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2-8rep

橋を渡った先にあった北方王国騎士団の前線基地は、まさにこの世の地獄と化していました。

数えきれないほどのスケルトンの大群が波のように押し寄せ、防衛する騎士たちは多勢に無勢、絶望の淵に立たされています。


「ほう、ウォーミングアップがアドニスのせいですぐ終わっちまったからな? ちょうどいいぜ! ボーリングの時間だ!」


ガストンさんが、地響きのような笑い声を上げました。さっき人狼の群れを壊滅させたばかりだというのに、この脳筋たちは疲労という言葉を知らないのでしょうか。


ガストンさんは、近くにいたスケルトンの眼窩(目のくぼみ)に器用に指を突っ込んで掴み上げると、それをピンに見立てた大群に向かって豪快に投げつけました。


「ストライーーイクッ!!」


バラバラに飛び散る骨の破片。隣ではバジル司祭も、二体のスケルトンを同時に投げ飛ばして「スプリットですね」と涼しい顔で呟いています。


一方、リーダーのアドニスさんは「少し脚への負荷が足りない」などと言い出し、フルスクワットを繰り返しながら、立ち上がる勢いだけで寄ってくるスケルトンを次々と薙ぎ倒していました。


私はといえば、一体のスケルトンの攻撃を凌ぐだけで精一杯です。


「な、なんで骨だけなのにこんなに力が強いのよ! うぅ……!」


必死にバットで剣を受け止める私に、アドニスさんから爽やかなアドバイスが飛びます。


「モヤシちゃん、彼らは筋肉はなくても、骨の配列アライメントが完璧に揃っているんだ! 逃げ腰では力が逃げてしまうよ。筋肉だけじゃなく、骨との対話も勉強しなくちゃいけないね!」


余裕のウィンク。

(その甘いマスクにウィンク……体が化け物じゃなきゃ、私……ときめいてたかも……)


なんて言ってる場合じゃありません!


「え?何だって? 腰を前に出して……? あれ?」


教えられた通り、腰を入れ、骨格で力を受け止める意識を持った瞬間。

あんなに重かったスケルトンの力が、ふっと軽くなったように感じました。違う、私の体から効率よく力が出せているんだ!


「よぉし……!」


私は鍔迫り合いをしていた力を一瞬で抜き、彼らとの旅で叩き込まれた「神速のスクワット」を応用して深くしゃがみ込みました。


そこから立ち上がる爆発的な推進力をすべて、肩に担いだジェットバットに乗せてフル加速! 私自身は踵を軸に独楽のように一回転!


ガガガガガギィィィンッ!!!


乾いた破壊音が連続して響き、私の周囲にいたスケルトン6体分のすねが、見事なまでに粉砕されました。


「よくやったぞ! モヤシちゃん!」


「いい振りだぜ、豆苗!」


「素晴らしい骨への干渉です、ティミ嬢!」


戦場の喧騒を突き抜けて、三人の野太い称賛の声が重なります。


「わ、私やったの? これ、私が……?」


自分の手の中に残る、骨を砕いた確かな衝撃。

心地よい達成感と、それ以上に深い絶望が私の胸を去来します。


お父さん、お母さん。

魔法使いの私が今日学んだのは、高度な呪文ではなく「効率的な脛の折り方」でした。

やっぱり、私は選択肢を、根本から間違えてしまったのかもしれません。

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