2-12rep
翌朝、目覚めた私の体は、バルクボアの赤身と団長さんの厚意、そして何より「休養」という名の魔法によって、驚くほど軽くなっていました。
私たちは再び、荷車の「重り」として揺られながら砦を後にします。見送ってくれた兵士たちの「頑張れよ!」「ナイスバルク!」という叫び声が背中に心地よく……あ、いえ、お土産の燻製肉1tが重すぎて、車輪が悲鳴を上げています。私は今、燻製肉の山という、かつての私なら夢にも見なかった「タンパク質の王座」に鎮座していました。
「豆苗よぉ、昨日の話だけどよ……」
ガストンさんが、歩きながらボソリと呟きました。
「え? 何ですか? 燻製肉の山が高すぎて、ちょっと聞こえませんでした!」
「……なんでもねぇ! 耳の筋肉も鍛えとけ、この野郎!」
照れ隠しに咆哮するガストンさんを見て、アドニスさんとバジルさんが顔を見合わせます。
「はは、柄にもないね、ガストン。……でも、確かに耳介筋を動かせるようになれば、敵の背後からの強襲にも反応しやすくなるね」
「左様ですな。聴覚すらも筋肉で補う。それが真の聖職者の姿です」
「いや、アドニスさんもバジルさんも、話が筋肉の方向にしか行かないのは相変わらずですね……」
私は肉の上で小さく笑いました。
いつもの風景。暑苦しくて、論理が飛躍していて、でも、今の私にとっては世界で一番安心できる風景。
そして、私たちは再度、あの「空白の大陸」へと踏み込みました。
目指すは、魔の山の山頂にそびえる魔王城。
まずは最後の補給ポイントとなる、隠された哨戒基地を目指します。そこを越えれば、本当の、本当の地獄が待っているのでしょう。
「よし、野郎ども! 腹筋を固めろ! 目的地まで、ノンストップでバルクアップだ!!」
「「おう!!!」」
荷車の上で、私はそっと胸に手を当てました。
お父さん、お母さん。
……空の上で、呆れているかもしれませんね。
でも、私は今、不思議と確信しているんです。
私は、選択肢を間違えてなんていない。
この「筋肉の暴走特急」の切符を手に入れたあの日から、私の物語は、最高にハッピーでマッスルな正解に向かって走り出していたんだって。
さあ、行ってきます! Sランクパーティー「ゴッドハンズ」腹筋固めて頑張ります!




