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劇場版-誓いのプランク-2

ついに魔の山「アイアン・ピーク」の本格的な登山が始まりました。

でも、標高が上がるにつれて景色を楽しむ余裕なんて一瞬で消え去りました。待ち受けていたのは、十魔団の一人、重力を操る怪物グラニー。


「ひれ伏せ、虫ケラども! 『百倍重力のヘヴィ・ケージ・ハンドレッド』!!」


奴が腕を振り下ろした瞬間、世界が反転したかと思いました。


ドゴォォォォォン! と地面に叩きつけられ、自分の体重が巨大な象になったみたいに全身を押し潰します。呼吸どころか、指一本動かせない。


視界がチカチカして、お花畑で亡くなったお父さんとお母さん、それに、おばあちゃんまでが笑顔でバーピージャンプをしている幻覚が見えました。


(ああ、おばあちゃん、今行くね……)


そう思って意識を手放しかけたその時、ドグシャァッ! という衝撃が走りました。


「ティミ嬢! 魂(筋肉)を呼び戻すのです!!」


バジルさんによる蘇生(という名の全力心臓マッサージ)です。あ、これ物理的に肋骨が逝くやつ。でもその痛みで、私はあっち側から無理やり引きずり戻されました。


ところが、この異常事態の中でも、筋肉の獣三匹はやっぱり普通じゃありませんでした。


「……お、おおぉ……! 最初はヤバいと思ったけど、なんだこれ……こんな負荷、生まれて初めてだ! 気持ちいいぜぇ!!」


ガストンさんが、地響きのような咆哮を上げました。

百倍の重力を受けて、普通なら肉の塊になるはずなのに、彼の僧帽筋と大腿四頭筋は「待ってました!」と言わんばかりにパンパンに膨れ上がっています。


「やめろ……! くるな! なんで動けるんだ貴様らぁ!」


自分の魔法の反動で動けないグラニーが、顔を真っ青にして叫んでいます。

でも、ガストンさんは一歩、また一歩と、地面をクレーター状に踏み抜きながら着実に近づいていきました。


「お前、最高の重り(トレーナー)だな! 礼を言うぜ!!」


ガストンさんの丸太のような腕が、グラニーを「ベアハッグ」で包み込みました。そのまま、重力の加速も味方につけて、二人は猛烈な勢いで斜面をゴロゴロと転げ落ちていっちゃったんです。


……少し経って、ようやく重力魔法が解けました。

標高は三千メートルを超え、空気は薄く、立っているだけでクラクラします。


「ガストンさん、大丈夫かな……」


心配して崖下を覗き込んでいたら、わずか20分後。


「ガハハハ! いい有酸素運動になったぜ!」


ガストンさんが、小走りで斜面を駆け上がって追いついてきたんです。

私は思わず、恐怖を忘れて少し笑っちゃいました。だって、ガストンさんの胴体には、グラニーの腕だけが、千切れたマフラーみたいにまだ巻き付いたままだったんですもん。……あ、これ笑っちゃいけないやつだった。


「よし、これでやっと山の中腹かな。アドニス、次はどんなメニューだ?」


「ふむ、これからは酸素との戦いだね。内圧を高めていこう」


三人は何食わぬ顔で、さらに険しい岩壁を見上げました。

私はもう、驚く気力すらありません。ただ、自分の予備の魔力をすべて『腹筋』の硬度維持に回して、薄い空気を必死に吸い込みました。


お父さん、お母さん、おばあちゃん。

お花畑への合流は、もう少し先になりそうです。

この怪物たちと一緒に、私は標高八千メートルの「魔王の聖域」を目指します。


Sランクパーティーゴッドハンズ、腹筋固めて頑張ろう!

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