2-10rep
何往復したでしょうか。自分の体重の3倍はあろうかという、鎧に身を固めた騎士さん(だった物)を担いでの強行軍。
橋の途中で意識が飛び、寝落ちしては、往復途中の誰かに(多分バジルさんあたりに)強引に水を飲まされて覚醒し、また一歩を踏み出す……。そんな一昼夜を過ごし、私たちはついに500体すべてのご遺体を内地の部隊へと返還しました。
やり遂げた達成感に浸る間もなく、仕上げの「追悼のプランク(5分)」が始まります。
今回は1分を5回という、これまた謎の分割払いで許してもらえましたが、受け入れ側の内地の騎士さんたちは、涙を流しながらプルプルと震えてプランクをする私たちを見て、感謝よりも困惑が勝っているようでした。
「……ふぅ。さすがに、いい刺激になったな」
あのアドニスさんでさえ、薄く汗を浮かべて肩で息をしています。この人たちの「疲労した姿」なんて初めて見たかもしれません。
「お疲れ様でした。さあ、筋肉のケアをしましょう」
バジル司祭が、どこからか取り出した塩を水で濡らし、全員の大きな筋肉にペタペタと貼り付けていきました。
「あ、気持ちいい……」
冷んやりとした感触が、熱を持った大腿四頭筋に染み渡ります。私はそのまま、泥のように深い眠りに落ちてしまいました。
そして翌朝。
「いっ……痛い痛い痛い痛い!!!」
目が覚めた瞬間、全身に電流が走りました。特に大腿四頭筋のフロント部分は、もはや肉離れという名の「筋肉の断末魔」を上げています。指一本動かすだけで激痛が走る、人生最大の筋肉痛です。
「……これは良くないな。日々の鍛錬が足りなかったか。……よし、今日は『レスト(休養)』にしようか!」
アドニスさんが、爽やかにウィンクを投げてきます。
「流石にここまで組織が傷んでいるのを無理に動かすのは、マッスルじゃないからね!」
(そのウィンクだけを見ていたら痛みも和らぐ気がするけど、首から下のギリギリと鳴りそうな大胸筋を見たら余計に痛くなる……)
「ガハハ! しっかりした休養も久しぶりだなぁ!」
「休むとなると手持ち無沙汰ですが、休むのもまた、次へのトレーニングですからね!」
そう言いながら、三人は「レスト(笑)」と言いつつ、無意識にスロースクワットを繰り返しながら語り合っています。彼らにとっての「休み」は、止まることではなく「ゆっくり動くこと」らしい。
私は布団の中で、芋虫のように丸まりながら、彼らの逞しすぎる背中を見つめました。
常識外れで、暑苦しくて、でも、自分一人では絶対に成し遂げられなかった「500人の帰還」をやり遂げてしまった。
ほんと、こいつらと来たら……頼もしすぎるってば。
お父さん、お母さん。
私の体は今、一歩も動けないほどボロボロです。
でも、不思議と心だけは、あのドロドロの鶏肉ジュースを飲んだ時よりは、ほんの少しだけ、前向きになっている気がします。
……気のせいかもしれません。やっぱり、私は選択肢を、根本から間違えてしまったのかもしれません。




