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2-3rep

大会当日。会場の熱気は、物理的な「熱」となって私の肌を焦がしていました。


「これ、夜なべして作ったんだ……」


ガストンさんが、ゴツゴツした指先で器用に差し出してきたのは、布面積が絶望的に少ない……ビキニでした。


「無理無理無理無理! 恥ずかしくて死んじゃう!!」


「モヤシちゃん、大丈夫。皆同じ衣装だし、神聖なフィジーク大会をいやらしい目で見る人なんて居ないさ。もし居たら……ね?」


アドニスさんが爽やかに微笑みますが、その奥にある瞳は全く笑っていません。もし不埒な輩がいたら、その場で「物理的に」排除される未来しか見えませんでした。


「わかったよ……着るよ……」


観念して更衣室へ向かう途中、バジル司祭から「聖なる香油ポージングオイル」を渡されました。


渋々着替え、鏡の前に立つと……。

そこにいたのは、旅に出る前からは考えられないほど、健康的で、肌に張りのある少女でした。……目は死んでいますが。


「え、これが……私?」


浮き出た血管、引き締まった腹筋。魔法使いとしてのアイデンティティが、確実に筋肉に食われているのを実感します。


「笑顔! 笑顔ですよ!ティミ嬢!!」


更衣室の外から、応援とも脅迫とも取れる声援が飛んできます。


「それでは、選手入場です!」


ステージに上がると、最前列には異形の筋肉たちが陣取っていました。


「大きい! ナイスバルク! 眠れない夜もあったろう!!」


飛び交うコール。正直、穴があったら入りたいほど恥ずかしい。でも、周りの選手たちは皆、自分の肉体を誇るように輝いています。


……皆の路銀のためにも、やるしかないんだ!

私は精一杯の作り笑顔を浮かべ、見よう見まねで、彼らがいつも取っているマッスルポーズを決めました。


「ナイス! スマイル!!」


「ぎこちないぞー! もっと広背筋を広げろ!!」


コールの八割は、身内の筋肉ダルマ三人衆です。


そして、運命の結果発表。


「第3位……ティミド・マッソォ選手!」

景品は、プロテイン1kgと銅貨50枚。

ちなみに、この街のトイレットペーパーの相場は銅貨55枚です。ケツを拭く紙にもなりません。


ステージを降り、項垂れる私。


「皆、ごめん……優勝できなかった……」


しかし、三人は拍手をしながら、これ以上ないほど満足げな顔をしていました。


「いやぁ、あそこのサイドチェストのキレは最高だったぞ!」


「あの鶏肉ジュースの成果が、大腿四頭筋にしっかり現れていましたよ」


……え?

もしかして、この人たち……優勝賞金なんて最初からどうでもよくて、ただ私を鍛えて、ステージに立たせるのを楽しんでただけなんじゃ……!?


「お前ら……当分プロテイン抜きだーーーー!!!」


私の絶叫は、会場の歓声にかき消されました。

お父さん、お母さん。

私は今、トイレットペーパーすら買えない銅賞(3位)の重みを噛み締めています。

やっぱり、私は選択を根本から間違えたのかもしれません。

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