完全に「元気フルパワー」に戻っているのが、本当に怖かったです。

そしてついに、私たちは山頂の『魔王城』の門の前に辿り着きました。


しかし、その巨大な黒鉄の門には取っ手も鍵穴もなく、三人がどれだけ筋肉を膨らませて押し込んでも、微動だにしません。


「とっかかりがないと、僕たちの筋肉でもどうにもならないみたいだね」


「私が調べてみる……。……あ、これ、この回路に雷魔法を流せば動く仕組みだ。でもダメ、出力が足りない! これ、上級雷魔法じゃないと起動しないやつだよ! 私が今から習得しようとしたら、30年はかかるってばー!」


酸素は薄いし、足元からは冷気が這い上がってくるし、魔王城は目の前なのに開かないし……。


「なんだよ豆苗、お前の魔法じゃ動かねぇのかよ?」


「モヤシちゃん、どうにもならないのかい?」


「ティミ嬢! もっと頭に酸素を回すのです! 思考もトレーニングですよ!」


「……待って。今、考えて……考えて……」


その時、私の中で何かが、プツンと音を立てて切れました。


(ああ、もう……しゃらくせぇなぁ!!

息苦しいのも、寒いのも、頭が痛いのも、お菓子が食べられないのも、全部こいつ(魔王)のせいじゃない!!)


「あー、もう、めんどくさい!!」


私は愛用のジェットバットを構えました。そこに使えるだけの『基礎雷魔法』をバチバチと纏わせ、さらに全魔力を『加速アクセル』だけに注ぎ込んで、魔王城の精密そうな機械部分を目掛けて……。


「この、クソったれがあああぁぁぁ!!!」


渾身のフルスイングで、機械をぶん殴りました。

物理的な衝撃と雷の過負荷が同時に叩き込まれた瞬間、城全体に嫌な振動が走り、門がガコンガコンと高速で開いたり閉まったりを繰り返す異常事態に!


「あ、やば。完全に誤作動起こしてる。ごめんなさい……」


「うぉー! 豆苗、やるじゃねぇか! 隙間さえできればこっちのモンだ!」


「とっかかりさえできれば、後は僕たちのターンだね?」


アドニスさんが、高速で開閉する門の隙間に「フンッ!」と素手で手を割り込ませました。

次の瞬間、絶叫に近い破壊音が山頂に響き渡りました。


アドニスさんの指先が食い込み、鉄の門が内側と外側にベコベコにひしゃげ、ついには蝶番ごと吹き飛んで……門は二度と動かなくなりました。物理的に。


「さあ、行こうか?」


アドニスさんが、爽やかな笑顔で言いました。

その後ろで、バジルさんが「素晴らしいインパクトでした、ティミ嬢」と拍手をしています。


お父さん、お母さん。

私は今日、魔法の真理を見つけた気がします。

「出力が足りないなら、物理で補えばいい」。

……そんなの、魔法の歴史がひっくり返っちゃうような、最低の正解でした。


いよいよ魔王とのご対面です。

腹筋……いえ、もう心臓ごと固めて、突入します!

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